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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
六章 分岐編

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ダブルデート?

どんなに辛い出来事があっても夜明けは訪れる。

窓から差し込む朝日が眩しい。


女神タチアナの騒音レベルのようなイビキと、それをものともしないアリス。


普段であれば苦痛でしかないタチアナの存在も、今は少しだけ救われる。


イビキのせいで思考が内に籠もるのを、阻害してくれるからだ。


朝方、ジェーンが血徒けっとウリアナを取り逃がしたとの報告が入った。彼女は引き続き王都周囲の警備にあたるそうだ。


悔しいが今は任せておこう。

心を休めるのも立派な仕事だ。


――そう、自分に言い聞かせる。



――午前十時。今日も快晴だ。


「ありす! ひま! ありす! むてき!」

駄々っ子みたいに床を転がり回るアリス。


「リョウカ様、お昼前の食事がまだですよ?」


「アリスうるさいぞ! そして、タチアナ、朝食と昼食の間に食事なんて存在しない!」


「何を言いますか? 

食事と言えば朝、朝、昼、昼、晩、晩、夜ではありませんか?」

そんな、正気ですか?

――みたいなトーンで言われても、一日七食はこの世界の常識には含まれていない。


「ありす! ひま! ありす! むてき!」


「お前は暇なのか無敵なのかどっちかにしろ」


こっちは静かにしたいのにこれじゃあゆっくりもできない。


「わかったよ。なら外に飯でも食べに行くか?」


「やったー!」

アリスはぴょんぴょんソファーの上で跳ねる。


「やったー!」

タチアナは棒読みで喜ぶ。

こういうのが男は嬉しいんだろ? 単純ね。

――と言わんばかりの目でこっちを見ている。


腹が立つ。



三人で市場に向かう。

バルフォネア王都の市場は盛んで、

食べ歩きスポットとしても有名だ。


当時は金が無かったし、王都で過ごした時間も短かったため、何気に俺も楽しみかな。


中心部の市井しせいは活気に満ちていて、往来も盛んだ。


香ばしい匂いから甘い香りまでが、縦横無尽に鼻を満たす。


「ありす! あれがいい!」

アリスが屋台に並べられたプラムベールに食いつく。


小さいすももを水飴にくぐらせて串で刺し固めたものだ。りんご飴に近いかな。


俺は一つ買ってアリスに手渡す。


「やったー!」

彼女は黒髪を揺らしながら飛び跳ねる。


「うーん! おいちー!」

花柄の目隠しの下で笑みがこぼれる。


「たちあな! あれがいい!」

タチアナはアリスの真似をして、子供っぽく尋ねる。

いい歳した女が真似してもイタいだけだぞ。


タチアナの視線の先には

牛串、五キロの表記がデカデカと赤字で踊っている。


そして、目の前には剣ほどの鉄串に焼いた牛肉がデカデカと突き刺さっていた。


「いやいや、一本、五万G(グエン)って馬鹿じゃないの?」

高級イタリアンのフルコースぐらいの値段、してるじゃん!


「たちあな! あれがたべたいの!」

タチアナは自分の人差し指を咥えて、上目遣いでこちらを見る。


「年増の上目遣いに需要なんてないぞ!」


――その瞬間、空気がピリつく。


「リョウカ様……今、なんと?」

短い言葉に明確な殺意が込められていた。


「あたし! といれ……」

アリスも何かを察して距離を取る。


「タチアナ、じょ、冗談だよ?」


「……なんと?」


やばい、この威圧感、魔王と比べても遜色ない。


「タチアナ様、牛串を二本買ってもいいのでお許しください!」


「えっ!?」

タチアナのエメラルドの瞳に二本の特大牛串が映る。


「三本…がいい!」


くっ、合計、十五万G(グエン)…。しかし、ここで機嫌を損ねると殺されかねん。


泣く泣く牛串を三本購入させられた。

もちろんタチアナは一人で完食した。


――その後も王都内を散策して、気付けば夕方になっていた。



右手に女神、左手に魔王軍幹部という異色の両手に花状態だったが、なんだかんだリフレッシュできた。



――!?

ふと、懐かしい香りが鼻を撫でる。


隣に灰色のローブ。目元まで深く被ったフード。

首元からこぼれるミント色の束ねられた髪。

腰に差した退魔の剣。


「リョウカさん。話がありますわ。少しお時間よろしいでしょうか?」



タチアナが何かを察して、アリスの手を引きこちらに来る。

「アリスは私が城まで連れ帰ります」


「ああ、頼む。デートのお誘いみたいだ」


「えぇ~! ありすもデートしたい!」


「今日、散々遊んでやったろ? また今度な」


タチアナは駄々をこねるアリスの手を引っ張り、引きずるように城に向かった。



星空の下、静まり返った広場で灰色のローブの女性がフードをとる。


そこには変わらない姿の彼女が立っていた。

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