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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
六章 分岐編

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雨は止まず?

――日が沈むと共に雨脚が強まってきた。


仲間の唐突な裏切りに複雑な感情が渦巻く。

信じたい気持ちと、信じきれない気持ち。

どちらも本音だった。


再び、自分の居場所が揺らいでいく感覚に胸がざわついた。



気づいたらアグリアスの家の前に立っていた。

ノックしてすぐに彼女はいつもの調子で出てきた。


「リョウカ…珍しいな…突然どうした?」


「……」


「ずぶ濡れじゃないか、とにかく入れ」


アグリアスは俺の様子を見て、何か察したのか快く迎え入れてくれた。


彼女の部屋はこの一年でまた元通りの散らかり具合を取り戻していた。

でも、今はそれが心地良く感じる。


促されるままに椅子に腰掛ける。


「何か食べるか?」


「……」


「そうか、お腹が空いたら言ってくれ」


彼女は何があったかは訊かない。

俺から話し始めるのを待ってくれている。


話さなければ何も解決しない。

彼女に確認を取らなければ。


「アグリアス……」


「……なんだ?」


「カサンドラはあれから帰ってないんだよな…」


「ああ、半年前に騎士団を辞めてそれっきり音沙汰はない。…もしかして、そのことで、何かあったんだな」


「ああ……」


俺はアグリアスに伝えるべきか迷った。

でも、言わなければ先には進まない……そんな気がした。


「さっき、カサンドラに退魔の剣で殺されかけた……」


「……そんな!?」

アグリアス、動揺して椅子から立ち上がった。


「ああ……」


「リョウカ、言っていい冗談と悪い冗談があるぞ!」

 

「――いや、すまない。リョウカ、お前がそんな冗談を言うはずがない。今のは失言だった」

アグリアスはすぐに気持ちを抑え謝罪する。


アグリアスもこの一年で成長した。

俺はどうだ?

成長したつもりで、同じ場所をぐるぐる回っているだけじゃないのか?


「何があったか、詳しく話してくれ」


俺は掻い摘んで襲われた状況を伝えた。


「そうか、リョウカがそう言うなら間違いないんだろう。それに退魔の剣の事も引っ掛かる。元の所有者だったネコショウに訊いてみよう」


ネコショウは三カ月ほど前からリザリーを探して遠出をするようになった。

そういえば、ネコショウにもしばらく会ってなかったな。


デュナンとステラも、アーバス公の葬儀でクリステラに帰郷している。


気付いたらみんな離れ離れになっていたな。


「アグリアス、ネコショウってどこにいるかわかるか?」


「ああ…数日前にネコショウがミザリアを尋ねてきた。北東にあるアルバ深林にいると伝えたからそこに向かったと思う」


「わかった……ありがとな」

椅子から立ち上がり外に出ようとする。


ガシッ!

背後から両肩を力強く掴まれた。


「今から行く気か?」


「ああ……」


「今夜はもう遅い、泊まっていけ」


「いや、すれ違いにならないように早めに向かいたい」


「リョウカ!」

突然、アグリアスが背後から抱きしめてきた。

「お前の知るカサンドラは理由もなく、お前を殺そうとする奴か? 

――私はカサンドラを信じてる」

耳元でアグリアスが囁く。


「俺だって信じたい……信じたいけど」


「なら信じたらいい。少なくとも理由を聞いてからでも遅くないだろう。それが納得出来なかったら二人でお説教しよう」


「ふっ、お前らしいな……」

今はアグリアスの抱擁が心地いい。



翌朝、気付けばアグリアスの家で雑魚寝をしていた。

久々によく眠れた気がする。イビキが無いお陰か?


アグリアスは既に起きていて、台所から包丁の小気味のよい音が聞こえる。


「おはよう……」


「ああ、おはよう! もうすぐできるから待ってくれ」


初めてアグリアスの家に泊まった時を思い出す。

あの時は包丁じゃなくて、クラリウスで食材を切ってくれたっけ。


「ほら、お待たせ……」

机の上にはパンとスープ、目玉焼きが並べられる。


「ああ、いただくよ!」


勢いよく頬張るが、味がしないのは変わらないな。

「うん! 美味い!」

この味がしない料理も懐かしい。


その後、すぐに支度を始める。


目的はカサンドラを問い詰めるためじゃない。

もう一度、仲間として繋ぎ止めるために会いにいくんだ。


外に出ると、雨はまだ続いていた。

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