表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
五章 奪還編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/136

終わりと、始まり②?

……ん?

黒いシルエットを視界に捕らえた時にはもう遅かった。


――っつ。

次の瞬間、視界の端を何かが舞った。

不意に体の重心が左に傾く。

そこにあるのは俺の右腕だった。


「ぐっああああ!」

そんな、俺の腕が…腕が…。


痛みで意識が定まらない。


「きゃぁぁぁあ! リョウカさん!」

エアリー王女の声が聞こえる。


「やはり…太刀筋が逸れるな」

目の前に血の滴る刀が突きつけられる。


「なるほど…貴様、事象をねじ曲げてるのか?」


長い黒髪。長い刀。

鋭く切れ込んだ細い目。  

黒衣に包まれた華奢な体躯。


クリステラで見た男…魔王か。


駄目だ、痛みで意識が朦朧としてきた。

地面に這いつくばり必死に痛みをこらえる。


「少しは期待したが、やはりつまらんな」


「やめなさい!」

メアリーの結界が俺を囲う。


魔王が刀を振り下ろすと結界は豆腐のように切断された。


最後に感じたのは首筋に残る熱だった。



どうやら俺は、死んだらしい。

――ただし、人生が終わったとは限らない。

もう俺はそのことを理解している。


「よう、女神様…」


「あら、死んだのにえらく冷静ね…」

エメラルドの髪を波打たせる、美しい女神が微笑み、半透明の白い帯が揺らめいている。


これは三度目の邂逅。


「ダメだった。俺の居場所を守ることはできなかった…みんなも守れなかった」

抑えきれなくなり、涙が溢れ出す。


「そうですね…」


女神様は淡々としていた。


彼女は俺が泣き止むまでしばらく待ってくれていた。


「以前、光る種を渡したのを覚えていますか?」


「光る…種?」


二度目の邂逅の時、難易度の高い世界に飛ばしたお詫びだかで、渡してくれたやつか?

「目覚めたら手元には無かったけど…」


「あれは…貴方の中に眠っています」


「それで、結局、何が言いたいんだよ」


「本来、転生できるのは一回限りです。異世界で死んだ時点であなたは無に帰す予定でした」


「…だから?」

女神様の要領を得ない話にだんだんイライラしてきた。


「光る種は貴方に転生のチャンスを与えてくれます。しかし、これっきりです。今度は平和な世界に転生して、スローライフでもスケベライフでも送ってください」


なんか、投げやりだな。

「そこにアグリアスや仲間たちはいるのか?」


「いるわけないじゃないですか」


「なら、俺をメルフィナだっけ? 元の異世界に戻してくれ」


女神様の目元が少しだけ揺らぐ。


「可能ですがおすすめしません。今、転生してもあなたが殺された場所で蘇ります。魔王がまだいますので、せめて、時間を空けてからの方が――」


「それじゃあ、遅いんだよ! アグリアスやみんながいなきゃ、同じ世界だって意味はない。俺の居場所はみんながいて初めて意味を持つ。今すぐ戻せ!」


ふぅーっと女神様は溜息をこぼす。

「今、戻っても殺されるだけですよ? それに今度死んだらそれっきりですよ?」


「いいから戻してくれ!」

女神様の肩を勢いよく掴む。


「わ、わかりましたから…」

女神様が手をかざすと虹色に輝く穴が出現する。


「ありがとう…」

それだけ言い残し踵を返す。


「えっ…! ちょ、ちょっと!」

女神様が突然慌て出す。


「あっ!?」

転生の穴へ足を踏み出した際、《《偶然》》足に、女神様が纏う半透明の帯が絡まり、盛大に転ぶ。


「きゃぁぁぁあ!」


転んだせいか女神様の叫び声を背に受け、

勢いのままに転生の穴へと飛び込む。



眩い光から覚めると、背後でメアリーが魔王に首根っこを掴まれ宙吊り状態になっていた。


「おい、離せよ!」

俺は魔王の肩を掴む。


「りょ、リョウカさん!」

泣き腫らしたエアリー王女が涙を拭う。


「なんで、生きてる?」

魔王は振り向きざまに刀を振った。


刀が俺の首を捉える――

――その刹那、エメラルド色のウェーブがかった髪が視界いっぱいに広がる。


ガキン!

見覚えのある女性が魔王の刀を素手で受け止める。


「め、女神様!? なんで、ここに!」


「まったく、貴方のラッキースケベのせいで、私まで引っ張れたのよ! 本当に因果なスキルね!」


女神様は少しご立腹のようだ。


「女神?」

魔王はメアリーの首元から手を離す。 


「ごほっ、ごほっ、ごほっ…」 

「メアリーさん、大丈夫ですか?」

えづくメアリーの背中をエアリー王女が擦る。



「久しぶりですね。タカミヤさん…」


――タカミヤ?


「久しいな、女神よ」


「貴方には失望しました」

直後、光の帯が魔王を絡め取ろうとする。


魔王は瞬時に飛び退き帯をかわす。


「まさか、あんたと戦える日がくるとはな…」


「ええ、魔王に成り下がった貴方にはここで死んでもらいます!」

女神様が手をかざす。


「…と、少し興が冷めたな」

魔王はそれだけ言い残し、黄昏に紛れ姿を消した。



用水路の外では、爆発音と剣撃の音、戦士たちの怒号が鳴り響いている。


戦争はまだ終わってはいない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ