子猫vs魔王軍幹部?
戦場の中心部――
ネコショウの視線の先に、リザリーの姿があった。
リザリーの姿を捕らえたネコショウはすぐに美少女モードに変身する。
「――リザリー様!!」
「ネコショウ、なぜここに来た!!」
「私は、どこまでもリョウカ様についていくと決めたのです!」
リザリーがネコショウの前に降り立つ。
「リョウカ…か…妾では駄目なのか?」
――リザリーの言葉にネコショウは目を伏せる。
デュナンは、二人の間に邪魔が入らぬよう、
周囲のライザルド軍を必死で蹴散らしていた。
「リザリー様も一緒に行きましょう!!」
ネコショウは手を差し出す。
「くっ…」
リザリーの瞳が微かに揺れる。
「私はリザリー様と過ごした日々がとても幸せでした。でも、私……リョウカ様のことが、大好きなんです!!
頭を撫でてくれる優しい手…寂しい時には隣にいてくれて…キツい時は傍で支えてくれる…リョウカ様は私の居場所なんです。
でも、リザリー様もいてくれたら、もっと嬉しいです。
私の最初で最後のわがままだと思って聞いてください!」
ネコショウが感情を顕にしてリザリーへ更に手を差し出す。
「妾だって…妾だって、でも…」
リザリーは躊躇いながらも手を差し出す。
重圧と共に、一瞬――
戦場の音が消えた。
「リザリー。
その手を握り返した時点で――
お前と、その猫を斬らねばならぬ」
ふと、リザリーの隣に鎧が軋む音と共に、
騎士団長のアーサーが現れた。
肩まで伸びる銀髪。額の古傷の下の鋭い眼光。
思わぬ強敵の出現に全員が後ずさる。
「アーサー! ネコショウには手を出すな!」
「無論だ。そういう、約束だったからな。だが、反故にする気なら考えねばなるまい」
刺すような視線がリザリーを襲う。
その声が、ネコショウの胸の奥の怒りに火をつけた。
「あなたが、あなたがリザリー様を惑わしたのですね!!」
ネコショウは怒りに任せ、退魔の剣を振るう。
「やめろ! ネコショウ!」
アーサーは軽々と大剣でネコショウの一撃を受け止める。
直後、ネコショウの体に風が纏わりつきアーサーから引き剥がされる。
「いつの間に現れたんだい?」
デュナンがネコショウの前に立ち、アーサーへ剣を向ける。
「青年…君と会うのは二度目だね?」
「デュナンだ。覚えてくれても構わないよ」
「ふ、鉄血を殺した英雄か…リザリー、貴様は戦場から去れ! 戦意の無いものは邪魔だ!」
「御意に…!」
リザリーは一瞬だけネコショウを見て、どこかへ飛び去る。
「かくも美しい友情だな。…いや、愛情か?」
「ううう! アーサー!!」
「待て、ネコショウ!」
デュナンの静止を振り払い、アーサーに向かって飛びかかる。
「まったく、騎士道に則り約束は反故にはできぬのに…」
軽く溜息をつき、アーサーは軽く大剣を振るう。
「きゃっ!?」
ネコショウは風圧で軽々と飛ばされた。
デュナンが空中でネコショウをキャッチする。
「ネコショウ、挑発に乗らないように。リザリーを取り戻すんだろ? まずは彼に勝たなきゃ…」
ネコショウはデュナンの腕の中で静かに頷く。
「覇光斬!!」
駆けつけたアグリアスがアーサーの頭上から巨大な光の剣を振り下ろす。
しかし、アーサーが大剣を振るうと軽々と打ち砕かれる。
隙ができたアグリアスの首をアーサーの大剣が捉える。
ガンッ!
直前で、アーサーの斬撃をジェーンが素手で止めた。
――一瞬、誰も動けなかった。
「ほう!」
アーサーは感心したように目を見開く。
続々と仲間が集まってくる。
ステラ、カサンドラ、ミザリア。
皆、ボロボロだがなんとか生きている。
「まったく、所詮は紛い物の軍隊か…揃いも揃って負けるとは…」
「後は、あなただけですね!」
ジェーンとアーサーが一瞬で数合、拳と大剣を重ねる。
激しい振動と風圧が戦場を揺らす。
しかし、アーサーの剣撃が一瞬、上回りジェーンが弾き飛ばされた。
「少数にして精鋭。なかなかやるではないか」
アーサーは一対多にも関わらずなおも余裕を崩さない。
「アーサー騎士団長! 私と一騎打ちだ!」
アグリアスはアーサーに申し出る。
「ふっ、君はどこまでもいっても騎士だな…」
「いいえ、貴方ほどの騎士を私は知りません。なのに、どうしてバルフォネアを裏切ったのです!」
「説明するより、名乗りを上げたほうが早いだろう」
アーサーはそこで一呼吸置く。
「魔王軍七幹部が一人、断空のアーサー。
騎士では無い私が、一騎打ちを引き受ける義理も道理もない……」
その名を聞いた瞬間、
誰かの手から、武器が地面に落ちた。
「そんな…アーサー騎士団長が…魔王軍幹部…」
アグリアスはクラリウスを地面に落とし顔に手を当てる。
「絶望するには……少し早いぞ」
アーサーが手をあげると北と南から黒い影が現れた。
更なる増援にアグリアス一行は窮地に陥る。




