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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
五章 奪還編

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溶解vs軟海?

戦場の最前線にて、ゼリー状の不可思議な半魚人ウェルマーに対して、

――ジェーン、ミザリアが対峙していた。


「…ミザリアさん、こいつ、どうやって倒しましょう」

ジェーンの最初の頃の勢いはすっかり消沈していた。


「物理が効かないのはジェーンとは相性が悪いわね…。それに、私の魔法って単体向けの火力って低いのよね。かと言って全力を出すと仲間もろとも溶かしてしまうだろうし」


「さらっと恐ろしいこと言ってますよ」

苦笑いしながら、ジェーンがツッコむ。


幸いにも、状況は二対一だった。

戦場の雑兵はジェーンに脅えてこれ以上は近寄ろうとはしない。


「来ないなら…こちらから行く…」

突如、ウェルマーの体が液状化してジェーンに纏わりつく。


「う、うわっ! き、気持ち悪いです――ぐ、がばば――」


ウェルマーの身体は、ジェーンをすっぽり覆い、半透明のゼリーの中で苦しむ彼女の姿がミザリアの瞳に映る。


「ジェーン!!

――くっ、ジェーンがアイツの中にいたんじゃ魔法なんて……ん? もしかして、イケるかも」



「暁に瞬く昏くらき星―終焉、死滅、輪廻、旭日きょくじつ―」

ミザリアはジェーンが中にいるのにも関わらず、詠唱を始めた。


「まて…なにしてる…おでの中に…女…いるぞ…」

ウェルマーはカタコトで必死に自身の体内に捕らえたジェーンの存在をアピールする。


「大丈夫よ。ジェーンに熱が届く前にアナタが先に死ぬでしょ? 熱魔法・黒死球ブラックサン


突如、平原上空に黒い太陽が出現した。


黒陽を浴びた者は、たちまち黒い炎に焼かれていく。それは炎というより、存在そのものを削る熱だった。


「ぐぎゃぁぁぁ…」

ウェルマーがたまらず悲鳴をあげる。


「この女…解放して…逃げる…仲間に…焼かれるがいい」

徐々に体が溶けながらも、ウェルマーは形を変え、体内のジェーンを開放して、黒い太陽から逃れようとする。


――が、しかし、

「なんで…動けな…まさか…この女…」


ウェルマーの体内に取り込まれた、ジェーンが内側から、ゼリー状の体を掴み、踏ん張り、ウェルマーの動きを抑制していた。


筋力で無理やり凝固させている。


「この女…なんて…馬鹿力…ぐ、ぐわぁぁぁぁ!」


既にウェルマーの体の主導権はジェーンにあった。


そのままミザリアは魔法の出力を維持し続けた。

そして、ジェーンに熱が届く前に魔法を中断する。


「はぁはぁはぁ…ミザリアさん…ホントに無茶をするんです…から…」

ようやく呼吸ができるようになったジェーンはウェルマーみたいな喋り方をしながら膝で息をする。


ジェーンの身体には、微かに薄ピンクのゼリー状のモノが残されていた。

それを一瞥してから、ミザリアが軽く肩をすくめる。


「ウェルマーの体が断熱性でよかったわね。どうせあのままだったら、窒息してたんだから一か八か試してもいいじゃない?」

ミザリアの悪気のない笑顔にジェーンの顔が引きつる。


「私、その内、アナタに殺されそうな気がします…」


二人が戦闘後の余韻に浸っていると残ったゼリー状の破片が集まり膨張していく。


「まさか、まだ死なないの!?」

ミザリアが反応した直後、ウェルマーが巨大な蛙のような姿へと変化する。

大きさはネコショウの化け猫モードと同じぐらいだ。


「まさか…これが本来の姿ですか?」

呆気に取られるジェーンを前にウェルマーがミザリアへ舌を伸ばし彼女の体を絡め取る。


「お前…食べれば…おでの…勝ち…」

ミザリアは一切の焦りも見せずに、長い舌に引っ張られウェルマーの体内に取り込まれる。


半透明の身体にミザリアの姿が透けて見える。


食べてしまえば勝ち。

それ以上の思考は、ウェルマーにはなかった。


「ミザリアさん! はぁぁぁぁ!」

ジェーンがミザリアを助けようとウェルマーの丸々肥った腹に拳を打ち込む。


――しかし、相変わらず威力は殺され、ウェルマーは微動だにしない。

「お前…馬鹿…頭…悪い」


ウェルマーはジェーンを見下し罵る。


「くそっ!」

ジェーンの腕はウェルマーの腹に引っ付いて離れなくなる。


「特別に…俺の中で…この女が死ぬとこ…見せてやる…そしたら…絶望する…お前も…食べてやる」


ウェルマーは卑しい笑みを浮かべジェーンを見やる。


「くそっ! くそぉぉぉぉ!」

ジェーンが涙をこぼし、歯を食いしばる中――、

「どちらかというと、バカはアナタよ?」


ウェルマーの体内からミザリアの声が聞こえた気がした。

「――熱魔法・熱叫ヒートスクリーム

ウェルマーの体内でミザリアが赤く瞬く。


「がぁぁぁぁ…体の中が…焼ける…は、吐き出さねば…」


「私の方が力が上なのですよね?」

ジェーンはウェルマーの腹に両手をつき、

腹の上で逆立ちする。

そして、器用に両足でウェルマーの口が開かないように挟む。


抵抗は、そこで終わった。

ウェルマーは、最後の一欠片まで内側から焼き尽くされた。

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