聖剣vs鉄拳?
粉塵舞う戦禍の中、アグリアスとガルダの周囲を静寂が包み込む。
「鉄鎖甲・黒鉄の檻!」
ガルダのガントレットから細いイカズチが大地を刺激する。
平原の草木の合間から黒い粒子が舞い、
砂鉄で形成された円形の檻が、アグリアスとガルダの周囲を囲う。
「これで、他の者の邪魔は入るまい」
ガルダは拳を固めガントレットをアグリアスへ向ける。
「ふ、騎士として、その誘い断るわけにはいかぬな」
アグリアスも聖剣クラリウスを両手で構え、切っ先をガルダへ向ける。
ステラ、カサンドラ、黒兵でさえも二人の結末を固唾を呑んで見届ける。
まるで、この空間だけ、戦場から切り離されたように静かだ。
――数瞬、アグリアスとガルダの視線が交わる。
直後、激しい火花が散る。
アグリアスが剣を振り、ガルダもガントレットでそれをいなす。
リーチ差もあり、二人の距離は縮まらず、十合を越えてなお、互いに一歩も退かなかった。
「なるほど、さすがはオルトロス騎士団の《《元》》副団長…やりおるな」
「そうか…私は追われた身だったな…」
「――今はただのアグリアスだ。
――そして、仲間たちの、リョウカの剣だ!」
「はぁぁぁぁぁ!」
――ガキン!!
「ぐっ!」
アグリアスの必死の一撃をガントレットを交差させガルダは受け止める。
「ふふっ…騎士としては満点だ。だが――」
次の言葉を紡ぐ前に、ガルダのガントレットから細いイカズチが飛び、檻を刺激する。
直後、周囲の檻が細長い棘状に変化し、アグリアスの四肢、腹部を貫く!?
「ぐっ……」
無数の棘の先端が錨状に変形し、引き抜くことは不可能となった。
「卑怯な!」「お姉様!!」
檻の外からステラとカサンドラの声が響く、
――直後、周囲を傍観していた兵士たちが、一斉に二人に斬りかかる。
カサンドラはショートソード、ステラは短剣でなんとか応戦する。
「ふふふ、だが、将としては半人前だな」
ガルダは身動きのできないアグリアスに唾を吐きかける。
「くっ…貴様に騎士としての誇りはないのか?」
アグリアスの問にガルダは更に声を上げ嘲笑う。
「ふはははは、だから半人前なのだ。本当の騎士なら形式や格式などにプライドを持たず、勝つことにプライドを持つべきだ!」
一瞬の間を置いて、アグリアスが静かに言葉を吐く。
「――いや、違う。騎士とはいかに敵を殺すかではない。騎士とは誇りそのものだ!」
「ふっ―価値観の相違だな。その減らず口、地獄まで持って行くがいい!」
ガルダが拳を握りしめ拘束されたアグリアスに近寄る。
「ね、姉様…!」「くそっ!」
檻の外では必死にカサンドラとステラが黒兵の相手をしている。
「ガルダ――お前は一つ失念しているぞ」
「なに?」
「お前も魔装具の使い手ならわかるだろ? 我が手にはまだ剣は握られているぞ!」
「――しまった!!」
ガルダがトドメを刺すよりも速く、アグリアスの剣閃が舞い、拘束していた棘を断ち切る。
「まあいい、弱ったお前ならこの二つの鉄拳で嬲り殺せる」
拳を合わせるガルダのガントレットから火花が散る。
拘束から開放されたが、アグリアスの身体には無数の刺が残されたままだ。
「覇光斬・番」
両手で握るクラリウスを右手に持ち、
左手には魔力で模られた第二のクラリウスが生成される。
「なっ、二刀だと!!」
アグリアスは瞬時に間合いを詰め、二つの流星が檻の中を閃く。
ガルダは応戦して、なんとか、二刀の剣閃を凌ぐが、増えた手数に対応しきれなくなる。
――檻の中に再び無数の火花が散る。
そして、ついにアグリアスの二本の剣閃がガルダの体を切り裂く。
「ぐ、がぁぁぁぁぁ!」
「確かに、私は騎士として半人前かもしれぬ。
――だが、私に負けたお前は半人前以下だな」
「ぐ…無念…」
ガルダはそれだけ言い残し事切れる。




