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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
五章 奪還編

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決戦前夜②?

「まったく…彼女はお節介だね」

ステラが去った直後、デュナンが歩み寄る。


「確かに…でも、いい子じゃないか?」


「ああ…ステラは最初、兄の婚約者だったんだ。クリステラはもともと、僕の…かつての家、レオンハート公とステラの家のメルフォード公が共同で治めているんだよ」


今日のデュナンは、やけに口数が多い。

「お前が、自分のことを話すなんて珍しいな…」


「まあ、これが最後になるかもしれないしね」


「お前、ここで特大級のフラグを建てんなよ…」


「ふふ」「ははは」

俺たちは軽く笑い合う。


「…確かデュナンの兄さんって亡くなったんだっけ?」

あの時は詳しくは訊かなかったが、クリステラの塔に眠ってるって言ってた気がする。


「そうだね、クリステラの塔にある炉の中に飛び込んだんだ」


「…炉?」


「うん。クリステラは魔蟲まちゅうから街を護るために魔除けの結界を張っているんだ。それを維持するのに、100年に一度、マナの供給のため炉に人柱を捧げなければならない」


「それで、デュナンの兄さんが…」


「ああ…」

デュナンは遠い目をしていた。

「もともと僕が生贄だったんだけど、誰にも告げずに兄が身代わりになったんだ…」


「…そうか」

正直、なんて返せばいいかわからない。


「あの時は兄さんがどうしてそんな事をしたのか分からなかった。でもね…今なら…兄さんの気持ちが分かる気がする…」


「そうか」

それ以上俺たちの間に言葉は無かった。


代わりにデュナンは拳を突きだす。


俺も返事の代わりにデュナンの拳に軽く拳をぶつけた。


去り行くデュナンの耳元で翡翠色の羽飾りが、夜風に揺れる。



少し肌寒くなってきたな。

―口から白い吐息が漏れる。


宿屋に戻ろうと歩き出すと、

――ん?


ふと、民家の軒下に、闇夜に紛れた黒いショートパンツが左右に揺れていた。


ミザリアが、何故か地面に四つん這いで伏せている。


「ミザリア、なにしてんの?」


「あ、リョウカさん…みてみて…これ新種のキノコよ! これ、間違いなく毒キノコね!」

彼女は嬉々として青色の毒キノコを掲げる。


「まったく…相変わらずだな…少しは気負ったりしないのか?」


「気負う? ――なんでよ? 大変なのって今に始まったことでもないでしょ」


「それもそうだが、いつも通りってのもなぁ」


「なによ人の心が無いって言いたいの?」

ミザリアは腰に手を当て露骨に不機嫌そうな顔をする。


「いや、そこまでは言わないけど…」


「…リョウカさん…私…あなたのことが…好きなの…だから、死なないで! 

とでも言ってほしいの? アホくさ」


ミザリアは一瞬だけ目を潤ませ――

次の瞬間、いつもの調子に戻った。


「……そうだな。お前にそんなこと言われたら、鳥肌モノだ」


「は!? なによ、あんた、喧嘩売ってんの?」

ミザリアが杖を構え、魔法を唱える挙動に入る。


「ミザリアさんすみません。冗談が過ぎました」

なんとか、彼女をなだめ落ち着かせる。


――逆にいつもの調子のミザリアが頼もしくもあった。 


「私たちの居場所はここしか無いんだから。明日は頑張るわよ!」

そう言ってミザリアは俺の胸を軽く殴り、宿の方へ歩いていった。


私たち、か。確かに俺の居場所もここだけだ。

明日は全身全霊で挑むか。



宿屋に戻ると裏手にミント色のサイドテールが街灯として吊るされたランタンに照らされていた。


あれ…カサンドラだよな?

近くによると、なにやら宿裏手の窓から部屋を覗き込んでいた。


なにしてんだ?

俺も背後から近付き窓の中を見ると―!?

アグリアスが湯浴みをしている。

くそっ!? 湯気でよく見えない。


「きゃああああ!」

俺に気付いたカサンドラの悲鳴がハイネス村中に響き渡る。


すると、ガラス戸をアグリアスが勢いよく明け放った。

そのまま上半身を出し、外の様子を見る。


俺は直前でカサンドラの口を塞ぎ地面に押し倒す。


…頼む。気付かないでくれ。

「ふむ……気のせいか…」


アグリアスの上裸が引っ込んだ。


「ちょ…ちょっと重いですわよ」


「お前、こんなとこでなにしてんだよ!」


「お姉様の健康状態の確認ですわ!」


「まったく…この変態が…」


「あなたに言われたくありませんわよ!」


俺たちは重なり合ったまま小声で言い合う。


「はやく、のいてくださいまし!」


「ご、ごふっ!」

カサンドラの腹パンが鳩尾を捉える。


「ふんっ! 変態!」

悶絶する俺を見下ろし、それだけ吐き捨てて彼女は宿に入っていった。


お前だけには言われたくない…。

そういいたかったが、俺の喉は咳き込むので精一杯だった。

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