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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
五章 奪還編

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決戦前夜?

――翌日、半日かけてテウザ山を下った。

結局、最後まで捕食者ハウンドが俺たちに絡んでくることは無かった。


王都バルフォネアまでは、丸五日歩けばたどり着けるだろう。


――待っててくれ、エアリー王女。必ずあなたを迎えに行く。


さらに四日歩き、王都近くのハイネス村まで辿り着いた。宿を取り久々に雨風の凌げる場所で寝泊まりができる。


前世では危険に脅かさせることなく、柔らかくあったかい布団で寝れるなんて当たり前だと思っていた。


「少し早いが情報収集も兼ねて酒場で夕食にしようか…」


夕暮れ時、アグリアスの提案でハイネス村の小さな酒場に集まる。


「お姉様…今日は飲まないようにお願いしますわ」

「――あ…ああ、当然だ…」

なんだその残念そうな間は…明日は王都に行くんだ。アグリアスにも万全なコンディションで臨んでほしい。


正直、作戦なんて決まってはいなかった。

真っ向から戦争を仕掛けて王都を奪還か。

それとも隠密で先入してエアリー王女の奪還を優先するか。どちらを選ぶにせよ、いささか無謀過ぎる。


酒場に着くと骨付き肉やパン、スープ、豪勢な食事を囲んでいた。しかし、綺羅びやかな料理とは裏腹に誰一人口を開こうとはしなかった。


「なんだ…お前ら…偉く豪勢じゃねえか…なんか祝い事か? ――あっ、もしかして明日のエアリー王女様とバルメトロ公との婚姻の儀の前祝いでもしてんのか」

すでに出来上がった様子の見知らぬ中年が千鳥足で絡んできた。


胸の奥が、嫌な音を立てて軋んだ。

……ん? 婚姻の儀……!?


頭の中で、何かが音を立てて崩れた。


「おっさん……エアリー王女と、ライザルド公……いや、バルメトロは、本当に結婚するのか?」

中年男性の肩を掴み激しく揺さぶる。


「お、おう……明日の正午に民の前で盛大なセレモニーを行うんだ。知らなかったのか?」

中年の男は俺の剣幕に押されていたが、そんな事を気遣う余裕は無かった。


「明日って、これは情報収集している時間はないですね…」

深刻な面持ちで、ネコショウが言葉をこぼす。 


「ネコショウ…」

デュナンが人差し指を口元に立てる。


「確かにここでは誰が聞いてるかわからない。ちゃちゃっと食べて宿に戻りましょ…」

ステラの声かけで皆、急いで食事を済ませた。


宿屋に戻り明日の作戦内容を詰める。

「敵の戦力が未知数なのが痛いな…」


アグリアスの言う通り、オルトロス騎士団、魔王軍、ライザルド公国軍、この勢力状況が全くわからない。無謀も無謀だ。


だが、エアリー王女の婚姻が済めば、その全てが一枚岩になる。それだけはなんとしても避けねばならない。


そこから小一時間で最低限の作戦内容を詰めた。

正直、行き当たりばったりもいいところだ。


「明日、朝一に出発すれば正午には間に合うだろう。皆、残りの時間は自由行動とする。夜は各自ゆっくりと過ごしてくれ…」



今夜は皆、村の中を散策していた。

なんとなく、じっとしてられないんだろう。


かくいう俺もその一人だ。ハイネス村は小さな農村だ。酒場も19時には閉まり既に村の中は静まり返っていた。


―ふと、ステラが白い鳥の足に何かを巻きつけて飛ばしていた。


「ステラ…何をしてるんだ?」


「あ、リョウカか…びっくりさせないでよ」


「なんだ、悪巧みか?」


「ちょ、人聞きの悪いこと言わないで! 故郷のクリステラに手紙を送ってたのよ」


「そう言えば、勝手に飛び出してきたんだっけ…」


「実は故郷を飛び出してから毎日、状況報告をしてたの。……お父様は、帰ってこいってかんかんで……アーバス公も、なんだかんだデュナンのことを心配してたわ……」


そうだよな娘がこんな無謀なことをしてるんだ。

――普通怒るよな。


「…デュナンの親父さんだっけ。なんか厳格な人だったよな…」

クリステラでの態度を見るととてもじゃないけど心配するようなたまには見えないが。


「なんで、こんな事になったんだろうね」

ステラは遠い星空を見あげている。


「それは俺も思うよ。この世界でみんなで平和に生きるってこんなにも難しいんだな」

ただ、居場所を守りたかっただけなのに。

勢力や所属。種族が違うだけでこんなにも一緒にいるのが難しいのか。


頭にふと、リザリーの顔が思い浮かぶ。


「私はデュナンを失いたくないの…」


「ああ、知ってるよ…」


「だから、彼を救えるならリョウカ、あんたの事だって敵に差し出すわ」


「そんなことわざわざ言わなくても…」


「でもね、デュナンはあなたのためなら死ねると思う…」微かに潤んだステラの目に星空が反射する。


「……」

何も言葉を返せない。


ステラは一度だけ、視線を落とした。

「……だから、死なないでね……」


そう言い残し彼女は去っていった。

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