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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
四章 テウザ山編

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計略?

―っ!

一瞬にして、体が熱に埋もれる。


これは火計…!?

階段上から流されてたのは水じゃなくて油か!


背後の通路まで火の手が伸びる。


「敵襲っ!」

俺は限界まで声を張り上げた。


大丈夫だ。仲間を信じろ。

この程度の炎でどうにかなるやつなんて一人もいない。


ここまで、敵は作戦通りのはず。

――炎で分断し、俺を囮にする。

相手が捕食者ハウンドなら今は、ラッキースケベの加護がある俺がイレギュラーとして作戦を掻き乱してやる!


もし、違ったとしても少しでも先に戦って情報を得てやる。 


迷わず、燃え盛る階段を歩き始めた。 

いい加減この世界の理にも慣れたぜ!

炎は俺には届かない。


地上に出ると、赤く光る無数の目が闇夜に紛れ八方を囲む。


「ほう…この炎の中、這い出てくるとは…者共、放て!」


直後、周囲から何かが飛んでくる。

炎に照らされ、灰色の無数の針が反射する。


数えきれないほどの針が俺の体を刺激する。 


――あっ、気持ちいい。前世で鍼灸はりきゅうをしてもらった感覚に近いな。


足元の剣山のように、突き刺さった針が地面を覆い尽くしている。


「おい…もう、終わりか?」


「な、なんなんだ…お前は…」

闇夜に怯えた声が響く。


そうだ、常に動じない姿勢を見せつけろ。

敵からしたら攻撃が通らないなんて恐怖でしかない。


相手が知略で攻めるなら冷静さを欠くぐらい心理戦で追い詰めてやる。


「者共、怯むなかかれ!」


無数の赤い目の銀色の狼が、闇夜に紛れこちらへ飛び掛ってくる。


「「グルルルル」」

唸り声がいくつも重なり逃げ場を奪うようにじりじりと囲ってくる。


次の瞬間、一斉に狼が飛び掛ってきた。


そこからは、狼の頭を撫でたり、お手をしたりと、ただただ触れ合いの時間が過ぎていく。


「まさか…ここまでの能力とは…」


目の前に赤毛で痩身の人狼が現れる。

俺の役目はここまでだ。


そろそろ主役エースの到着だろう。

想定した直後、俺の背後の地面が吹き飛ぶ!


天井が吹き飛んだ地下拠点から、ジェーンが悠々と歩いてきた。

「ようやく姿を見せましたね。捕食者ハウンド!」


「これはこれはジェーン嬢…お祖父様はご健在で?」


「貴様っ! 自分で殺しておいてよくも!」

ジェーンから物凄い殺気が放たれる。


その後、続々と仲間たちが地下から姿を現す。


「さあ、存分に仕合しあおうぞ!」

アグリアスの聖剣クラリウスが煌めきを増す。


「熱魔法・虚構陽リアルザサン!」

ミザリアが深紅の杖を掲げると、夜天に太陽が出現する。


陽光が闇夜を照らし、一気に視界が開ける。


「ほう…これは便利な魔法ですな…」

捕食者ハウンドはなおも余裕しゃくしゃくだ。


「さすがに僕たち相手には分が悪いんじゃないかな?」

デュナンが俺の前に歩み出る。


「いやいや…あなたたちの相手は私ではありませんから…」


「みなさん! 後ろですわ!」

カサンドラの悲鳴が背後から飛ぶ。


…な、なんだ…あれは…。

カサンドラの視線の先には無機質な白い菱形ひしがたが宙に浮いていた。


「あれは…まさか、剣山ソードマスター…」

ジェーンから驚きの声が漏れる。


……最悪だ。

この場にいる全員が、同じ言葉を飲み込んだはずだ。ここにきてもう一体のS級モンスターが現れるとは。


「まさか、お前のホントの狙いは、俺たちを互いに食い潰させることか」


「ふふ…少し違います。正確には剣山ソードマスターを倒してほしいのです。…私がこの山の王になるために…」

そう言い残しハウンドは姿をくらます。


なるほど、この山の最後のS級として、山の主になる気か。


「噂に違わず狡猾な魔物だ。ネコショウ下がれ!」

アグリアスが叫ぶと同時に、空に無数の剣が現れる。


「どうせ倒すつもりだったんです!順番が変わったに過ぎません」

ジェーンが拳を握りしめる。


無数の剣の切っ先がこちらを向く。


「デュナン! 私をちゃんと守ってよね!」

「当然だ!」

ステラの掛け声にデュナンが応答する。


必死の戦いが、始まろうとした直後。

大地が割れ、地面から隆起した巨大な岩山が大きな口を空け、剣山ソードマスターと宙に浮かぶ無数の剣を飲み込んだ。


えっ…状況を把握するまもなく。

――大地が大きく鳴動して隆起する。


確かな生命を宿しながら、

――大地が鳴いた。

岩盤が悲鳴を上げ、内臓を引き剥がすような鈍音と共に、テウザ山そのものが、起き上がったように見えた。

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