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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
四章 テウザ山編

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晩餐?

残りのS級モンスターは二体。


次なる標的の捕食者ハウンドは赤目、赤毛の人狼。ジェーンの話では、こいつ単体だけなら大したことないんだとか…。


山道を数時間、捜索したが、狼系の魔物はおろか、

黒狼ブラックダイアウルフの一頭すら見かけなかった。


捕食者ハウンドの縄張りを荒らしているにも関わらず驚くほど反応が無い。


テウザ山に訪れた当初、俺たちを分断して、各個撃破で襲ってきたのも捕食者ハウンドの手下らしい。あれを仕組んだ相手が、このままで終わるとも思えない。


結局、俺たちは何の収穫もなく日暮れと共に拠点の地下墓地に引き返した。

 



地下の拠点に続く石レンガの階段の周囲には独特な渋い匂いを漂わせる青緑の草が生い茂っていた。


「最初も思ったんだけど何で地下墓地を拠点にしてるんだ?」


「それは逆ですね。元々、地下に造っていた拠点にお墓を造った事が始まりです。単純に死者が多くて墓地になっただけです」

ジェーンの言葉は淡々としていた。そう言い切れるようになるまで、今でどれほどの仲間を見送ってきたのだろうか。


俺がもしジェーンの立場なら、大切な仲間を次々に喪うことに耐えられるだろうか…。


ポンッと俺の背中に手が触れる。

「大丈夫…僕らは強い」

デュナンは何か察したように言葉を吐く。


顔に出てたか…。


「さ、お腹が空いたな。今日の担当は誰だ?」


「私です!」

アグリアスの言葉に反応してネコショウが勢いよく手を挙げる。


確か、以前行った料理対決の結果で、

アグリアス、カサンドラ、デュナン、ネコショウがローテーションで担当する事になったっけ。


「私も手伝うわ! …デュナンに家庭的なとこを見せなきゃ…」

ボソボソ言いながら、ステラもネコショウの後を追い、拠点内の台所へと向かっていた。


…あの頃はエアリー王女とミザリアもいたっけ。

ボロボロの屋敷での生活がひどく懐かしく感じる。

わずか数日しか住んでなかったのに、立派な居場所になってたんだと改めて実感する。


「今日のリョウカさんは少しおセンチな顔をするのね」


「ミザリア…」


「デュナンが言ってたじゃない。

大丈夫よ! 全部うまくいくわ」


「…そうだな」

このまま、S級モンスターをサクサク倒して、ジェーンを仲間にして、エアリー王女を救出して、なんならリザリーも連れ戻して、パッピーエンドを迎える。

今更ながら、あまりにも短絡的過ぎる考えだと思う。そんなに上手く行くほど現実は甘くはない。


「リョウカ様、ご飯出来ましたよ!」

ネコショウが三本の尻尾を揺らしながらお皿を丸石のテーブルの上に置く。

香ばしい匂いがする。


「へぇ〜、何を作ったんだ?」

ネコショウの料理は大体焼き魚だ。でも、俺は好きだ。焼き魚の匂いって前世…日本での生活を思い出す。


昔を思い出しながら皿の中をのぞく。

焼き魚…の上に更に焼き魚が乗っている。


「どうぞ…焼き魚の焼き魚乗せです…」


ま、許容範囲内か。俺は手渡されたフォークで焼き魚を頬張る。

はふ、ホクホクの身が疲れた体に染み渡る。

醤油があれば完璧だったけど、異世界で贅沢は言えない。塩だけでも充分に上手い。


…ネコショウが不安げに俺の反応を見ている。

「うん、美味しいよ!」


ネコショウの尻尾の揺れが大きくなる。


「…ん? 何だ?」

ネコショウがこちらに頭を差し出している。


「あの…撫でてほしいです…」


ふ、可愛いやつめ。

くしゃくしゃっとネコショウの頭を撫でる。


「デュナン! 私もできたわよ!」

続いてステラが料理を運んでくる。


焼き魚乗せを食べている他の仲間の前にも肉の入ったスープが並べられる。


「…うっ…」

カサンドラが嗚咽を漏らす。


これは酷い匂いだ。ここまで獣臭いスープは初めてだ。食欲が一気に失せた。


「うわっ! おいしそうですね!」

ジェーンは御椀を掴むと肉のスープをごくごくと飲み干す。


「ジェーンよく食べ…いや、味はどうだ?」

ステラの手前、あまり臭いとも言えず、慎重に尋ねる。


「うん? 美味しいですよ!」

駄目だ、こいつは味覚音痴だ。というか嗅覚が麻痺してる。 


「ありがとジェーン! それでデュナン…どうかな?」


デュナンも特に表情は変えずに肉のスープを口に流している。


確か、デュナンは鼻が良かったはず。

この獣臭いスープでも、ステラがせっかく作ってくれた料理だ。ちゃんと食べるなんてやっぱりこいつは人間が出来ている。


デュナンは完食すると、反応を心待ちにしているステラに「うん、臭いし、不味いよ」と冷静に言い放つ。


「う、うわぁぁぁあん!」

ステラは泣きながら部屋を出ていった。


「デュナン…お前は女心を少し学んだ方がいいぞ…」

あのアグリアスが女心を説くとは…ま、これはこれでデュナンらしい反応だとも思うが。


うっ――俺もこの臭いに耐えれず、外の空気を吸おうと地上へ続く階段へ向かう。


ん?…なんだ…。


階段の上から何やら液体がドバドバと流れ込んでいる。雨か……?

――いや、鼻を刺す妙な匂いがする。


そう思った瞬間、視界が赤く染まる。

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