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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
四章 テウザ山編

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人柱?

ミザリアに押され、漆喰シャドーガイスト中に飛び込んだ。


不思議と視界が黒く染まる以外は何ともなかった。

まるで――

“恐怖が、俺に辿り着けなかった”みたいだった。


周りがやけに静かだ。


「おい、これ…どういう状況だ?」


「リョウカ…なんとも…ないのか?」

アグリアスの声しか聞こえない。


「質問に質問で返すなよ。何が起こってるんだ。詳しく教えてくれよ」


「予想通りね」

ミザリアの自信満々な声が耳に届く。


「影に俺を差し出したこと一生恨むからな」


「ほ、本当になんともないのか…

漆喰シャドーガイストに取り憑かれたものは、

恐怖に怯え、心臓が止まるのに…」

くらい影の恐ろしさを知るジェーンも驚いてるようだ。


「よし!みんな、今がチャンスだ! 全力で打ち込め!」

アグリアスの掛け声で皆、雄叫びを上げる。


「ちょ…いったいどういう状況だよ説明しろよ!」


斬空ざんくう黄昏たそがれ

覇光斬はこうざん絶光覇王天翔公明剣ぜっこうはおうてんしょうこうみょうけん

「弾けろブレイブ燃え上がれ魂よ! 熱魔法・発熱オーバーヒート

「引導を渡す死神の鎌よ、首を刈り取り魂を導け! 死風鎌デスサイズ!」

「尻尾攻撃!」

「迷える魂よ、真なる光を以てその御心を示さん! 祓魔回帰エクソシズムアライブ!」


「みんな…そこまでする…」

ジェーンの言うとおりだ。

お前ら、やりたい放題かよ。


俺よりもラッキースケベを過信してんじゃねぇか。

もし、万が一にでも食らったら致命傷だろうが。


激しい轟音がするばかりで視界は一切見えない。


デュナン…何だそのかっこいい技名は…今度、見せてくれ。

アグリアス…そんなダサい技名が本当に存在するのか?

ミザリア…お前は本当に後で覚えてろよ。

ステラ…まだ出会って一週間足らずなのに、よくもまあそんな殺意マシマシの魔法を俺に撃てるな。

ネコショウ…可愛いから許す。

ステラ…お前がそんな強そうな魔法を唱えれたなんて…俺は嬉しいよ。


直後、状況が分からないまま、甲高い断末魔と共に視界が晴れる。


周囲を見渡すと…抉れた大地。丸坊主にされた木々。地形が変わった渓谷。焦げ臭い地面。可愛いネコショウ。

漆喰シャドーガイストは影も形も遺さずに消滅したようだ。

…こいつらどんだけ全力で攻撃したんだよ。

 

それと何より、満足そうな…達成感に満たされた皆の顔が腹が立つ。俺はなんにも見えないまま終わったんだが?


「おいミザリア…こっちに来なさい」


「ちょっと…リョウカさん…顔が怖いわよ…倒せたんだからいいじゃない」


「こっちに…来い」


「リョウカさん…素敵…あなたのお陰で倒せたのよ! 私の英雄様!」


「来い」


ミザリアは諦めたように恐る恐るこちらへ近寄る。



「きゃああああ!」

ミザリアの叫び声が渓谷にこだまする。


「ひっ!」

ジェーンの怯えた声もミザリアの絶叫にかき消されたのだった。



ミザリアは岩陰に座り込み、項垂れていた。


「私……もうお嫁に行けない……」


ぽつりと零したその声に、

ジェーンは視線を逸らしたまま呟く。


「私だったら……死にたくなりますね」


誰も否定しなかった。


「リョウカ…わ、私にしてくれてもいいんだぞ?」


「私も…頑張って耐えてみせます!」


アグリアスとネコショウが何故かお仕置きを求めてくる。そんなに大したことはしていないのに。


「リョウカくん、僕にも頼むよ!」


「もう、勝手にすればいいですわ」

一連のノリを見てカサンドラは吐き捨てるように言葉をこぼす。


「さ、馬鹿なことやってないで次に行くわよ!」

ステラの掛け声で、皆、次の目的地へと足を進める。


――渓谷の上流。緊張感の欠片もなく歩き出す一行を無数の赤い目が見張っていた。

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