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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
四章 テウザ山編

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蠱毒?

夜明けの薄明かりと松明に照らされた岩の拠点で、仲間が円柱の石の椅子に顔をそろえる。


ネコショウはまだ寝込んでいるが、全員無事で本当に良かった。


「リョウカ…無事でよかった…それとカサンドラを護ってくれてありがとう」

アグリアスから素直に感謝の言葉が漏れる。


「私は助けてくれなんて頼んでないですわ」

カサンドラはプイッとそっぽを向く。


まったく…相変わらず可愛いやつだな。


「ミザリアさんも無事でよかったよ」


「ふふっ…私を心配してくれるのは、デュナンぐらいよ」

デュナンとミザリアの視線が交わる。


「そんなことないぞ……俺だってミザ―ぐっ!」


フォローに入ろうとしたら、ステラに押しのけられ、デュナンとミザリアの視線を遮るようにあからさまに割って入る。


「そ…それより! ジェーンが無事でよかったわ。しばらく見かけなかったから心配してたのよ」


「すみません、ステラ。山の主を倒したまではよかったのですが…まさか鳴りを潜めていた厄介な魔物たちが、主の座を争うとは思ってませんでした」


ドラゴンを倒したって言ってたな…それは強いはずだ。


「確か、ジェーンがここにいるのって祖先の罪を清算するためだっけ?

主を倒したなら役目は果たしたんじゃないか?」


俺の言葉を受け止め彼女は静かに首を横に振る。


「私の一族はここの魔物たちを倒す事に生涯を捧げてきました。他の流刑者、そして…亡くなった祖父も…同じです。

私のせいで、主の座を狙う三体の強力な魔物が争っています。

せめてそいつらだけは倒さないと山が荒れ果ててしまう」


今、わかった。ジェーンはそういう人間なんだ。

自分の責任と責務を誰よりも重んじている。

その姿勢はアグリアスとも重なるものを感じる。


「そうなんだ…主を倒したから私たちに力を貸してほしかったんだけど…」

ステラはあからさまに残念そうに肩を落とす。


「なら、俺たちも手伝えばいいんじゃないか?」


俺の言葉が予想外だったのかジェーンは目を丸くしている。


「エアリー王女はどうする?

寄り道している場合では無いだろう」

アグリアスから至極真っ当な反論が飛ぶ。


「命が脅かされる危険性は低いけど、王女救出が遅れれば遅れるほど、取り返しのつかない事態にはなってくるよ」

デュナンも冷静な補足を入れる。


「ここの状況もほっとけないだろ。

強い魔物がいるなら俺たちが倒してた方が魔物の被害は減るんじゃないか?」


「一応、筋は通ってるわね…でも、倒すのはあんたじゃなくて私たちでしょうけど」

ミザリアがフォローしているようで痛いところをついてくる。


エアリー王女の事は心配だし、今すぐにでも助け出したい。でも、ステラもジェーンも既に俺の居場所の一つになりつつある。

ジェーンを見捨てたら必ず後で戦う際の迷いになる。


これからの戦いで魔王や騎士団長のアーサー…、リザリーもいる。そして、この先にはもっと厄介な敵もいる。


ここで仲間が死ぬリスクもあるが、ジェーンは強い。彼女を味方につければエアリー王女、救出の成功率も確実に上がるだろう。


「私からもお願い!」

ステラが勢い良く頭を下げる。


「ステラ…、もともと一人で倒すつもりだったから無理にとは言いません。よろしくお願いします」

ジェーンも軽く頭を下げる。


「お姉様…どうします?」

カサンドラがアグリアスを不安そうな目で見る。


アグリアスは一呼吸置いて不敵な笑みをこぼす。

「ふっ、無論ジェーンを手伝う。困っている人を助けるのは騎士の本分だからな…」


えっ、意外にもアグリアスはあっさりと了承した。


いや、彼女は嫌がらせで反論したのでは無い。

俺たちに本来の目的を忘れるなよ…とそう釘を刺したのだ。

初めっからジェーンを助けるつもりだったんだ。

そう、俺は確信した。


「そういえば、ジェーンさんはどうしてこの前の天頂トーナメントに参加していたのです?」


カサンドラの疑問にジェーンが答える。

「戦い続けるにもお金が必要でして…。私以外はみな死んだか、山から降りていきました。一人では限界がありますので、優勝賞金で傭兵でも雇おうと思ってたのですが…」

その言葉は淡々としていたが、長い孤独を無理に飲み込んだように聞こえた。


そして、何故か俺に視線が注がれる。


「いやいや、優勝したけど、俺は悪くないでしょ」

確かにそんな高尚な目的を潰してしまったのは心苦しいけど、俺だって好きで参加したわけじゃない。


「ま、生まれつき気持ち悪いのは仕方ないですから」

ジェーンさん、その言葉、フォローしているようで酷い人格否定ですよ。かなり傷付きますよ。


「ところで、その三体の強力な魔物のことを知りたいんだけど…」


「テウザ山の山頂にはマナが吹き出す源流があります。主はそこを縄張りとして占領できるんです」


「それって何か意味があるのか?」


「はぁ〜」

俺の反応に、ステラが大きな溜息をつく。

「魔物は食べ物以外にマナを餌にして成長するの。マナの源流は力の源なの」


「理屈は分かったが、実感がないな」


ジェーンは咳払いをして本題に戻る。

「こほん、魔物の説明に戻りますね」

「まずは、S級モンスター・捕食者ハウンド。狼系のモンスターの頂点に立つ人狼です。狡猾で群れで獲物を追い詰め狩りをします」


「次にS級モンスター・漆喰シャドーガイスト。生物に取り付き対象の生命力を奪い呪い殺すわ。ちなみに物理攻撃は効かないんです。私からしたら、こいつが厄介なんです」

確かに、物理の極致であるジェーンの天敵だな。


「そして、最後はS級モンスター・剣山ソードマスター。菱形の無機質なモンスターよ。一度に百もの剣を扱ってきます。こいつが殺傷能力でいえばダントツです。仲間が何人殺されたか…」

ジェーンはこそで言葉を閉ざす。


「最後にこの地特有ですか、マナの奔流があり、モンスターの力が増幅しています。モンスターは戦いを通して成長し、マナを喰らい強くなります。

元々、三体のS級モンスターも元はA級ぐらいの力しかありませんでした。テウザ山の特殊な環境が彼らを成長させたのです」


蠱毒みたいなものか…。この山で生き残るだけで並大抵の事ではない。そんな環境で育ってきたからジェーンは強いんだな。


「よしっ、ネコショウが回復したら、一体ずつ協力して倒すぞ。誰一人欠けることは許さない!」


「「はい!」」

アグリアスの激励で皆、気を引き締める。


昨日はネコショウを危険に晒してしまった。

いつ、誰が死んでもおかしくない状況だ。

――だから、迷わない。

ここで背を向ける選択肢は、最初からなかった。

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