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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
一章 王都編

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英雄?

魔王軍の幹部を撃退し、

訳の分からない勝利の余韻のまま、

俺は戸惑いだけを置き去りにして、兵士たちのざわめきに包まれ王都へ帰還した。


戦いは終わったが、まだ現実感がなかった。


この世界で初めて人の温もりってやつを感じた気がする。


「おっ、お前も来たのか」

足元を見ると、三叉の子猫──ネコショウが当然のように着いてきていた。


なんだよ、その顔。

ついて来るのはいいけど、勝手に俺の相棒みたいな顔をするな。

でもまあ……邪魔ではない。

正直、それだけで心強かった。


一人じゃなくなった、という感覚だけは確かだった。


そこへ、カサンドラがツカツカと歩み寄る。


「王様がお呼びですわ。すぐに謁見の間へ向かいなさい。

……さっきは、その……ありがとう、ですわ」

言い終えると、顔をそむけて去っていった。

──なんなんだ、あいつ。

不器用すぎるだろ。


敵意ではないと分かって、少しだけ肩の力が抜けた。


考えながら、俺は謁見の間へ向かった。


兵士が整列する中、国王が厳かに座し、

その隣には小柄な王女様が緊張したようにちょこんと座っていた。


薄いブロンドを左右に分け、純白のドレスには可憐な花飾り。


わかる。

庇いたくなるタイプの王女様だ。


場の空気が、一気に格式張る。


「此度、我が王国を救った功、大儀であった。

そなたに王都“バルフォネアの英雄”の称号を授けよう」


「ありがたき幸せ!」

分からんが……こういうのは勢いだろう。


ネコショウもぺこり。


「加えて、四千万G(グエン)の褒美を与える」


「よっしゃーッ!」

脳内で骨付き肉とパンと寿司と果物たちが踊り狂う。


人生が一気に好転した気がした。

……この時点では。


「王女エアリーよ、英雄の証を授けてやれ」


王女様が立ち、俺の前まで来て──

震える手で勲章を胸につけようとした、その瞬間。


「きゃっ!?」

王女様のスカートが、軽く跳ね上がり、細い足が見える。


犯人は── 

俺の足元で猫アッパーを決めているネコショウ。


えっ?

状況を飲み込む前に国王と怒声が謁見の間を揺らす。


「無礼者ぁああッ!

剣を抜け! 打ち首じゃああ!」


兵士たちの手が、一斉に剣へかかった。


空気が一瞬で凍りついた。

冗談や誇張ではない。

この場の空気は、本気で命を奪いに来ていた。


王族の前での無礼はどんな功績よりも重いらしい。


兵士たちが走り回り、王女様は泣きそうになり、

俺は必死に土下座——ネコショウは反省ゼロ。


その後なんとか収まったが──

「褒美の四千万G(グエン)は取り消しだ」

国王の一言で、俺の夢(骨付き肉)が消えた。


英雄の称号は残った。

だが、腹は膨れず、屋根も増えなかった。



「おい、起きんか!」

寒空の下——下町の路上で寝ていた俺の顔面に、何か硬いものが直撃した。


「キャッ!?」「いてっ!」

目を開けると、アグリアスが俺の上に倒れ込んでいた。


鎧の胸当てが俺の顔にめり込んでる。


「朝っぱらからなんなんだよ!」

アグリアスは飛び退き、乱れた金髪を整える。


「う、うるさいっ!

こ、こちらのセリフだ! 

何故こんなところで寝ている!」


「俺だって好きで野宿してねえよ。家も金も無いんだ」


「フニャオン」

ネコショウも同意の声を上げる。


英雄の肩書きと、現実の落差がひどい。


アグリアスは咳払いして、ほんのり赤い顔で言った。


「そ、そんなことなら……わ、我が家へ来い!」


「えっ!? プロポーズ?」


「ばっ、違うわッ! 王様からの命令だ!

お前は要注意人物に認定された。功績を考慮し捕らえはしないが、私が監視せよとのことだ!」


英雄で要注意人物って……。

まあでも雨風しのげるならありがたい。


選択肢は実質ひとつしかなかった。


歩きながらアグリアスはぎこちなく尋ねた。


「そ、そういえば……名前をまだ聞いていなかったな」


「俺はコフク・リョウカだ」


「リョウカ……ふむ、いい響きだな」

名前を呼ばれるのなんて、この世界で初めてだ。

転生してから、まともに人と接することなんかなかったからな。


胸の奥が、

火種みたいに、ほんのり温かくなった。

それだけで、救われた気がした。


そうして到着した彼女の家は──

白いレンガに赤い屋根の、普通の可愛い一軒家。


「おじゃましま──うっ……!?」

扉をくぐった瞬間、鼻を突く腐卵のような刺激臭。


「ふ……ふにゃお……」

あの王都を恐怖に陥れたネコショウですら撃沈している。


室内を見ると──服は散乱、食べかけのパンは乾燥し、謎の瓶と皿がカオスを生み、部屋全体が“魔物の巣窟”レベルで荒れていた。


戦場より危険で、

しかも撤退できない空間だった。


「……汚いところだが、く、くつろいでくれ」

アグリアスさん、それは本来、謙遜の時に使うやつだ。本当に汚いパターンを初めて見たぞ。


普段は金木犀の甘い香りをまとってるのに……

どうしてこうなった。


新たな問題が始まった気しかしない。

だが、この騎士となら――何かが変わる気もしていた。

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