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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
四章 テウザ山編

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分断?

衣服が焼け焦げた俺は、デュナンの予備の服を身に着けていた。


心なしか、デュナンがニヤついているのが気になる。


幸いにも、先ほどの戦闘以降、他の魔物が群がってくる気配はなかった。


「ふぅ……まさか、こんなところでAランクモンスターの“無限増虫アメトリス”に遭遇するとはね……」

デュナンは額の汗を腕で拭いながら、一息つく。


「あいつ、そんなにヤバい奴なのか?」

正直、割とあっさり倒した気もするが。


無限増虫アメトリスは、触手が一本でも残っていれば再生する」

アグリアスが静かに告げた。

「私も実物を見るのは初めてだったが……理屈の上では、そういう魔物だ」


……なるほど。

だから――閉じ込めて、細切れにして、燃やしたのか。俺ごと。


「モンスターの話より、あんた何者よ!

なんで無傷なのよ!」

ステラがずいっと詰め寄ってくる。


「いや、服は犠牲になったけどな……」


「だから、なんでそれだけで済んでるのよ!」

こいつ、完全にアグリアスと同じタイプだ。

気になったら一直線、止まらない。


「確かに……わたくしも少し、不思議には思っておりましたわ……」

カサンドラがそう口にした瞬間――


ネコショウが声を張り上げ、会話は遮られた。

「みなさん! なにか来ます!」


シューッ……という、空気が漏れるような音と共に、薄紫色の煙が周囲に立ち込め始める。


「皆、私の傍へ……

――覇光斬・祓魔方陣ふつまほうじん

アグリアスが聖剣クラリウスを地面に突き立てると、光輝く魔法陣が浮かび上がった。


紫色の煙は魔法陣に阻まれ、

天地空、ことごとく遮断される。


「お姉様! 危ない!」

カサンドラが剣を抜き、アグリアスを庇う。


次の瞬間――影が揺れた。

「きゃっ!」


何かが、カサンドラをガスの外へ弾き飛ばした。


「カサンドラ!」

アグリアスの声が響く。


だが、魔法陣の発動中――彼女は動けない。

この中で、ガスが効かなさそうなのは……俺だけだ。一瞬、迷いがよぎる。

――それでも、行くしかない!


ラッキースケベの力を信じ、俺はガスの中へ飛び込んだ。

……うっ。多少むせるが、動ける。

ガスに対してラッキースケベとか、

もはや意味が分からない。理屈も分からない。

だが、今はそれどころじゃない。


「リョウカ様、待ってください!」


「ネコショウさん、今は危ない!」


「デュナンさん、離してください!」

背後でネコショウとデュナンの声が響く。


「落ち着いて! 相手は複数よ!」

ミザリアの声を最後に、

仲間の声は霧の向こうへ遠ざかっていった。


すぐにカサンドラを見つける。

弾き飛ばされ、木の幹に激突したらしい。


「カサンドラ、大丈夫か!」

倒れ込む彼女を抱き起こす。


「このガス……おそらく麻痺毒ですわ……

……体が、思うように動きません……」

彼女の身体が、小刻みに震えている。


――くそっ。

「なにを……なさいますの……」


俺は舌打ちし、

お姫様抱っこの要領で彼女を抱え上げた。


「やめて……下ろしてくださいまし……」


「じっとしてろ!」


視界は最悪だ。

ガスと霧で、アグリアスの位置も分からない。


――まずは、このガス地帯を抜ける!

煙の薄そうな方へ、俺は駆け出した。


その瞬間、黒い影が視界を横切る。


「くっ……!」

たぶん、ラッキースケベのお陰だ。

間一髪のところで、反射的に身を捻る。

速い。姿が、見えない。


「……たぶん、B級モンスターの

黒狼ブラックダイアウルフ”ですわ……」

カサンドラの呼吸は荒く、声も掠れている。


「B級か……単体なら、なんとかなりそうだが」


「いえ……甘く見ないで……

黒狼ブラックダイアウルフは知能が高く、

集団で狩りをしますの……」


その言葉通り、

周囲を無数の黒い影が取り囲んでいた。

黒い狼――ただし、大きさは熊並み。


「カサンドラ……すまん……」

俺は彼女を体に引き寄せ、腰から剣を抜き取る。


「ちょっと……あなた、剣なんて使えないでしょう」


「ああ……使えない」

それでも、彼女を置いて逃げる選択肢は最初からなかった。

だが――俺には、ラッキースケベがある。


彼女を、できるだけ近くへ。

この加護が及ぶなら……守れる。


「ちょっと……苦しいですわ……

どさくさに紛れて……なにを……」


「悪い! 少し我慢してくれ!」


影が、跳ぶ。見えない。

だが、飛び込んでくる“気配”だけは分かる。

狙いも定めずに、カウンターの要領で、

突っ込んできた黒狼ブラックダイアウルフを斬り裂いた。


「……いける。

速度を利用すれば、致命傷は与えられる……!」

黒狼は執拗に飛びかかってくる。


だが、そのたび、俺の身体は紙一重で躱していた。

ただ――何度か、カサンドラの身体を爪が掠める。

「ぐっ……」


駄目だ、このままじゃ彼女が持たない。


「カサンドラ、大丈夫か!」


「はぁ……はぁ……」

返ってくるのは、荒い呼吸だけ。


「くそ……きりがない!」

どれほど時間が経ったのか。

躱し、斬り、また躱す。

やがて、黒狼ブラックダイアウルフの群れは、

霧の向こうへ消えていった。


――だめだ。

もう体力が、限界だ。

少し歩いた先に、小さな洞窟が見えた。

あそこなら暫くは身を隠せそうだ。


俺はカサンドラを抱えたまま、

洞窟へと身を滑り込ませた。

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