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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
四章 テウザ山編

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二人の関係?

焚き火が爆ぜる音で、ふと意識が浮上した。


目を開けると、ネコショウ(美少女モード)の膝枕に預かっている。


「あれ……ここは……」

体を起こそうとして、周囲を見渡す。


森の中。どうやら野営中らしい。焚き火の明かりが木々の影を揺らしている。


仲間たちは既に眠りについており、

ネコショウだけが起きて、俺の頭をそっと撫でていた。


「あ、リョウカ様。起こしてしまいましたか?

すみません……」


「ああ……そうか……」

記憶がゆっくりと戻る。

アグリアスの腹パン。その直後――気絶したんだっけ。


「ここは、テウザ山のふもとの森です」


「なるほど……。

あれ? デュナンとステラさんは?」

焚き火の周りに視線を走らせるが、二人の姿が見当たらない。


「お二人は、周囲の見張りをしてくださっています」


「そうか……ネコショウは寝なくていいのか?」


「私は夜行性なんですよ」


「ネコだから、そりゃそうか」


仰向けになったまま、何気なくネコショウの頬に触れる。


「ネコショウ。

いつも運んでくれて、ありがとう」


「んっ……リョウカ様、くすぐったいですよ」

ふっと、ネコショウの瞳が緩む。

だが、その奥に――ほんの一瞬、哀愁の色が宿った。


「……リョウカ様」

ネコショウは、ためらうように言葉を選んでから続けた。


「リザリー様は……去り際に、何か言っていませんでしたか?」


――やっぱり、か。

誰よりも彼女のことを気にしているのは、ネコショウだ。


「……いや。なにも言ってなかった」


「……そうですか」


少しの沈黙。


「……リョウカ様。

勝手なお願いかもしれませんが……」

ネコショウの声が、微かに震える。


「リザリー様を……殺さないでください」

俺の頬に、冷たい雫が落ちた。


「ああ……。

そもそも、お前の知ってるリザリーは、簡単に殺られるようなタマじゃないだろ」


ネコショウの目を見る。

「むしろ、俺たちの方を心配してくれ」


「……ふふ」

ネコショウは、小さく笑った。


「そうですね。

やっぱり、リョウカ様と一緒にいると……何だかホッとします」


胸の奥が、少しだけ温かくなる。


「ネコショウ。

一生、俺の傍にいてくれ」


次の瞬間。

ネコショウが勢いよく立ち上がり、

膝枕を失った俺の頭が、地面に叩きつけられた。


「いでっ!」


「あっ……す、すみません!」

慌てて頭を下げるネコショウ。

「で、でも……リョウカ様が、変なことを言うからです。 私は化け猫です。眷属というか……魔物みたいな存在で……」

視線を伏せ、小さく続ける。

「……そんな相手に……」


「え? そんな変なこと言ったか?」

正直、よく分からない。


ネコショウは、家族みたいなものだ。

――少なくとも、俺はそう思っていた。

いなくなったら、きっと寂しい。

できれば、ずっと傍にいてほしい。

それは、そんなにおかしな感情だろうか。


「まったく……」

ネコショウが、ぷいっと顔を背ける。


「そういうところが、アグリアスさんを“ヤキモキ”させるんです!」


「なんで、アグリアスの話になるんだ?」


「もう知りません!」

ネコショウは、尻尾を夜空に向けてピンと立て、


そのまま背を向けて横になってしまった。

……女心は難しい。

いや、メス猫心か?


再び睡魔に引きずり込まれそうになった、その時。

「……私も、人間だったらよかったのに……」

小さな呟きが、風に紛れて聞こえた気がした。


その言葉は俺の耳には届かなかった。



野営地から少し離れた高台。

デュナンとステラは並んで腰を下ろし、周囲を警戒していた。


「ふぅ……今日は、風のマナが落ち着いてていい夜だね」

エメラルド色の瞳が、野営地の焚き火を静かに見下ろす。


その横顔を、ステラがじっと見つめていた。

「……デュナン。

あなた、変わったわね」


「そうかい?」


「昔は、もっとギラギラしてた。

狼みたいで……」


「狼、か。ひどい言われようだな」

軽く笑いながら、デュナンは続ける。


「それよりステラ。

キミの父君には、許可を得てここにいるのかい?」


「うっ……」

ステラは、露骨に言葉に詰まった。


「まったく……。

キミは昔から変わらないね」

ため息混じりに言う。


「もう少し、周りのことも考えたらどうだい。

父君に、あまり心配をかけないように」


その瞬間。

ステラは、デュナンの胸に顔を埋めた。

そして、拳でその胸を軽く叩く。


「……ステラ、どうした?」


「どうした、じゃないわよ……」

声が、震えている。


「あなた……自分のことは棚に上げて……」

言葉が溢れ出す。

「前回も……そして今回も……

どうして、何も言わずに私を置いていったのよ……」

拳が、再び胸に触れる。


「どうして、家を出たの……

どうして、婚約を破棄したの……

どうして……私じゃ、ダメなのよ……」


「…………」

デュナンの口元が、微かに震えた。


「……何とか言いなさいよ……」


「ステラ……すまない」

それ以上、デュナンの口が動くことはなかった。

虫の鳴き声に紛れて、

すすり泣く声だけが、静かな夜に広がっていた。

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