旅は道連れ?
――明朝。
アーバス公から大量の食料をいただき、
風呂敷、酒樽ごと、ネコショウ(化け猫モード)の
体に括り付けた。
名残惜しいが、俺たちは水晶の町を後にした。
「そういえば、あのステラって子、最初に絡んできた以外はあまり姿を見なかったですわね」
カサンドラのミント色のサイドテールが風になびく。
「あー、デュナンの許嫁って言ってたやつか?」
「それでも屋敷にいる間、何度か僕らの周りを嗅ぎ回ってたよ」
「ふ〜ん。あの子、デュナンの事が好きだったんじゃないの?」
ミザリアがデュナンの横腹を肘で突く。
「ちょっと、やめてくれよ。あんな口うるさい奴…」
ガタッ!
揺れのせいか酒樽が軋む。
「確かに性格はキツそうだったな…」
ガタガタガタ!?
酒樽が激しく揺れる。
「そうか? 可愛らしい子ではなかったか」
確かにステラはアグリアスと系統は似てるかもしれん。アグリアスは変に自己評価が高いから同類の
ステラを悪く言わないのか?
「彼女、誕生日を忘れただけで泣きわめくんだ。
たまったもんじゃないよ…」
「それはデュナンが悪いわよ」
「そうですわ」
「ああ」
「ほんとそうよ!」
女性陣がこぞってデュナンを批判する。
…ん?
あれ、なんか今、反応が一人多くなかったか。
ミザリア、カサンドラ、アグリアス、ネコショウは今、“にゃあ”しか言えないもんな。
…気のせいか?
「ステラよりリョウカくんの方が魅力的だよ!」
デュナンは仰々しく腕を伸ばす。
「それはそれで、気持ち悪いから止めてくれ」
まったくコイツはブレないな。
「そうだぞ、リョウカは止めておいたほうがいい。女ったらしだし、人の気持ちを弄ぶし、変態だし、気持ち悪いし…」
アグリアスは俺を罵りながら何故か頬を赤らめる。
「でも、そんなところも含めて好きなのよね?」
「あ、ああ…」
アグリアスはミザリアの言葉の罠にかかる。
「ああっ!?
だ、誰がこんなヤツ好きになるか!!」
アグリアスさん、情緒がもう…。
でも、いつも通りのアグリアスだ。
この方が塞ぎ込んでいたアグリアスよりずっといい。
「お姉様、いい加減目を覚ましてください。
こんなヤツのどこがいいのですか!」
カサンドラがアグリアスの両肩を持ち揺さぶる。
「だから好きだなんて言ってない!」
頬が紅潮するあまり、
誰か識別できないくらいアグリアスが真っ赤だ。
そんな反応されると何か、俺まで恥ずかしくなるから止めてくれ。
「あれ? そう言えばアグリアスさん、アーサー騎士団長を前に、最愛の人だ―って、ぐわ!」
「それ以上は言うなー!!」
アグリアスの正拳突きがデュナンの鳩尾を捉える。
「ぐっ、こ、ここで我が使命、潰えるのか―」
デュナンの目の前が真っ暗になった。
バコッ!!
「デュナン! 大丈夫!」
突如、酒樽の蓋が飛び、中から見覚えのある少女が飛び出してきた。
「えっ!? ステラさん?」
「あっ…」
俺とステラの目が合い気まずい沈黙が流れる。
「なんで、ここにいるんですの?」
カサンドラも口に手を当て目を見開いている。
「もしかして、デュナンを追っかけてきたの?」
「え、いや、そ、そんなわけないでしょ!
ただ、心配だったのよ…」
ミザリアの指摘が図星だったのか、ステラは慌てふためく。
「もう、クリステラから結構離れてるからな。
今更、引き返せないか…」
「なら、ここで、捨て置くか?」
俺の言葉にアグリアスは非常な提案をする。
「!?」
ステラは泣きながら首を激しく左右に振る。
一瞬の沈黙の後、
アグリアスが「ふっ」と吹き出した。
「冗談だ。お互い苦労するな…。
ついてきても構わんが……この先、命の保障はできんぞ!」
「なら、なおさらデュナンについて行く!」
ステラは歯を食いしばり言い切る。
ミザリアはそんな二人をニヤニヤしながら見ていた。
…苦労するなってなんのことだ?
ま、いっか…。
デュナンが気絶している間に話はトントン拍子に進んでいった。
ステラはデュナンに膝枕をしつつ、彼の頭を撫でている。
「この先、東に進むとテウザ山がありますが、お姉様、迂回しますか?」
「そうだな…突っ切った方が早いが、今は山の主のスケイルドラゴンが死んでから、魔物達の縄張り争いで活発化してるからな…」
アグリアスは顎に手を当て考え込む。
「お願い。テウザ山に寄って!
私の友達がいるの」
突然、ステラが会話に入ってくる。
「友達…ですか?
でも今はそのような状況ではないですわよ」
カサンドラが怪訝そうにステラを見る。
「もしかしたら力を貸してくれるかも…」
「男? 女?」
大事なことだから訊いておかないと。
「え、えーと……」
ステラは一瞬、視線を泳がせてから答えた。
「女の子よ」
エアリー王女をなんとしても救う。
彼女も俺たちの居場所の一つなんだ。
それには一人でも多くの戦力がほしい。
女の子ならなお良し。
「よし、テウザ山に行くぞ!」
即答して、俺は指揮をとる。
「ぐはっ…」
アグリアスの正拳突きで本日二人目の犠牲者(俺)がでる。
「とりあえず。今から山に登ると日が暮れる。今夜は麓で野宿して明朝立つぞ!」
薄れゆく意識のなか、アグリアスの声が響く。
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