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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
三章 逃亡編

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転換点?

レオンハート邸を出ると、

アグリアスはクラリウスの手入れをしており、

その隣でカサンドラが気まずそうに佇んでいる。


……この二人には、エアリー王女の居場所は訊きづらい。


今回、一番先に話をつける必要があるのは

エアリー王女だろう。


彼女の真意によって、

俺たちの命運は左右されると言っても過言ではない。


一人で立つリザリーが、遠目から

エアリー王女とネコショウが二人で買い物している姿を見ていた。


はしゃぐ二人を見て、微笑ましそうにしている。


――まるで、保護者みたいだな。


「盗み見か?」

リザリーは、後ろにいた俺に話しかけてくる。


「なんだ、バレてたのか……

リザリーも二人に混ざればいいのに」


「そうだな……だが、魔族のわらわが行くと目立つからな。

ここでいい」

彼女からは、それ以上の言葉は返ってこなかった。


「リザリーは、これからどうする?」


「妾がお前らといる理由は、ただ一つ……

ネコショウがいるからだ。

あの子は、お前らといる方が楽しそうだな」


「リザリーだって、楽しそうだぜ……」


「ふっ、そうかもな。

お前らといると、飽きないよ」


俺は、リザリーの手を引いた。


「おい! リョウカ!

な、なにをする!」

彼女の青紫色の肌は、ひどく冷たかった。


「お~い! ネコショウ!

リザリーが少し話したいって!」

遠くから、ネコショウとエアリー王女に手を振る。


「おい、勝手なことをするな!」


「まあまあ。

お互い、話す時間も必要だろ?」

それは、俺自身も同じだった。


二人の元へ駆け寄ると、さっそく切り出す。


「エアリー王女、少しお話しいいですか?」


「リョウカさん……」

彼女は、ある程度状況を理解したように頷いた。


「リョウカ様――どうされたんです?」

ネコショウは尻尾を揺らしながら、首を傾げる。


「ネコショウ、エアリー王女と話があってね。

代わりにリザリーを置いとくよ……」


「こら、人を物みたいに扱うな……」

そう言うリザリーは、満更でもない様子だ。


「じゃあ、エアリー王女、またよろしくお願いします!」

ネコショウは可愛らしく、三本の尻尾と片手を振る。


エアリー王女が手を振り返したのを見届けると、

俺は彼女の手を引き、その場を離れた。


「リョウカさん……どうしたというのです?

今日のリョウカさんは、少し強引ですね」

適当な場所で腰掛ける。


「エアリー王女も、どうぞ」


「はい……」

エアリー王女は、若干気まずそうに

ドレスの裾を整えながら座った。


「それで、お話というのは……」


「ごめん。

みんなの前だと、話しづらいと思って……

単刀直入に訊く、エアリー王女は、これからどうしたい?」


「えっ……どうする、ですか……

どうすればいいんでしょう」


「率直な気持ちでいいんだ……」


「私……わからないんです。

王都から離れて嬉しい反面……

本当に、これでよかったのか、毎日考えてしまって……」

エアリー王女の呼吸は荒く、

次第に声が裏返っていく。


俺は、エアリー王女の頭に手を置き、

優しく撫でた。


「うっ……うわぁぁぁああああん……!

うわぁぁぁあん……!」

彼女は、人目もはばからず、

せきを切ったように泣き出した。


これじゃあ、まるで俺が泣かせたみたいだ。

どことなく、罪悪感を覚える。


彼女の泣き声は、町の喧騒と共に次第に落ち着いていった。


彼女が泣き終える頃には、

すでに夕暮れ時となっていた。


エアリー王女の涙を、軽く拭う。


「エアリー王女……このまま、二人で逃げないか? 

……遠くの地で静かに二人で暮らそう」


――逃げ道を示しただけだ。

選ぶのは、彼女自身だ。


エアリー王女は、突然の告白に

ぷっと吹き出した。


「な、なんだよ!」


「それは、地下室での

私の言葉への返答ですか?」


そうだ。

エアリー王女に言われたセリフを、

そのまま返したにすぎない。


「どうです?

俺、本気ですよ……」


「ふふ……

リョウカさんは、悪い人ですね。

王女をたぶらかすなんて。

でも……私、気付いたんです!」


泣き腫らした彼女の瞳に、

決意のような光が宿る。


「リョウカさんに頼ってるままの自分じゃ、いけないって。

このままじゃ、貴方を失望させてしまう。

だから……

これからの私を、見ていてください。

胸を張って、

貴方の隣を歩けるように……!」


「ああ……見てるよ」


「その代わり、責任は取ってもらいますからね!」

 エアリー王女は、イタズラっぽくウィンクする。


「……ん?

責任って、どういうことだ?」


話し込んでいるうちに、

辺りはすっかり暗くなっていた。


「っと、やべっ。

夜になるな。そろそろ屋敷に戻ろう」


俺は、エアリー王女の手を引き、走り出した。



魔蟲が大地を蠢く中、

暗い足音が、地を踏みしめる。


その足が進むたび、

魔蟲たちは怯えたように、地中へと引き返していった。

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