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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
一章 王都編

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無双?

「くっくっくっ……矮小な人間が」

巨大な黒猫の頭上で、魔族の女が嗤う。


三本の尻尾がしなる。

空気が裂けた――次の瞬間には、俺の頭上へ叩きつけられていた。


「うおっ!!」 反射で手を前に出す。

……尻尾に当たった。


普通なら両腕が粉砕される威力のはずだが――なぜか無傷。


衝撃は確かにあった。

なのに、痛みだけが抜け落ちている。


今の一撃で、生きているのが異常だと分かった。


ラッキースケベって……ダメージ軽減効果もあるのか?

……いや、そんな説明は受けてない。


「フニぁあん」


――……は?

突然、巨大な黒猫が文字通り猫撫声をあげた。

空気が、一気に変わった。


「なんじゃネコショウよ!? どうしたのだ!」


次の瞬間――黒猫が光に包まれ、縮んでいく。

現れたのは、尾が三本の愛らしい子猫。


「フニぁ~ん」

そして何故か俺に頬ずりを始めた。


誰も状況を理解できていない。俺を含めて。


「貴様……ネコショウに何をした!」


「いや、俺も状況がまったく……」


「いったい何がどうなってるの…」


「わかりませんわ」 

「同感だ」

カサンドラもアグリアスも呆然としている。


魔族の女が子猫の前で屈む。

「にゃにゃにゃにゃににゃな」

「フニぁ~ん。にゃお~ん」

なんか……猫語で会話始まった。


話が、完全に別次元へ滑っている。

これってどういう状況?


「貴様ぁーーっ!!」

いきなり魔族の女が真っ赤になって怒鳴った。


どうやら、理解したのは彼女だけらしい。

――そして、その内容は口に出せない類のものだ。


「ちょっと落ち着けって。何がどう――」

俺の言葉に魔族の女は頬を赤らめる。


「そ、そんな事言えるわけないだろうが!

ネコショウにあんな事をしておいて…はっ、ハレンチな!」


「ちょっと待ってくれ、俺が何をしたっていうんだ。ちゃんと説明してくれ」


「きっ、貴様、まさか女である私にそんな事を言わせて、愉しもうというのか?

お前は何という変態なのだ」


後ろから冷たい刺すような視線。


そっと振り返ると――

「キモ」

「……ほんとですわね」

アグリアスとカサンドラの視線がゴミムシを見るそれだった。


完全に、立場が逆転していた。


「おい! せっかく助けに入ったのにあんまりだろ!」


「許さん!」 魔族の全身からドス黒いオーラが噴き出す。


交渉の余地は消えた。


「死ねぇっ!」

魔族の女の腕が槍のように伸び、俺の顔面へ突き刺さり―― 

……口の中に入った。


「もがっ!? もがががが!?」

しょっぱい。


「ぎゃああああああっ!?

貴様、私の腕を舐め回してっ……うう、き、気持ち悪い……」


「これって、おれのせいなのか……」


「ならば遠距離魔法で処すのみ!

獄炎球コロナオーブ!」

巨大な火球が生成される。


本気で殺しに来ている。


「うわっ、避け――」

爆炎が俺に直撃――した、と思った瞬間。

……火球が消えた。


「……あれ?」

攻撃が成立していない。


「ま、まさか……魔法を……果てさせるなんて……変態……」


「いやだから意味が分からん!! 

魔法が果てるって何だよ!」


「この屈辱、必ず晴らす! 覚悟しておけ!」

魔族の女は涙目で叫び、煙のように消えた。

 

敵は撤退したが、理由は分からないままだ。


「…………ふぅ。とりあえず、生きてるな」

勝ったというより、やり過ごしただけだった。

この力が制御できない以上、次はどうなるか分からない。


「フニぁ~ん」

子猫は俺の足にすり寄ってくる。

振り返る。


アグリアスもカサンドラも若干ドン引きした顔。


「……あ、ありがとう」


「助かりましたわ、あっ!」


次の瞬間、カサンドラが俺に飛びついた。

いや、正確には倒れ込んできた。


「ぶっ……!?」

ビキニアーマーの胸部の突起が俺の胸に刺さる。

痛い。普通に痛い。


状況は収束したが、根本的な問題は何も解決していない。

……けど、とりあえず一件落着だ。

――今日のところは。

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