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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
三章 逃亡編

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水晶の町?

年輪を重ねた巨大な熱帯樹の上方に、水晶を灯りとするツリーハウスの町がひしめき合っていた。


枝々に渡された足場と回廊を縫うように、無数の水晶が街灯代わりに吊るされ、淡い光を放っている。

――水晶の町、クリステラ。


「うわ……綺麗な街ですね……」

最近、どこか塞ぎがちだったエアリー王女の顔に、久しぶりに柔らかな笑みが灯った。


デュナンと因縁ありげな視線を交わす、ステラと呼ばれた少女に案内され、俺たちはレオンハート公の屋敷へと向かう。


「……にしても、まさかお前がレオンハート公家の子息だったとはな……」

リザリーが眉をひそめ、訝しげにデュナンを見る。


「ははは……話す機会がなかったからね」

デュナンは少し気恥ずかしそうに、鼻の頭をかいた。


「それに、こんなに可愛らしい許嫁までいたなんて!」

ミザリアが嬉々として視線を向けると、

即座にステラが食ってかかる。


「元許嫁よ! もと・ね!!」

なかなか気の強そうな子だ。


ふと、ネコショウに目をやる。

一歩踏み出した瞬間、わずかに足取りを乱した。


すぐに何事もなかったかのように体勢を立て直すが、尻尾の動きだけが鈍い。

――その遅れが、無理をしている証のように見えた。


俺の視線に気付いたのか、

「……問題ありません」

そう言い切る声は、いつもより少し掠れていた。


「ネコショウ、長旅で疲れただろ。今度は俺が担いでやるよ」


「え、リョウカ様……ま、待ってください!」

俺はネコショウを抱え上げ、そのままお姫様抱っこする。


「みなさんが見ている前で……恥ずかしいです…」

顔を両手で覆い、頬を赤らめるネコショウ。

三本の尻尾が、ひらひらと宙を舞った。


「くぉらぁ!! 

うちのネコショウに気安く触ってんじゃねぇ!!」

背後からリザリーの怒号。


次の瞬間、俺は思い切り蹴飛ばされていた。


「うぉっ! 危ねぇって!」

バランスを崩して倒れる俺を尻目に、ネコショウは風魔法で宙に浮かび、今度はリザリーが抱き留める。


「リザリー様……あ、ありがとうございます」


「最近、構ってやれてなかったからな。

これぐらい、いいんだ」

そう言うリザリーは、ほんの一瞬だけ遠い目をしていた。


「まったく……どこにいても賑やかな方々ですわ。ね、お姉様」


「あ、ああ……」

カサンドラの問いかけに、アグリアスは心ここにあらずといった様子だ。


「いいわね。あなたは楽しそうで……」

ステラが、嫌味ったらしく微笑むデュナンを睨む。


「はは……ステラは、楽しくないのかい?」

キッと睨み返したものの、ステラはそれ以上何も言わなかった。


どこもかしこも、内面に火種を抱えている。


「カサンドラ、荷物持とうか?」


「な、なんですの突然……。

気持ち悪いですわ。何か下心でも?」

ミント色のサイドテールを揺らし、

露骨に距離を取られる。


「いやいや、俺なりに気を遣ってるんだって。

その言い方、さすがにひどくないか?」


「さっきのネコショウへの行動といい…

…女性に触りたいだけでは?」


「確かに前科はあるけどさ……

アグリアス、なんとか言ってくれよ!」


「ああ……リョウカは女好きだぞ!」

……何も考えていないなら、尚更その一言は胸に残った。


気付けば、クリスタルを削り出した建物の前に立っていた。

太い樹木が絡みつき、屋敷そのものが巨大な装飾品のようだ。


「ここが、僕の実家だよ」

  

案内されるまま、クリスタルの床を進む。

内部にまで伸びた樹木は、すでに屋敷の一部と化していた。


正面の木扉が開かれ、赤い丸絨毯が敷かれた書斎へ通される。


「デュナン・レオンハート……ただいま戻りました」

デュナンは畏まり、膝をついて頭を下げる。


部屋の奥、机の傍に深緑の髪の男が背を向けて立っていた。


「今さら、何故帰ってきた。貴様は勘当したはずだ。天頂トーナメントに参加したいなど、戯言を抜かしおって……

メルフォード公との婚約も無碍にして、失礼だとは思わんのか」


「……申し開きのしようもございません」


「まあよい。貴様とは話す気にもならん」


男が振り向く。

睨まれている――いや、そう見えるだけかもしれない。   

それほど鋭い眼光だった。


「エアリー王女。

王都侵略の件は西の地にも届いております。

御父上の件、誠に残念ですが……

誘拐されたとの御触れがあった貴方様が、ご無事で何よりです」

先ほどまでの威圧が嘘のように、深々と頭を下げる。


「いえ……デュナン・レオンハート公のお陰で、

逃げ延びることができました。

どうか、彼をあまり責めないであげてください」


エアリー王女もまた、頭を下げた。


「愚息には、もったいないお言葉です。

私はこの地を治める、アーバス・レオンハート。

皆様、長旅で疲れたでしょう。客間を自由に使ってください。

今後のことは……休まれてから、ゆっくり考えましょう」


そうして俺たちは、束の間の休息を得ることになった。

――水晶の光が、夜を昼のように照らしながら。

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