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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
三章 逃亡編

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西の砂原?

俺たちは西へと飛び、草木がまばらに点在する砂原へとたどり着いた。


「リョウカくん。もう大丈夫だよ」

緑の髪を揺らしながら、デュナンが爽やかな笑顔を向けてくる。

しかも――お姫様抱っこされながらだ。


「やだやだ!

 俺はリザリーに抱えられたかった!」


「なんだ? ガルザス剣山ではあれほど嫌がっていたではないか」


リザリーの一言に、アグリアスがわかりやすく反応する。

「なにっ!? 貴様ら、あの雪山で何をしていたんだ!」


緊張の糸が解けたからなのか、俺たちはいつも通りに戻っていた。


やがて日は暮れ、砂地が茜色に染まる。


荒れた大地にぽつりと立つ大樹の下へ腰を下ろした。


「ネコショウたちは、もう少し先の町で待機している。今夜はここで野宿し、明日合流しよう」


「なんだ、リザリーってそんなことまで分かるのか?」


「ああ。ネコショウは妾の眷属だからな」


「へぇ~、それは便利だな……」


その時、腹の虫が盛大に鳴いた。


「それにしても腹が減った……」

俺はそのまま地べたに寝転がる。


「食料は全部ミザリアたちが持っているからね……仕方ないよ」


そう言いながら、デュナンは大樹の笹のような葉を折り、器用に即席のコップを作る。


さらに木になっていた実を割り、果肉と果汁を絞り出した。

「今日はこれが晩ごはんだね」

四人分作り、それぞれに手渡される。


とりあえず口に含みつつ、俺たちは焚き火を囲んだ。


「アーサー騎士団長……噂に違わない化け物だったね。僕とリザリーの魔法でも倒せないなんて……」


――あの剣を、もう一度正面から受けたいとは思わない。

だが……次に会う時も、逃げ切れる保証はない。


「アーサー騎士団長は人類最強と名高い男だからな」

アグリアスは、どこか複雑そうな表情を浮かべる。


……一つ引っかかる。

魔王軍の幹部は千年もの間、誰一人倒されていない。

アーサーほどの実力があれば、何人かは普通に倒せそうな気もするのだが――。


「あっ、そういえばデュナン。

 前に“詠唱は破棄するのが普通”とか言ってなかったか?」


「ああ。実は詠唱にはメリットもあるんだよ。

 詠唱すると、魔法本来の威力を完全に引き出せるんだ」


「僕とリザリーは特殊だから、詠唱してもしなくても威力は変わらないけどね」

その言葉に、アグリアスが興味を示す。


「私も気になっていたんだ。

 特にデュナンは、剣士でありながら魔法を剣技に組み込む稀有な例だ」


「……ん?

 アグリアスは違うのか?

 ほら、あの“聖剣なんたらー!”ってキメ顔で叫んでるやつ」


「き、貴様! 私を愚弄するか!」

頬を赤らめ、アグリアスが俺の肩をポカポカ殴ってくる。


最近、こいつの反応を見るのがやたら楽しい。


「わ、私の技は、このクラリウスがなければ使えんのだ!」


魔装具グラーティアね……」

リザリーは飲み物を口に含みながら、金色に輝く聖剣を見つめる。


「……話を戻そう。

 僕とリザリーで揃って詠唱したのは、互いのマナを同調させるためだよ」


「同調?」


「ええ。本来、二人で魔法を放つと異なるマナが反発し、威力が落ちるの」

リザリーが長い爪を研ぎながら補足する。


「……魔法って面倒くさいな」


…ん? アグリアスの体が大きく揺れている。


「う~、ひっく……

 それより私は、お前の使っている変な加護の方が気になるぞ!」


突然、アグリアスが詰め寄ってきた。

なんだこのテンション……。


「あ、そういえば。このココナルの実、少量だけどアルコールが入ってるんだった」


「えっ? 俺は全然気づかなかったけど……」

葉の器に注がれた飲み物を嗅いでみる。


「彼女、お酒に弱いみたいね」

リザリーが小悪魔的な笑みを浮かべる。


「う~、ひっく!

 それにだな、お前は突然、私の前に現れて――」


「それ、いつの話だよ……」

完全にベロベロだった。


「アグリアスは意外と情熱的よね。

あの騎士団長を前に、リョウカに告白するなんて……」


「……ああ、そんな展開ありましたね。

 すっかり忘れてました」

次の瞬間、アグリアスが発狂する。


「むっぎゃあぁぁぁ!

 わ、私はそういう意味では言っていないのだぞ!」


「あら。“最愛”なんて言葉、愛以外にどういう意味があるのかしら?」

完全に遊ばれている。


「や、やめろ!

 リョウカ……そ、それは仲間として、友としての最愛だ!」 

その反応が面白くて、俺も乗っかる。


「俺はアグリアスのこと、愛してるのに……」

わざと悲しげに目を伏せる。


「えっ……」

一瞬、空気が凍る。

アグリアスは恋する乙女みたいな顔で固まっていた。


……あれ、なんだその反応、思ってたのと違う…それにアグリアスって意外と…。


「リョウカくん……僕、なんだかアツいよ……」

デュナンが謎の対抗心を見せ、俺の胸に顔を埋める。


「お前はシラフだろ! 離れろ!」


「わ、私もアツいのらー!!」

アグリアスまで突っ込んでくる。


「ばかっ、やめろー!」


しばらくして、焚き火の爆ぜる音だけが砂原に残った。夜風が吹き抜け、揺れる炎が俺たちの影を静かに伸ばしていく。


空を見上げれば、雲一つない夜空に星が瞬いていた。


そんな俺たちを酒の肴に、焚き火のそばでリザリーは静かに微笑んでいた。

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