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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
三章 逃亡編

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告白?

夕刻、ネコショウが息を切らして屋敷へ戻ってきた。

皆、言わずもがな談話室で待機している。


「はぁ……はぁ……みなさん………大変です」


「落ち着いて」

リザリーが歩み寄り、ネコショウの背中に手を添える。

「まずは呼吸を整えなさい」


「……はい」

深く息を吸い、吐き。 ネコショウは顔を上げた。


「王都で、ライザルド公が直接、騎士団に指示を出している場に出くわしました。

騎士団と兵士が、総出でエアリー王女を探しています」

談話室の空気が、一段冷える。


「理由は……」

ネコショウは一瞬、言いよどんだ。

「王女を迎え入れれば、民草の信頼を得やすい、と」


「……そんな」

エアリー王女が口元を押さえ、言葉を失う。


「胸糞悪い話だ」

アグリアスが机を叩いた。

「最初から、王女を“道具”としか見ていなかったというわけか……」


「ですが」

カサンドラが不安げに続ける。

「騎士団は本来、副団長以上の命がなければ動きません。お姉様がここにいらっしゃるのに…

…どういうことでしょうか」


「……騎士団も、ライザルド公の手に堕ちたと思った方がいい」

デュナンが静かに言った。


「そんな……」

アグリアスの声が震える。

「東の国境には、騎士団長殿が……!」


「――静かに」

ミザリアが一歩前に出る。

「考える時間は、もう残ってないみたいよ」


「……その通りだ」

リザリーが低く言った。


――直後。

ドンッ!!

凄まじい爆音が屋敷を揺らした。

窓ガラスが砕け、熱風が吹き込む。


「来たか――!」

「ネコショウ!」

「はい!」

ネコショウの身体が瞬時に膨れ上がる。


巨大な化け猫となった彼女は、燃え広がろうとする炎へ体当たりし、壁ごと叩き潰した。


「エアリー王女とカサンドラを先に!」

アグリアスが即座に指示を飛ばす。


ネコショウは三叉の尻尾で二人を器用に背に乗せた。


「お姉様! 私も残ります!」

カサンドラが必死に手を伸ばす。


「行け」 アグリアスは振り返らない。

「……足手まといだ」

一番、効く言葉だ。


カサンドラはその言葉で涙目で手を引っ込める。


「リョウカさん……私、待ってますから」

エアリー王女がこちらを見る。


それ、フラグだからやめて。

俺は後ろ手に軽く手を振った。


「私も行くわ!」

ミザリアが身支度した荷物を放り投げる。

「ネコショウちゃん、お願い!」


「うにゃっ!」

巨体が跳ね、ネコショウは西側へと突っ込んだ。


屋敷の外、夕焼けに照らされた赤黒い甲冑が、完全に包囲している。


「……ライザルド公国の兵」

アグリアスが歯を噛みしめる。


「うにぁああん!」

ネコショウの巨大な前脚が振るわれ、西側に突破口が開いた。

「行け!!」


――そして。

一人だけ、兜を被っていない男が前へ出た。


肩まで伸びる銀髪。鋭い眼光。

額の古傷と、鎧の上からでも分かる鍛え抜かれた体躯。

「……アーサー、騎士団長」


「よもや、魔王軍と手を組んでいたとはな」

男は冷ややかに言った。

「……堕ちたものだ、アグリアス」


「なぜです……なぜ裏切ったのですか!?」

アグリアスの声が裂ける。


「魔王に与する君に、言われたくはないな」


――その瞬間。

アグリアスの手が震えた。

クラリウスの穂先が、定まらない。

迷っている。

剣ではない。

彼女自身が。


俺は一歩、前に出た。

「魔王軍の幹部を引き入れたのは俺だ。

アグリアスは、一度も正義を曲げちゃいねえ」


「ほう」

騎士団長の視線が、俺に向く。

「原因は君か」


――直後。

大剣が、叩きつけられる。


「――デュナン!」

デュナンが俺の前に立ち、剣でアーサーの一撃を受け止めた。


「もう二度と、リョウカくんを傷つけさせないと誓ったんだ!」

剣戟が火花を散らす。


「双方やめてくれ!!」

アグリアスの叫びが戦場を裂いた。


「我々の望みはただ一つ」

騎士団長が言い放つ。


「エアリー王女の身柄だ。

……それと、その小僧の首も追加しよう」

大剣の切っ先が、俺を指した。


「嫌だ……」

その時。

アグリアスが、震えるまま、一歩踏み出した。


「リョウカは……」 声が掠れる。

「リョウカは――」握り締めた拳が、白くなる。


「私の最愛の人なんだ!!」

――沈黙。

風の音すら、止まった。

誰も、すぐには言葉を発せなかった。


デュナンが、静かに俺の隣へ立つ。

「……なら」 彼は剣を構える。

「僕の愛だって、誰にも負けない」


騎士団長の口元が、緩んだ。

「なるほど……」

視線が、完全に俺に定まる。

「つくづく、人誑ひとたらしな男だ」


――戦場の空気が、変わった。

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