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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
三章 逃亡編

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訃報?

「リョウカさん……!!」

翌朝、全身に衝撃が走り、俺は目を覚ました。


胸元に柔らかな重み。

金色の髪が散らばり、甘い香りが鼻をくすぐる。


「……エアリー、王女?」


「リョウカさん……リョウカさん……っ、くず……」

彼女は俺の胸に顔を埋めたまま、嗚咽を漏らしている。言葉になっていない。


「大丈夫だ。落ち着いて……何があった?」

背中に手を回し、言葉を待った。


しばらくして、エアリーは震える声で口を開いた。

「御父様が……」


「お父様……ロメオス王?」


「……亡くなりました」


「え……?」

一瞬、言葉の意味が理解できなかった。

あの、歩くワイルドみたいな男が?


だが、悪い知らせはそれだけではなかった。

「ライザルド公国の……バルメトロ・ライザルド公が……瞬く間に、王都を占領したのです……」



アグリアスの呼びかけで、俺たちは談話室に集まった。

「早朝、ネコショウには既に猫の姿で王都を偵察させている。夕方には戻るはずだ」


「雲行きが、かなり怪しくなったわね……」 ミザリアが腕を組む。


「エアリー王女の扱いは、どうなる?」 リザリーが核心を突く。


「誘拐という話が、ライザルド公にどう解釈されているか次第ですが……」

カサンドラも険しい表情で考え込んでいる。


「準備しておこう」

デュナンが静かに言った。

「魔王軍幹部と王女が一緒にいる時点で、

見つかれば反逆罪は免れない。

遅かれ早かれ、ここは嗅ぎつけられる」


アグリアスもこれに頷く。

「……逃げるなら西か。

北は魔王の地だし、東はライザルド公国の国境。南も湿原を抜けた先は海に面している……」



……皆が動いているのに、

俺だけが置いていかれている気がした。


魔王を倒して、チートを消してもらう。

そう女神に誓ったはずなのに――

今の俺は、何もできていない。


「リョウカくん、少しいいかな」

俯いていると、デュナンに声をかけられた。

二人で外へ出る。


――次の瞬間、空気が変わった。

デュナンが、明確な殺気を放っている。


「お、おい……デュナン?」


「本気でいくよ」

彼は腰の直剣を抜いた。


「待てって! 確かに俺は不甲斐ないけど――」

言い終わる前に、視界が閃いた。

――剣が振り下ろされる。


くっ……!

剣閃が頬をかすめたが、痛みはない。

……いつも通りだ。


「やはり……」


「やはり、って……」


「キミのそれは、加護に近い」


「加護?」

「神の恩恵を受けた者の力だよ。

僕も、生まれつき風精霊シルフの加護を持っている」


……女神様も神様だもんな。

そりゃ、そうか。


「だから僕の剣は、ただの安物だ」

デュナンは直剣を軽く振る。

「マナで刃を補っているだけだからね」


さらっと凄いことを言うな。

「マナって、そんな簡単に使えるのか?」


「簡単じゃない」 デュナンは即答した。

「本来は契約が必要だ。詠唱や術式……

あるいは、魔装具グラーティアを介する」


「……でも、ミザリアとか詠唱してないよな?」


「最初はする」 それだけ言って、デュナンは言葉を切った。

「慣れれば、省ける。それだけ覚えておけばいい」


……なるほど。

細かい理屈を聞く暇はない、って顔だ。


「で、このタイミングで俺を呼び出した理由は?」

デュナンは小さく笑い、背中からもう一本剣を抜いた。


「今後に備えてこの剣を、誰に託すか悩んでいてね」


「……退魔の剣」


「そう、イエティから拝借しておいた。

これは万能だが、加護持ちが使うと相殺が起きる。

キミや僕が持てば、むしろ足手まといだ」


「……俺の加護が消える、か」

一瞬、ラッキースケベが消えるなら――

なんて考えが頭をよぎる。


「それに、持ち主の魔法も阻害する」


「なら……現実的なのは、ネコショウかカサンドラだな。回復の時だけ置けばいい」


「うん、ありがとう——参考になったよ」

デュナンは素直に頷いた。


俺たちは別れ、それぞれ身支度を始める。


……嵐は、もうすぐ来る。

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