決戦②?
ものの数分でアグリアスが目覚め、
後半戦が幕を開ける。
「さぁ、次は私たちの番だな!」
アグリアスは自信満々に両腕を組む。
――が、その隣でカサンドラは浮かない顔をしている。
あぁ、たぶんいつも通りになったんだろう。
目の前にカレーライスが小皿で並べられる。
立ち上る湯気から、スパイシーな香りが脳へ直接届く。
「へぇ~、美味しそうじゃない」
ミザリアが感嘆の声を漏らす。
俺は何も期待していない。
既に経験済みだからだ。
熱々のカレーライスを口に運ぶ。
あぁ、この複雑で香ばしいスパイシーなスメル。
そして、噛んだ瞬間――
「来るな」と身構えた舌に、何も来ない。
ただ、食感だけが虚しく残った。
期待を裏切らないな……。
香りは良い。不味くはない。不味くはないんだが……
美味しくもない。
総合的に、微妙なのだ……。
皆、言葉を失っている。誰も何も言わない。
なぜか気まずい沈黙だけが流れ続け、
黙々と食べ進めるしかなかった。
「皆、どうだろうか……」
アグリアスは期待するようにこちらを見る。
「お、美味しいですよ……」
ネコショウの精一杯の作り笑顔が、逆に痛々しい。
カサンドラも頭を抱えている。
彼女なりにアグリアスのフォローを頑張ったのだろう。
「さあ、最後は私たちね……」
気まずい空気を打ち消すように、
ミザリアが自信満々に立ち上がる。
「俺たちはキノコと山菜の鍋だ」
「塩ベースのスープで煮込んだ、シンプルなものよ」
ミザリアが木の御椀に注ぎ分け、皆に配る。
「結構ヘビーな食べ物が多かったから、
あっさり系は嬉しいね」
銀製のスプーンで御椀の中身を掬いながら、デュナンの口角が自然と緩む。
皆がフーフーしている中、俺は傍観を決め込んだ
。
大丈夫だ。
命に関わるものは取り除けたはず。
……だが、俺は怖くて食べられなかった。
ミザリアが料理中、
「私、家庭的ないい妻になりそうでしょ?」
――と、愛らしい笑顔で鍋を作っていたのを思い出す。
今なら、カサンドラの気持ちが分かる。
こんな可愛い笑みを向けられて、
誰がミザリアの調理を止められるだろうか。
回想にふけっていた直後、突如――
皆が、「ぎゃああああ!」断末魔を上げた。
「し、痺れる……」
魔王軍七幹部が一人、リザリーが沈む。
その後も次々に苦楽を共にした仲間たちが倒れてゆく。
「え、え、え……み、みんな……そんな……
どうして……どうしてぇ〜」
泣きながら慌てふためくミザリア。
赤い巻き髪を揺らし、倒れゆく仲間たちに駆け寄る。
こんな激ヤバ料理、
誰が味見などできるだろうか。
ミザリアはちゃんと味見も、実食もしていた。
後に判明したことだが、
これまで毒草や毒キノコを食べ過ぎたせいか、
ミザリアはある程度、毒物への耐性ができていたようだ。
皆の断末魔を最後に、屋敷は静寂を迎える。
✡
俺たちがバカ騒ぎをしている中、
王都バルフォネアから各地へ伝令が飛ぶ。
僭王歴二百五年。
ロメオス・アーサー・ラインベルド六世の訃報が、
各地に広まった。
魔女狩り、奴隷への迫害、村民の虐殺。
かつて悪虐の限りを尽くした暴君ガーザックを
討ち滅ぼした英雄――ラインベルド家による王政は、この日をもって潰えた。
直後、王都バルフォネアでは、
見慣れない黒曜の甲冑を着た兵士たちが町を占領する。
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