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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
二章 新居編

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調理開始?

ほとばしる汗、弾けるパッション!

ステラコラサスが延長戦にもつれ込み、

白熱した心理戦の結果、一時間後に各ペアが決まった。

――ステラコラサスで組分けは、もう二度とやんないからな。


俺とミザリア。

リザリーとエアリー王女。

デュナンとネコショウ。

アグリアスとカサンドラ。

以上、四組での戦いとなる。


「決戦は今夜十九時!

料理は己が力を示せれば何を作ってもよい。 それまでは、食材集めから下ごしらえ、調理まで各自で行ってもらう。 では、諸君、健闘を祈る! 

解散!」

アグリアスの奴、なんであんなに気合いが入ってんだよ……。


「ミザリア、俺らは何つくる?」


「う~んどうしましょ……リョウカは、料理ってしたことあるの?」

ミザリアはカールした赤い巻き髪を指でくるくるといじる。


「ない……カップ麺ぐらいなら作れるぜ!」


「かっぷめん……辺境の地の郷土料理かしら?」


そうだよな。

異世界にカップラーメンがあるはずがないか。


「ミザリアは何が得意なんだ?」


「私は……そうね、よく薬剤の調合をしていましたので。 鍋物なら、火加減も煮込みも慣れてますよ?」


「なんか、果てしなく嫌な予感がするんだが……」


「まあ、失礼ね。

……とりあえず、ここから北東にアルバ深林があるから、そこで食材の調達をしましょうか」


「結局、鍋にするしかないのか……ミザリアを信じるか……」


「任せてなさい」

胸と巻き髪を揺らしながら、ミザリアは自信満々に微笑む。



ここが、アルバ深林……。


昼間だというのに、やけに薄暗い。

生い茂る木々で日光が遮られている。


「なんか魔女が住んでそうなとこだな……」


「あら、さすがね。……ここは昔、本当に魔女が住んでたのよ。 でも、大規模な魔女狩りにあってね……」

そう言うミザリアの横顔は、どこか物悲しげだった。


「あぁっ――!? あったわよ! これよこれ!」

ミザリアが嬉々として何かを拾い上げる。


「どうしたんだよ突然」

彼女の手には、どこからどう見ても怪しいキノコが握られている。


「これ、ベニゴロシダケっていうのよ」

赤い傘に白い斑点。絵に描いたような禍々しさだ。


「それ、絶対食べたらヤバイやつだろ!」


「そんなことないわよ。ベニゴロシはね、下処理をしてじっくり煮込むと、 上品な香りとコクが出るから――暗殺用に人気なのよ」


「もう、最後の一文で全て台無しだよ!」

今、はっきりわかった。こいつに料理を丸投げしたらまずい。


俺たちのパーティーが、鍋ごと全滅しかねない。


俺が狼狽えていると、ミザリアはまた何かを見つけたようだ。


「く、抜けない!」

ミザリアが今度は、地面から伸びた根のようなものを引っこ抜こうとしている。


「きゃっ!」

ようやく引き抜けた反動で、ミザリアが後ろに仰け反る。


「うおっと。大丈夫か?」

俺は慌てて後ろからミザリアの両肩を掴んだが、勢いを殺しきれず、そのまま体重を預けられる形になった。


「あ……うん。ごめんなさい……」

ミザリアは、珍しく細い声で目を伏せる。

なんだ、その反応。お前にそんな初心な反応だと逆に気色悪いぞ。



一通り食材を集めたところで、屋敷の食堂に運んだ。

「さっ、適当に一口大に切りましょう!」


ミザリアの掛け声で一心不乱に、大量の山菜やキノコを刻む。


「つっ!?」

直後、俺の指に熱が走る。包丁が滑り指を軽く切ってしまう。人差し指の先から、じわっと血が滲んできた。


「まったく、なにやってんのよ……」

呆れたようにため息をつきながらも、ミザリアはすぐに手を止めない。


鍋用に取り分けてあった山菜の一つをひょいと摘み上げると、器用な手つきで葉を裂き、俺の人差し指にぴたりと巻きつけた。


「動かないで。薬効成分を沁み込ませますから」

そう言って――ミザリアは、俺の人差し指をそのまま口元へ運び、そっと咥えた。


「えっ!? ミザリアさん……なにを」


「黙ってなさい。切り傷には、この薬草を直接浸透させるのがいちばん効くのよ。

あと魔女の唾液は殺菌作用が強いから…我慢なさい」


指を咥えたままなので、やや聞き取りづらいが、口調は真剣で、完全に治療モードだ。


ミザリアの舌が、薬草越しに俺の指先をなぞる。


……なんか、イヤらしく聞こえるけど、やってることはガチで医療行為なんだよな、これ。


「はい……これでいいわよ」

名残惜しそうに――ではなく、淡々と仕事を終えた手つきで、ミザリアが俺の指を離す。


「あ、ありがとう……」

確かに血は止まり、ヒリつく痛みも引いていた。


さすが魔女……じゃなかった、薬師ミザリア先生だ。


俺はそれとなく、湿った人差し指の匂いを嗅いでみる。

爽やかなミントのような香りと、ほんの少しだけ甘い香りが混じっている。


――ミザリアが、黙った。


次の瞬間。

「ちょ、ちょっと!?

あんた、なに嗅いでんのよ……」


「え、どんな臭いかなって……ほら、薬草も使ったんだろ?」


「や、やめなさいよ!

女性の口の臭いを確かめるなんて、死罪よ死罪!」

さっきまで平然と処置していたくせに、急に慌てだしたミザリアが面白い。


なんか、その反応が新鮮で、俺の嗜虐心をくすぐる。

――よし、ちょっとだけやり返してやるか。


俺は、ミザリアがさっきまで咥えていた自分の人差し指を、今度はわざとらしくゆっくり口元へ運び――軽く咥えて、味わうふりをした。


「ぎゃあああ! あんた、それはさすがにライン超えよ!」

ミザリアが真っ赤になって、俺の腕を掴んで必死に引っ張る。


「おやおや……ミザリアさん。

いつもの大人の余裕はどうしたのですかぁ?」


ニヒルな笑みで煽ると、さらに彼女の羞恥心ゲージが跳ね上がるのがわかる。


「おやぁ? この味は……ミザリアさん、

もしかしてお昼にココアでも飲んだのかな……」


「な、なんでわかるのよ……あんた、ほ、ホントにキモい!」

ミザリアの羞恥心は、もはや限界突破だ。


「……もいいわ。殺す」

低く呟き、ミザリアの指先に魔力の熱が灯る。


「“熱魔法・火達磨ヒートボール”」


「ぎゃああああ!」

視界いっぱいに炎の塊が広がり、俺の体を包み込んだ。


さすがに全力ではないらしく、命に別状はないが――軽い火傷レベルでも、普通にめちゃくちゃ痛い。


(これ……ラッキースケベのスキルでダメージ軽減されてなかったら、普通に即死コースだったのでは……?)


俺は、焦げた服の臭いを嗅ぎながら、心の底から反省した。


……次からは、ミザリアをからかう時は命の危険をちゃんと計算してからにしよう。

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