ステラコラサス?
エアリー王女が屋敷で暮らすようになり、
定員オーバーとなった結果、リザリーとネコショウが同じ部屋で寝ることになった。
……よくよく考えたら、ネコショウって猫になれば人間用のベッドはいらないよな。
屋敷に越してきた初日、
俺がわざわざ地下室で寝る必要なんて、なかったんじゃないか?
――と、今さらながら愚痴をこぼす。
食堂で朝食を取りながら、そんなことを考えていると。
バンッ!
アグリアスが勢いよく、食堂の長机に手を置いた。
「皆に提案がある!」
一呼吸おき、ゴクリと唾を飲み込んでから切り出す。
「今までは食事担当をネコショウにお願いしていたが、今後は当番制で回そうと思う」
「なんでだよ?」
……またアグリアスが面倒なことを言い出したぞ。
「それはだな。
一日三食、おやつまで全て焼き魚だからだ」
「言われてみればそうね……」
ミザリアはどうでもよさそうに欠伸をする。
「すみません……私が好きな物を作っていました……」
ネコショウは申し訳なさそうに頭を下げる。
まぁ、猫だもんな。
仕方ない。
「確かに肉も食いたい……」
リザリーは涎を垂らしながら、指を咥えて頷く。
「居候の身で申し訳ないですが、私も栄養が少し偏っているかと思います……」
恐る恐る手を挙げながら、エアリー王女も賛同した。
「ただな……」
俺は一度間を置いてから言う。
「アグリアスは当番から外した方がいいぞ」
「おい!」
アグリアスが再び机を叩く。
「――リョウカ、貴様……何が言いたい。
遠回しに私の料理が不味いと言っているのか?」
「いや、香りはいいんだけどな。
……味がしないだけで」
「お姉様の料理は繊細なんです!」
カサンドラがすかさず庇う。
「庶民の口に合わないだけですわ!」
……フォローになってるか、それ。
「この際だから料理対決でもして、担当を決めたらいいんじゃないかな」
デュナンがもっともらしく言う。
「さすがに料理が出来ない人が担当になっても、
みんなが不幸になるだけだから」
ナイスフォロー……なのか?
「それいいな!」
俺は勢いに任せて頷いた。
「ただ、不味い物は食べたくないからペア対抗でいこう。二人いれば、さすがにまともな料理が出るだろ」
――俺はこれが、特大級のフラグだったことに、
この時はまだ気づいていなかった。
「組み分けはどうする?」
「八人四組ですから……ステラコラサスで決めましょうか」
ミザリアがさらりと言う。
一瞬、カサンドラとミザリアの視線が交わった。
嫌な予感しかしない。
「ステラ……何だって?」
「あなた……ステラコラサスを知らないの?」
ミザリアが眉を上げる。
「――本当に人間?」
「ミザリアさん……人間で間違いないです」
エアリー王女が小声でフォローしてくれる。
「リョウカさん、私の真似をすればいいだけです……
私と同じポーズをするんですよ」
……なんか、今日は押しが強くないか、この王女。
同じポーズをすればいいんだな?
「エアリー王女!」
デュナンがキメ顔で割り込む。
「不正を働くのはやめていただこう。
ここは正々堂々と、リョウカくんの――伴侶を決めようではないか」
「なんだ、伴侶って!?」
俺は思わず声を荒らげる。
「てか、お前らさっきから何を言ってんだよ!
ルールを知らない俺の前で、変な駆け引きすんなよ!」
「では、者共。準備は良いか!」
リザリーまでノリノリだ。
お前までかよ……。
「「ファルチェ!!」」
俺以外の全員が、よく分からないポーズで立ち上がる。
ある者は人差し指を天へ。
ある者は腕で十字を作る。
「ふふふ……皆さん、やりますわね」
カサンドラが不敵に笑う。
既に戦いは始まっていたようだ。
次の瞬間、腰を振りながら、
俺以外の全員が両腕をぐるぐると回し始めた。
「「ステラコラサス!」」
「「ドルチェ・ハァンギル・サルファ・メルト!」」
……もう、好きにしてくれ。
俺は呆れ顔で、その異様な光景を見守るしかなかった。




