表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
二章 新居編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/132

雪上戦?

俺とリザリーは、険しい雪山をひたすら駆け上っていた。


俺の手には、ちぎれたレースが握られている。

エアリー王女……必ず助ける。

その決意を胸に刻み込む。


「ダメだ。ガルザス剣山はマナの奔流が激しすぎる。魔物の気配を追えん」


「――そうだ!」

俺は手にしていたレースを鼻に当て、半ばヤケクソで息を吸い込んだ。

……頼むぞ、俺の鼻。


ミルクのように甘い匂いが、鼻腔を満たす。

それは確かに、エアリー王女が纏っていた香りだった。

「……行き先が、わかった…そこの獣道だ!」


「……き、貴様。こんな時に、何をしている?」


「これ、エアリー王女が着てたレースのパジャマなんだ。……匂いなら、間違えようがない」


「…………」


「よし、間違いない。そこだ」


「……貴様の変態っぷりは、底を見せぬな」

バカなやり取りに、リザリーは深く溜息をつく。


「それより、この山に出る魔物は分かるか?」


「猿人系が多い。

だが、妾の管轄ではない……詳しくは知らぬ」

走り続けるうち、次第に足元が深い積雪に変わる。


「おい、リョウカ! 遅いぞ!」

さすがは魔王軍の幹部。

雪などものともしていない。


「人間に雪山はツライんだよ !」


「ええい、仕様のない!」

次の瞬間、俺の体がふっと宙に浮いた。


「ちょっ――!?」

リザリーは俺を軽々と抱え上げ、いわゆる“お姫様抱っこ”の姿勢で走り出す。


「いやだぁ〜! やめてくれ〜! 恥ずかしい〜!」

雪山に、俺の羞恥心が虚しくこだまする。


最悪だ。

女性にお姫様抱っこされるなんて……

何か大切なものを失った気がする。


そのまま抱えられて進むと、やがて開けた場所に出た。


「……間違いない。ここだ」

目の前には、不自然に岩で塞がれた洞窟。


「なるほど……王女を攫ったのはイエティか」


「イエティって……雪男?」


「そうだ。

この辺りのイエティは、肉を天然の冷蔵庫に保存する習性がある」

胸の奥が、嫌な感覚でざわつく。


「リザリー!」


「分かってる!」

災害乱流ディザスターストーム!”

雷を纏った激しい乱気流が放たれた――その瞬間。


――ザンッ!?

魔法が、真っ二つに断ち切られた。


「なっ……馬鹿な……!

我が魔法を、断ち切っただと!?」


雪煙の向こうに、華奢な雪男が立っていた。


赤い猿人の顔。

白い毛むくじゃらの腕は地面まで伸び、その手には紋様の刻まれた剣。


「これが……イエティ?」

想像よりも、遥かに細長い体躯。


「……あの剣。

魔装具グラーティアか?」


「ぐらーてぃあ?」

「魔剣や宝剣……呼び名は様々だが、

聖紋サケルを刻まれた武具を総称してそう呼ぶ。アグリアスのクラリウスも、同じ魔装具だ」


いや、今そんな説明を受けてる場合じゃない。


イエティが間合いを詰め、剣を振る。


斬撃が既のところで頭上を掠めた。

――大丈夫だ。

ラッキースケベがある限り、俺は無敵だ。


そう思ってしまった時点で、油断だったのかもしれない。


リザリーがイエティの頭上に現れ、手刀を振り下ろす。即座に反応したイエティは、剣でそれを受け止めた。

互いに弾かれ、距離を取る。


「何故……魔王の幹部が人間に味方する?」

掠れた低い声。

……喋れるのか。


「事情があってな」


「おい、リザリー。お前、幹部なんだろ?

魔物に言うこと聞かせられないのか?」


「魔族の支配構造は単純だ。

力と恐怖……それだけだ」

リザリーは不敵に笑う。


「此奴は、妾を一切恐れておらぬ」


「魔王軍も堕ちたものよ。

幹部が二人も倒されるとは……」

イエティが嗤う。


「では、裏切り者の首を土産に、

ワシが幹部に収まろうかの」

再び剣が振るわれる。


驚異的なリーチ。

「リザリー!

戦闘が長引けば、王女の命が危ない!」


「……お前、魔族の私に王女を任せるのか?」


「俺にはあの岩は壊せない!

それに、仲間だろ。信頼してる」


「……ば、馬鹿者」

一瞬、リザリーの頬が赤く染まった気がした。


「その剣は退魔の剣だ。魔法は通用せぬぞ」


「分かった!」

俺は堂々と、イエティに向かって歩を進める。


「……貴様、馬鹿なのか?」

殴打が降り注ぐ。

だが、全てが逸れていく。


「……気味が悪い。

攻撃が……逸らされている?」


直後。

激しい土煙と共に、洞窟前の岩が崩れ落ちた。

「エアリー王女を確保した!

かろうじて、息はある!」


「リザリー!

王女を拠点まで連れて行け!」


「必ず戻る。無理はするな!」

フラグは立てるな、と叫びたかったが……

返事の代わりに、手を振った。


「……私の……保存していた食料を……」

低く、湿った声。


“保存”。

その言葉が、妙に生々しい。


次の瞬間。

退魔の剣が、頭上から振り下ろされた。


――いつもなら、ここで何かが起きる。

……だが。

「――っ!!」

避けたはずの体に、確かな感触。

焼けるような痛みが、右肩を貫いた。


「ぐああああっ!!」

熱い。痛い。

初めて感じる――はっきりとした死の痛み。


退魔の剣…だからか?

――ラッキースケベが、外された。


「どうした?

急に顔色が悪いぞ」

イエティが、ゆっくりと迫る。


……まずい。

……殺される。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ