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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
二章 新居編

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王女誘拐?

――その日、俺は久々に夢を見た。

昔の夢だ。

母さんに抱っこされる夢。

温かい……久しく忘れていた人の温もり。

誰かに受け入れてもらえる、そんな安らぎ――。


ここ最近、寝ても疲れが抜けない。

異世界で気を張り続ける日々が、知らないうちに心まで削っていた。


誰かに受け入れられる感覚を、俺はずっと探している。



「お~い! リョウカ、いつまで寝ている!」

アグリアスの凛とした声と、

天井の床穴から差し込む朝日で目が覚める。


起きた瞬間――

「……はっ……!?」

血の気が一気に引いた。


寝床の端に、見覚えのある少女が荒い呼吸で横たわっていた。乱れた純白のドレス。無防備な姿に、思わず目を逸らす。


この人は……エアリー王女……様?

――いや、待て、これはまずい。色々と。

もし誤解されれば、ここで築いた関係が一瞬で壊れる。


時、既に遅し。

「リョウカ、起きろ!

……まったく、貴様には私がいないと本当にダメダメだな……っ!?」

部屋に踏み込んだアグリアスが、光景を目にして言葉を失う。


「エアリー王女……様?

どうして、そんな……」

視線が一瞬、俺に向けられる。


そこに宿っていたのは――嫉妬……と、絶望。

――そして、拒絶されたような気がした。


「待て、アグリアス! 誤解だ!」


「この状況の、どこに誤解がある?」


アグリアスは静かに、しかし迷いなく王女を抱き起こす。

「王女様、しっかりして下さい!」


「あれ……? わたくしは……」

寝ぼけた声で、王女がまぶたを揺らす。


「王女様……どうして、ここに……」


「……リョウカ様?」

王女の視線が俺を捉えた途端、頬が赤く染まる。


「私、すみません。リョウカ様を頼って、このお屋敷に来たのですが…

夜分、遅かったもので、ノックしたのですが誰も出られず…。


「それで、扉を開けて入ったと…」

俺の言葉にエアリー王女がこくりと頷く。


「鍵は空いてませんでしたから」


「騎士学校の見習いたちに常に有事に備え、警戒心を維持するため鍵はついてないらしい」


「不用心すぎるだろ」


「エントランスに入った瞬間に下に落ちてしまいまして…たぶん、気を失っていました」


「そういえば、俺が踏み抜いた穴をそのままにしていたな」


「ともかく、こんな酷い部屋にエアリー王女を置いておけません。談話室で詳しい話をお聞きしますので」


俺ならこんな酷い部屋でもいいのかよ。



すぐに、アグリアスの声掛けにより全員集められた。


「それで、王女様はどうしてここにいらしたの?」

エアリー王女様は魔族のリザリーを見てビクッと怯える。


「大丈夫。噛みつきはしないよ」

デュナンが穏やかな声色で微笑む。


「おいデュナン、殺すぞ!」

リザリーがデュナンに殺気を飛ばす。


「まったく、少しは落ち着きなさいよ。

王女様が話せないじゃない」

ミザリアが溜息をつき、二人を諭す。


「今しがたエアリー王女が何者かに誘拐されたという御触れが出回っていますわ。

それも含めてお教えいただければと存じます」

カサンドラは若干だが、問い正すように凛と声を張る。


エアリー王女は決心したように口を開いた。


「父上が……私の婚約を取り決められたのです。

ライザルド公国のバルメトロ・ライザルド公……」


「それが嫌だと?」


「……はい」

王女は俯き、小さく震える。


「彼……怖いのです。

婚姻前なのに、手を掴まれ、距離が近くて…」


「……最低だな」

思わず拳を握る。


「……貴方も、人のこと言えませんわよ?」


「ぐっ……」

カサンドラの一撃で沈黙。


「お願いです。私をここで匿って下さい!」

エアリー王女は涙ながらに懇願する。


俺にはよくわかる、逃げ場を失う恐怖を。


「匿いたいのは山々なのですが、感情論で済む話じゃないですわ…」

ミザリアが冷静に言葉を継ぐ。


「これは政略婚。

ライザルド公国との関係も絡む。

ここで王女が誘拐されたとなれば……揉めるな」 リザリーは顎に手を当てる。


「誘拐としたのは、

王がそれだけ本気で探しているということだ」 

アグリアスが、重く口を開く。


「てか、魔族をパーティーに入れてる時点で俺たち死罪だろ」


「まあ、それはそうなんだが…」

アグリアスはどうにも決めきれないようだ。


「いつものように多数決でいいじゃない」

ミザリアがどうでもよさそうに提案する。


いつものようにって、これでまだニ回目だろ。


「では――多数決だ。エアリー王女をここで匿うことに賛成の者…挙手を」


賛成四名、

内訳は俺、デュナン、ミザリア、ネコショウ。


反対三名、

アグリアス、カサンドラ、リザリー…か。

思ったより割れたな。


居場所を求める者をどうしても拒む事は出来なかった。


「……決まりだ」

重苦しい空気のまま、

エアリー王女を屋敷に匿うことが決まった。

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