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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
一章 王都編

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ラッキースケベとは? 

砂のジャリ……そんな異物感より、空腹のほうが勝った。

味なんて、もうどうでもよかった。

食べること自体が、目的になっていた。


食料を求めて今日も街中を彷徨う。

もうダメだ。限界だ。

視界はぐらぐら揺れ、足取りも覚束おぼつかない。


「そこの貴様!――止まれ!」

鋭い声が背筋を貫き、俺はふらつきながら振り向いた。


絹糸のように長い金髪。切れ長の青紫の瞳。

そして、剣をこちらへ向ける女騎士。


見た瞬間に分かった。

この人に触れたら、終わる。


「……なんでしょう?」


「我が名はアグリアス・ライオット・ホーン。

バルフォネア王国の騎士だ。

貴様だな、近頃あちこちで市民に暴行しているという不埒者は?」


「暴行……まあ、間違いではないか…」

否定できないのが、余計に辛い。


「ほう、素直に認めるか!

いいだろう、大人しく投降しろ!」


アグリアスはジリジリと距離を詰めてくる。

マズい。マズすぎる。


騎士様にラッキースケベが発動。

その次に来るのは――処刑。

未来は、はっきり見えすぎるほど見えた。


「動くな! それ以上は危険だ!」


「脅しか?」


違う。違うんです。

あなたの“身の安全”のためなんです。


「お願いです。本当に、近づかないでください。

あなたを傷つけたくないんです……!」


俺の言葉が、どう聞こえているかは想像できた。

それでも、事実なんだ。


これ以上、誰かに嫌われたくないんだ!


涙目で懇願する俺に、アグリアスは忌々しげに舌打ちした。

「チッ、情けない奴め。

ならば大人しく投降しろ」


「したいんですけど、物理的に……無理なんです」

人と接触したらアウトなんです。


「わがままな……。

仕方ない。我が愛剣クラリウスで、貴様を軽く戦闘不能にして――」

アグリアスが剣を構え、鋭い突きを放ってきた。


速ぇ!

それ本気で来てない!?

このままじゃ死ぬ!


驚いて後ろに躓いた俺は、仰向けになり――

開いた口のまま、飛んできた剣の“腹”が――

視界いっぱいに迫り。

そして、舌で――

ペロッ。


アグリアスの動きが止まる。


「……き、貴様……

今……私のクラリウスを舐めた、のか……?」


沈黙。

そして――

「うっ……うわああああああん!

クラリウスーーーー!!」

まさかの大号泣。

しかも町中で。


この時点で、嫌な予感はしていた。


さらに俺は気付いた。

――俺のラッキースケベ、「物」にも発動する。

……最悪だ。

周囲の野次馬がざわつき始める。


「ちょっと……騎士様に何したのあの変態……」

「私の胸に顔を埋めてきたのもあいつよ」

あの時のバニーちゃんまで!?

違うんだ。今回も不慮の事故なんです。


「おい、貴様! お姉様に何をした!」

ミント色のサイドテールにビキニアーマーの少女が、怒鳴りながら登場した。

 

増援。しかも、こっちも敵意丸出しだ。詰みだ。


「許さん!」

少女はショートソードを構え、飛びかかってきた。


しかし剣は俺の目の前で空振りし、彼女は一回転。

そして――モシャッ

彼女のサイドテールが、俺の口にダイブした。


「もがっ!? ……ん? 甘酸っぱい?」

サイドテールの少女は固まった。


「きゃぁああああああ!!」

また泣いた。


二人で抱き合って号泣し始めた。


……不憫すぎて胸が痛む。

たぶんこれは、同情じゃない。

俺が一番、自分の状況を呪ってるだけだ。


「その……ごめん……本当に……」

思わず歩み寄って手を差し出す。


助けたい、という感情は本物だった。

それが一番、残酷だった。

――善意すら事故に変える、この呪われた力。


「……あ、終わった――」

遅かった。俺は足を滑らせ、盛大に躓き、

二人の騎士へ ダイブ してしまった。

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