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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
一章 王都編

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新ヒロイン?

魔族の女性は腕を構え、こちらを睨みつける。

「戦う気はなかったが……仕方あるまい」


先ほどネコショウと話していた時とは別人のような、重く威圧的な声だった。


さっきまでの恋バナムードが、完全に消えている。これは本気だ。


「待ってください! 俺もネコショウを探してただけで――」


わらわのネコショウをたぶらかした挙げ句、放ったらかしにしおって!

――その罪、償ってもらう!」


「誤解だって!」

弁明が、まるで届いていない。


「妾は魔王軍七幹部が一人、災禍のリザリー。

――お前の名は?」


「コフク・リョウカ」

名乗った瞬間、張りつめた空気が流れる。


名乗った時点で、もう引き返せない。

どうやら戦いは避けられないらしい。


俺も腹を括り、身構えた――その時。


「やめてください!」

ボンッと土煙が舞い、見知らぬ少女が二人の間に飛び込んできた。


割って入るには、あまりにも無謀なタイミングだった。


艶やかな長い黒髪。

頭頂部にはぴんと立った猫耳。

フリル付きのメイド服に、透けるほど白い肌。


そして――

「…………尻尾、三本?」

情報量が多すぎて、理解が追いつかない。


――いや、まさか。

「ネコショウ! 邪魔をするな!」

リザリーの叫びで確信する。


「止めて下さい!

リョウカ様には指一本触れさせません!」


「えっ、ネコショウが……美少女になってるんだけど!?」


可憐。大和撫子。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。

全部、彼女のために作られた言葉にしか思えなかった。


知っているネコショウと、情報が一致しない。

いや、唯一、可愛いという点は一致している。


「くっ……お前がそこまで言うなら……」

リザリーは歯噛みしながら、ゆっくりと腕を下ろした。


ネコショウの言葉が、唯一の抑止力だ。

「……ネコショウ、お前――メスだったのか」


「その……メス猫などと呼ばれてしまいますと、わたし……」

ネコショウはもじもじと身体を捩じる。

「興奮してしまいます……」


「いや待て、そんなイヤらしいニュアンスでいったんじゃない!」

話が急カーブを切った。


視線が痛い。

というか、リザリーの殺気が明確に増している。

火種が増えている。


「……ともかくだ。もう日も暮れる」

俺は咳払いして話題を戻した。


強引でもいい。これ以上こじれる前に場を変える。


「戦う気はない。とりあえず後は家で話そう」


「なぜ妾が、貴様の家に行かねばならん。敵同士だぞ」


「ネコショウと腹を割って話した方がいいだろ」

俺は真っ直ぐリザリーを見る。


ここで目を逸らしたら、負けだ。

「ネコショウの前で戦うのは、俺も嫌だ」


「……」

沈黙の末、リザリーはそっぽを向いた。


「……勝手にしろ」

完全な和解ではないが、最悪は回避した。



仲間に紹介すると事態が悪化しそうだから……

まずは、こっちのわだかまりを解くのが先決だろう。


正解かどうかは分からない。

だが、今はそれしか選択肢がない。


アグリアスの自宅に二人を案内する。


「……なんだ、この部屋は」

リザリーが周囲を見回し、眉をひそめる。

「生活感がまるでない」


「その……家具は私が、ある程度は食べてしまいまして……」

さらっと凄いことを言っている。


「そういえばネコショウに食わせたな」


「はい。塩味が効いており、とても美味でございました」

満面の笑みで言うな。

まったく…ツッコミが追いつかない。


床に腰を下ろし、場を改める。

「まず聞こう。なぜネコショウを放置していた」


「遠征前に体調を崩してて……やむを得ず置いて行った」

罪悪感が胸を刺す。


言い訳にしか聞こえないのは、自分でも分かっている。


「ほう。貴様は病の家族を見捨てるのか?」


「いや、そういう意味じゃ――」


「違います!」

ネコショウが勢いよく手を上げる。

「リョウカ様は、私との愛を確かめるために、距離を置いたのです!」


「……は?」

話が、斜め上にすっ飛んだ。


「……ネコショウ」

リザリーは急に声を落とした。

「やはり、妾の元へは戻らぬのか……?」

恋する乙女みたいな顔で目を逸らす。


さっきまでの殺気はどこへ行った。


「私は……リョウカ様のお傍にいたいのです」


「コイツは天性の女たらしだぞ……」

やめろ、余計な説明をするな。


「それでも構いません」

ネコショウは小さく微笑んだ。


「時々、撫でてくださるだけで……私は幸せです」 


ネコショウ…。


「そこまで想って……」

リザリーは観念したように溜息をつく。


「はい…初めてを、リョウカ様に奪われたからです」


「待て待て待て! 何の話だ!?」

完全に記憶にない。


「貴様、責任逃れする気か!」

激昂したリザリーが胸ぐらを掴む。


「心当たりがない!」


「王都襲撃の際!

攻撃をいなされ、秘部に触れたであろう!」


「そもそも秘部がどこか知らねぇよ!」


「そんな……わたくしの初めてなのに……」

全部、ラッキースケベのせいだ。


「ちょっと待ってくれ……」

会話が! ずっと! ズレてる!

誰か軌道修正してくれ。


「もう我慢ならん! ここで殺す!」


「おやめください、リザリー様!」

もみ合いになり――まぁ、いつもの展開通りになり、俺は躓いた。


次の瞬間。

「――っ!?」

「……っ、あ……」

左右で、柔らかい感触。

もう、お馴染みの転換すぎて…。


「激しすぎます……」

「……どこを触っておる、貴様」

両手に花。


説明不能な状況が出来上がった。

――その瞬間。

「リョウカ! 何をしてる!」

テンプレのように、騒ぎを聞きつけた仲間たちが部屋になだれ込んできた。


最悪のタイミングは、いつも完璧だ。

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