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ラッキースケベが思ってたのと違う ~ハーレムのはずが世界を巻き込む能力だった~  作者: 那須 儒一
16章 公国編②

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第182話 ルーツ?

ヴァレンタイン領――北東の果てで断空と雷神がぶつかる。


「アーサー! なぜ、本気で殺らねえんだ!」

サテナは額に血管を浮かべ、怒号を撒き散らす。


「俺は……お前と戦えるこの日を、どれほど待ち望んだことか……」


私はあの眼差しを知っている。

嬉々として私に何かを期待する目だ。


魔王タカミヤと同じ……他を顧みず己が欲望のために戦う目。


――私の苦手な人種だ。


サテナが燃え上がるほどに私の心は冷たく凍てついてゆく。



剣とは私にとって生きるための手段でしかない。

――それ以上でも、それ以下でもない。


幼少の頃の私は少し傲慢だった。

孤児たちで集まって、戦場の骸から金品を漁る毎日。


時には残党兵に襲われることもあったが、

己が腕を過信していたあの頃は、怖いものなどなかった。


剣で力を証明するたびに、仲間の期待が重くのしかかった。


ある日――野盗と目的が重なり、戦場跡で出くわしてしまった。


――本来であれば逃げるべきだった。


仲間の子どもたちは私に期待を寄せ、あろうことか応戦したのだ……。


私が全員倒す頃には……味方は全滅していた。


――私は彷徨った。

そんな私をロメオス前王が拾って下さった。


名前のない私に、自らの名まで分け与えてくれた。


私は恩義に報いるため、騎士としてひたすら研鑽を積んだ。

――ロメオス前王は、地位と報奨こそ与えど、私に何かを期待することも、願うこともなかった。


それが、心地良かった。



ある遠征にて、奴と遭遇した。

一目見てわかった。人間が勝てる相手ではないと。


私は退却を命じた――。


しかし、部下は私に羨望の眼差しを向け、共に剣を取った。


私が魔王タカミヤと数合渡り合う頃には、仲間たちはすでに冷たくなっていた。


……私に期待したものは皆、死んでゆく。


剣が交わり、タカミヤの刀は私の額をかすめ、私の剣は、奴の体を斬り裂いた。


あろうことか、奴は自身の体を傷つけた私を魔王軍七幹部に勧誘してきた。


タカミヤも同じだ――私に何かを期待している。


他と違う点は、彼の気まぐれで世界が滅ぶ可能性があることだ。


今のところタカミヤの目的は単純明快だ。


ライザルド公国の宝剣――エクスカリバーを携えた私と本気の殺し合いをすること。


それを果たすためだけに、彼はライザルド公国と同盟を結んだ。


エクスカリバーは少々特殊な魔装具グラーティアだ。


扱うには基本的にはライザルド公国の貴族の血筋かで継承される。


ただ、意外にも権利さえ譲渡されれば扱えるという、なんとも雑なものだった。


脅しによる譲渡は無効となる。

持ち主を殺して奪っても、次の継承者の元へ渡るだけだった。


部外者の私が扱うには対等な立場で譲渡されるのが手っ取り早かった。


ゆえに我々、七幹部は五年前のバルフォネア王国の占領時にバルメトロ大公に協力した。


しかし、事は思うようにいかず、

シュウスイが三年前の二度目の侵攻時に、《《バルメトロ大公を暗殺》》した時に、エクスカリバーの所有権がヴァレンタイン陣営に移ったのだ。


そこをシュウスイに付け込まれ、今度はヴァレンタイン公を大公に担ぐべく、魔王陣営は協力している。


それでも私は七幹部であり続けた。

魔王をそばで監視しておかねば、私の大事な者たちを殺しかねないからだ。


バルメトロ大公の命で――私は恩人であり、父であったロメオス前王をこの手で処刑した。


それでも、彼に命乞いはしなかった。

彼が最初で最後に私にしたお願いは……

ただ、一つ。


「娘のエアリーを頼む……」

それだけだった。


彼の私に期待する目が今も忘れられない。


できるだけ、バルフォネア王国の仲間たちが死なないように奔走した。


……もう、私は疲れた。


利用されるのも、期待されるのも。

そして、守るのも……。


これ以上、私に何かを求めないでくれ。

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