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ラッキースケベが思ってたのと違う ~ハーレムのはずが世界を巻き込む能力だった~  作者: 那須 儒一
15章 公国編

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第180話 理想と幻想?

アグリアスは、いつもの王都の帰路を歩いていた。


「ここはどこだ?

ライザルド公国にいたはずなんだが……」


アグリアスの手の温もりが揺れる。


「アグリアス……大丈夫か?」


隣から最愛の夫が、心配そうに私の目を見る。


「あ、ああ……」


「緊張してんのか?

俺もだよ……カサンドラに俺たちの結婚、認めてもらわないとな」


結婚を認めてもらう?

リョウカは何の話をしている。


気づくと花に囲まれた一軒家の前にいた。

柔らかなランタンの灯りが木の温もりを照らす。


……ここは。

何度も通ったこの家……。

最近は、足が遠のいていた。


リョウカが木の扉をノックしようとすると、自然と扉は開かれた。


「お姉様! お待ちしてましたわ!

……って、なんであなたまで、いるんですの?」

ミント色のサイドテールを揺らしながら、喪ったはずの彼女が目を見開いている。


「カサンドラ……今日は大事な話があるんだ……」

リョウカはいつも見せないような真剣な眼差しをしている。


うぐっ――違和感で胃液がこみ上げてくる。


「カサンドラ……死んだはずじゃ……」


「お姉様……ひどいですわ……私のこと嫌いでしたの?」

カサンドラは涙ぐむ。


「何を言っている……私はリョウカから直接、あなたの死を聞かされたのよ……」


「リョウカさん!

わたくしが邪魔だからってそんな嘘までついて……」

目の前のカサンドラは本物だ……そう思わせるぐらい泣き顔も当時のままだった。


「ちょっと、待てって!

おい、アグリアス、適当なこと言うなよ」


彼はいつも通りしゃべっている。


「リョウカさん……今日という今日は許しませんわよ!」

カサンドラはそう言って、退魔の剣を構える。


「……その剣、セピアが持っているはずなのに。なぜだ?」

……状況が飲み込めない。


「ふっ、お姉様。怖がらないでください!」

そう言って、カサンドラはリョウカを退魔の剣で、突き刺した。


「ぐっ……カサンドラ……どうして」

リョウカはそのまま霧散した。

まるで最初から存在しなかったかのように。


同時に私の視界がぐらつく。


カサンドラの口が微かに動いている。

「お姉様……もうここに来てはダメですよ」


その言葉を最期にアグリアスの意識は戦場に戻された。



ミザリアは湿原に佇む小屋にいた。

木の温もりが残る食卓に、両親が向かい合って座っていた。


「ミザリア、椅子に座って食べなさい」


「そうだぞ。行儀よくしないと、母さんが怖いぞ。ガハハハ……」


両親はミザリアを席に座るように促す。


お父さん……? お母さん……?


テーブルには四人分のお皿が並べられていた。


「あれ……誰かお客さんが来るの?」

私は恐る恐る両親に尋ねる。


その時、部屋にノックの音が響き渡る。


「すみません。遅れました」

そこには幼さの残る金髪の少年が立っていた。


「あら、ユーフォスさん。おかえりなさい……」

お母さんはユーフォスを温かく出迎える。 


「しかし、驚いたもんだ。帰ってきたと思ったら、あのミザリアが結婚とはな……」


……お父さんは何を言っているの?


気づくと、流されるままに家族四人で団らんしていた。


――私は満たされていた。

こんな生活も悪くないかな、と。


……でも、何か物足りない。


……何か足りない。


「ねえ、ユーフォス……リョウカさんは?」


「リョウカ……誰だい?

ミザリアさんの新しい友達かい?」


彼は冗談を言うような人では無い。


「ここは……私の居場所ではないわ」

おもむろに席を立った。


「ミザリアさん……」

ユーフォスが私の手を掴む。

その温もりは本物だった。


……でも、足りないの。


私は強引にユーフォスの手を振り払った。


すると、景色が歪み意識が浮上した。



リザリーは子猫のネコショウと一緒に、小道を歩いていた。


「ネコショウ。次はどこに行こうか?」


「んにゃあ!」

彼女の声は跳ね、三つの尻尾が嬉しそうに揺れている。


妾はそれだけで満たされていた。


空間が歪む。

そこには、魔王様……タカミヤ様が立っていた。


「リザリー……ネコショウと共に三人で暮らそう」


「……え、タカミヤ様……どういうことですか?」


「俺は、お前がいないとダメなんだ。そばにいてくれ……」


「タカミヤ様……」

手を取ろうか――迷っていると、足元でネコショウが体を押す。


「……ネコショウ、いいのか?」

妾は、手を伸ばした。


……ようやく、彼が……振り向いてくれた。


二人の手はそっと結ばれた。


涙と共に視界が暗くなった。



「アリサお嬢様……」

気がつくと、ヒュプノス家の屋敷の庭で、アリサはうたた寝をしていた。


「私……」


「大丈夫ですか?」

私の顔を心配そうに、執事のリョウカが見つめている。


「……だ、大丈夫よ!

ちょ、ちょっと、執事の癖に近いわよ!」


「す、すみません。アリサお嬢様が心配で……」


彼は少し、頬を赤らめて離れようとする。


「そ、そんなに謝らなくてもいいわよ」


「はい、ありがとうございます」


「アリサお嬢様……頬にゴミが……」

リョウカは私の頬にそっと手を添える。


「あ、ありがとう」

彼と視線が重なる。


リョウカはそっと私の唇に顔を寄せる。


「だ、ダメ!」

私は嫌じゃなかった。でも、気づけばリョウカを突き飛ばしていた。


「うわっ!」

リョウカは派手に転んだ。


……途端に視界がぼやけた。



ネコショウは、リョウカとリザリーと共に食卓を囲んでいた。


「おい、リョウカ……少しは落ち着いて食べないか。行儀が悪いぞ」


「なんだよ。いいだろ、別に……」


リョウカ様は不貞腐れてそっぽを向く。


「ふふ、リョウカ様ってば子どもみたいですね」


「なんだよネコショウまで……」


リョウカ様は口元を食べ物で汚しながらも、さらに不貞腐れる。


そんな彼がたまらなく愛おしかった。


「リョウカ様……」


月明かりが陰る。


食事のあと――

気づけばその晩、私はリョウカ様と同じベッドで他愛もない話をしていた。


「ネコショウ……俺……」

彼は私の腰に手を回す。


「リョウカ様……私、まだ心の準備が……」

いつも見ているはずの彼の顔をまっすぐと見れなかった。


「ネコショウ……キミを一番に愛している。だから、キミのすべてをくれないか?」


彼の吐息が耳にかかる。


さっきまであんなに子どもっぽかったのに、

今のリョウカ様はまるで別人だ。


「リョウカ様……いいですよ……」


私は彼のすべてを受け入れた。


夜更けと共に意識が沈んでいく。

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