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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
一章 王都編

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変面?

降り注ぐ熱波が地面を焦がし、仲間も魔女も、ついでにゴブリンたちでさえ苦悶していた。

唯一、俺だけはラッキースケベのお陰で適温だ。


敵味方の区別なく、熱だけがこの場を支配している。このままでは、戦う以前に全員が倒れる。


どうすればいい――

どうすればいい――

俺は…どうすればいい。


くそっ…だめだ…考えがまとまらない。

判断を誤れば、誰かが死ぬ。


そうなった瞬間、自分の居場所も一緒に失われる気がした。


ミザリアと視線が交差する。

「……全員に行き渡るかしら」

“熱魔法・排熱機関クールビズ


半透明の赤い布が魔王軍以外の者たちを包み込み、熱気が嘘のように引いた。


防御ではなく、周囲の熱そのものを外へ逃がす魔法なのか?

対象は味方全体。


「みんなに炎耐性を付与したわ!

存分に戦いなさい!」

ミザリアが叫ぶ。


無理を承知の判断だ。

それでも、今やらなければ全滅する。


その直後――

「姉様! 動かないで!」

振り向けば、アグリアスがボロボロの姿で立っていた。

鎧は剥げ、服は焦げ付き、全身すすだらけ。


「アグリアス……」

さっきまで倒れていたはずだ。

無理に立ち上がっているのが、見ただけで分かる。


彼女は焦点の合わない目でミザリア――いや、

ミザリアの姿をしたカリスに切っ先を向ける。


「私はね……ミザリア、あなたに一度負けているの。今度は……手加減しなくてもいいわよね?」


覇光斬はこうざん聖剣墓標群せいけんぼひょうぐん


星屑が閃き、十字型の墓標が無数にカリスを囲む。

次の瞬間、十字の墓標が一斉に突き上がり、塔のように積み上がる。まるでアートだ。


威力も、規模も、今まで見たアグリアスの技とは比べ物にならない。


直後、アグリアスはその場で崩れ落ちた。


限界を超えて撃った。

立っていられるはずがない。


「残念だったわね」

カリスはイタチの姿に縮み、攻撃をひょいと躱していた。


すぐに変身が戻り、今度はアグリアスの姿となる。

ご丁寧なその手にクラリウスまで再現されている。


「私は攻撃を受けたら、その相手になれるのよ」

カリスがにやりと笑う。


攻撃を“受けた”相手に変身できる能力か。


俺はゆっくり歩み寄る。

「ふふ、仲間の技で死ねるなら本望でしょう?」


“覇光斬・聖剣墓標群”

これは、さっき見たアグリアスの技だ。


俺の周囲に光の墓標が取り囲み、刺さる

――はずだった。


「お……?」

墓標は俺の脇下や股下の微妙な隙間にすっぽり入り込み、まったく刺さらず、新手の拘束プレイと化した。


避けたわけじゃない。

たまたま、致命的な位置を外しただけだ。

そして――墓標がパン、と砕け散る。


「ば、ばかな……!」

カリスが取り乱した声を漏らす。


俺はその隙を逃さず、距離を詰める。


「クソがッ!」

偽クラリウスが光り、巨大な剣となる。


振り下ろし――しかしカリスの手元が滑り、

クラリウスがすっぽ抜けた。


派手に転んで、地面に顔面ダイブ。

お尻だけがアグリアスの姿で天に突き上がる。

 

偶然が、連鎖している。

これもラッキースケベの作用なのか?


「くそッ! これが貴様の攻撃か!」


「いや、何もしてねえよ。勝手に転んだだけだろ」


「ちっ……ならば――こうだ!」

カリスは俺の姿に変身する。


先ほど、攻撃を受けたらその相手になれると言っていた。


カリスが俺の姿に変身しているということは、

ラッキースケベによる事象も“攻撃判定”にカウントされるらしい。


ボサボサの黒髪、覇気のない顔。

「俺って……こんな情けない姿だったんだな」

今日一の精神ダメージを負った。

戦闘より、こっちの方が効く。


「これでお前の無敵スキルが使える!

ついでに能力も暴いてやる!」

いや、ホントに勘違いだ。


俺のはただのラッキースケベだ。

無敵でもなければ、制御もできない。


カリスが俺(本人)に歩み寄る。

自分に迫られると妙に生々しい。


すれ違った瞬間――

ドサッ。

カリスが地面に倒れた。


「な……なんだその気持ち悪い技は……!

お前、何をした……!」


「正直、俺もよくわからん」


理解していないからこそ、再現も対策もできない。


「バカな! 私は七幹部の変面のカリスだぞ!

再現できないスキルなんて―お前何者だ!」


「チートスキルは女神からの賜り物だからな。

お前には無理だよ」


自慢じゃない。

ただ、それしか取り柄がない。


カリスが歯ぎしりをする。


「おいしいところは譲ってやるよ」

俺の声の後ろでミザリアが手を掲げる。


“熱魔法・火達磨ヒートボール

次の瞬間、カリスの体が炎に包まれた。


「それと、俺はただの人さ」


少し間が空いた。


「このスキルがなけりゃ――」


だからこそ、ここにいる。

役に立てている間だけは――居場所がある。


「ぎゃああああああ!」

おぞましい悲鳴と共に、カリスは灰となって消えた。


焼けゆく“自分の姿”を見送るのは……えらく不気味だった。


「人が死にゆく様を見るのはあまり気持ちのいいものじゃないな…」

灰だけを残し、七幹部・変面のカリスは敗れた。

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