表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
一章 王都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/133

応援要請?

日が高く昇るころ、カサンドラの家に一人の兵士が駆け込んできた。


「オルトロス騎士団、副団長殿!」

アグリアスが扉を開けると、兵士は胸の前で拳を掲げ、背筋を伸ばす。

この世界の騎士礼らしい。


「そんなに慌ててどうした?」


「実は明け方、ソロボス村より使い魔が届きまして……応援要請です!」


「ソロボス……」

アグリアスはその名を聞いた瞬間、視線を落とす。


「あなたが倒した、熱波の魔女が住む村ですわ」

カサンドラがそっと耳元で囁いた。


つまり、ミザリアが住む村か……。

俺には、その重さを完全には理解できない。

だからこそ、沈黙がやけに重く見えた。


「ここからまともに歩いて丸四日は掛かるね」

デュナンは顎に手を置き、なぜか楽しそうに考える。

この世界には馬はいないらしい。

丸四日徒歩で行くって大変そうだな。


「おいデュナン、なんでお前は当然のようにまだここにいる?」


「僕はキミを守ると誓ったんだ!」

……だからそれ、女の子に向けて言え。俺に言っても何も刺さらん。


アグリアスは俯いたまま、何か迷っているように見える。


彼女の葛藤は俺にはわからない。


「加えて、ロメオス王よりご伝言が……

“城の兵は動かせぬ。代わりにバルフォネアの変態を同行させよ”とのことです。

あと“娘から早急に引き離せ”とも……」

最後の一言が一番本音だろ。


兵を出せないのは建前で、実質は俺の厄介払いだ。

そして、とうとう俺の二つ名がバルフォネアの変態で固定されだした。最悪だ。


まあ、いい。この世界に来て嫌われるのは慣れている。期待されないほうが、動くときは楽だ。


アグリアスは小さく息を吐き、肩が震えた。

怒りではない。迷いと覚悟が入り混じった反応だ。


「行くんだろ?」

俺はそっとアグリアスの肩に触れる。


天頂トーナメントで戦った、ミザリアの事をどう思ってるかはよくわからない。

でも、彼女は要請には応えるそういう人だ。


ゆっくりと顔を上げるアグリアス。

蒼い瞳に決意が宿った。

「無論だ……すぐさま発つぞ!」


――そう。この瞬間、俺は触れてしまったのだ。

この感覚には覚えがある。何度やってもついつい忘れてしまう。

嫌な予感より先に、「あ、来たな」と思ってしまう自分がいる。


次の瞬間、アグリアスが躓き、俺の上に倒れ込む。


「お姉様!」

「僕のフィアンセから離れ給え!」


続けざまにカサンドラとデュナンまで手を伸ばし、

見事に三人重なって倒れてきた。


「お、重たい…! 誰か降りろ!」


「女に向かって重たいとは……っ」

アグリアスが顔を真っ赤にして胸ぐらを掴んでくる。


「姉様、すぐ離れるのです!

この体勢は……子を身籠ってしまう危険がありますわ!」


どんなメカニズムだよ。


「ぐへへへ……」

デュナンはちゃっかり俺の足に頬ずりしている。


「デュナン! お前だけは絶対にヒロイン枠に入れないからな!」

唯一の救いは、アグリアスが鎧を着ていなかったこと。


……うん、柔らかい。


こういう時だけ、全部が冗談みたいになる。

たぶん俺は、それに甘えてる。



使い魔は途中で消失したらしく、詳細は分からない。 

魔力切れか術者死亡か──どちらか。 


どちらにせよ、「助けを呼ぶ余裕すらない」ということだ。


こうして、四人パーティーで向かうことになった。

少なすぎる気もするが、王様は俺を買っているわけではない。


たぶん「あわよくば厄介払いができれば……」ぐらいだ。


前衛三人+変態(仮)一名。

実質、俺は数合わせだ。

剣も魔法も、覚悟も、誰かのついで。


いや、誰が変態だ。


唯一の救いはカサンドラの回復魔法を覚えているところだ。


ネコショウはあまり体調が良くないようで今回はお留守だ。


少し心配だったが、これから長旅になる。

無理はさせられない。



草原を二日歩き、湿原手前で野営する。


「ソロボスってどんなとこなんだ?」

スープを啜りながら尋ねる。


「霧に覆われた湿原の奥にある村ですわ」

カサンドラがミント色の髪をほどき、櫛を通す。

夜営中で、最低限の身支度をしている。


「魔女の隠れ里でね」

デュナンはスープを飲み干して続きを話す。


「古くはアルバード王家から迫害され、逃げ込んだとか。霧は魔女の結界で、部外者は迷って村に着けず、永遠に彷徨うらしい」

アグリアスが意地悪そうに微笑む。


「もし迷ったら、一生一緒に過ごせるな」


「なっ……!」

アグリアスは頬を赤く染める。

なぜかデュナンも同じ反応。

カサンドラはアグリアスに熱い視線。

まったく、退屈しないメンバーだよ。

少し笑みがこぼれる。


遠征への不安もあるが、このパーティーにどこか居心地の良さのようなものを感じる……そう思い込もうとしていた。


「姉様、村に着いたらどうしますか?」


「まずは何が起こったか、確かめる必要があるな」

確かに事情を確認するのが先だよな。


その瞬間、湿原の奥から──

かすかに、赤い光が見える。

炎? だめだ、ここからじゃ見えない。

“何か”がこちらを見ているような、冷たい気配。


敵意とは断定できない。

それが、逆に不気味だった。

俺は思わず、手にしたスープを握り直した。


戦う理由も、守る誓いも、まだない。

それでも、ここで引き返す未来だけは、なぜか想像できなかった。


――何故か嫌な予感だけが、最後まで消えなかった。

こうして、夜は静かに、更けていく──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ