表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
一章 王都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/132

ヒロイン?

渋々、物凄く渋々、カサンドラは部屋に招き入れてくれた。


拒絶したいのに、追い返せない。

その葛藤が、態度の端々に滲んでいる。


「まったく、人の部屋を覗くなんて……やっぱり変態ですわね」

そっぽを向きながら上着を整える。


変態はどっちだよ、と突っ込みたいが我慢する。

「そんで、アグリアスは無事なのか?」


「軽い熱中症ですわ。命に別状はありません。

……まあ相手も手加減してたみたいですけど」


「よかった……」

胸を撫で下ろす。 


あの場で何が起きたかを思い返す余裕は、今はない。ただ、生きていてくれたことだけで十分だった。


「それより、あなた優勝したんですってね?」


「おう! オーダーには応えてやったぜ」

やや得意げに腕を組む。


「その後、王女様に狼藉を働いたとか」


「いや誤解だ! てか誰から聞いた!?」 


「誤解も何も、あなたのこれまでの行いを考えると……」

カサンドラはそこで口を閉ざす。


信じたい気持ちと、信じきれない感情がせめぎ合っている。


「元を辿れば俺が悪いんだけど。どうにもならねえんだよ」


「なるほど。己の性欲が制御できず犯罪を止められない……そういうことですわね?」


間違ってはないんだが、それは別の病気だ。

「……もういいよ。アグリアスが無事なら俺は帰――」

言いかけた、そのとき……引き止められたような気がした。

 

振り向くとカサンドラの表情が一瞬、揺れた。

「あっ……い、いえ。別に、邪魔だなんて……その……」

追い返したい。

――それなのに、言葉が喉で引っかかっているような……。


結局、カサンドラの家のリビングで寝泊まりすることになった。


ネコショウも勝手に押し入ってきて、枕元で丸くなる。


誰も口には出さないが、この夜は、どこか落ち着かなかった。

  


翌朝――

ドンドンドンッ!!

扉を激しく叩く音で目が覚める。


この音、ろくな来客じゃない。


「誰だよ朝っぱらから!」

玄関の扉を開けた瞬間、柑橘系の香りと共に、

誰かが勢いよく抱きついてきた。


「会いたかったよ、僕のスウィ〜トハニー!」

甘ったるい声。


「……デュナン!?」


「おぉ、僕の名前覚えてくれてたんだね♡」


嫌な予感しかしない。


西の英雄は、ゼロ距離で俺の胸に頬ずりする。

 「おい離れろ! お前そんなキャラじゃなかっただろ!」


「昨日の戦いで、君が僕の心に触れたのさ……

僕、運命、感じて……♡」


方向性を、盛大に間違えている。


まじか、ラッキースケベの副作用か?


そのとき――

隣の部屋の扉が、静かに開いた。


絹のような金髪。アグリアスだ。

その後ろから、カサンドラも顔を覗かせる。


床で抱き合っている俺とデュナンを見て、

空気が凍りつく。


「…………どうぞごゆっくり」

アグリアスは無表情で一度扉を閉め――

次の瞬間。


蹴破る勢いで戻ってきた。

「待て貴様らぁ!

こんなところで何をしている!」


怒りと困惑と、よく分からない感情が混ざっている。


デュナンは優雅に立ち上がり、一礼する。


「僕はデュナン・レオンハート。

昨日、命を預け合った仲だ……つまり、婚約者フィアンセだ」


「いつ、そんな取り決めをしたんだよ!」


何故か、アグリアスとカサンドラの視線が、

凶器のように突き刺さる。


誤解が、最悪の形で積み重なっている。

……俺が何もしなくても、勝手に話が進んでいく。


俺の知らないところで、事態は最悪の方向へ転がり始めていた。



王都バルフォネアから南へ数十里。

枯れ果てた木々が墓標のように突き立ち、

陽光さえも喰らうような濃い霧が漂う。

――カンパネラ湿原。


人の営みが、完全に拒絶された土地。

生き物の気配すら途絶えたその地で、

ぽつり、と赤い火の手が上がった。


湿原を覆う霧を押しのけるように、

炎は静かに、だが確かに燃え広がっていく。


その熱は、

王都で起きた騒動とは無関係に――

次の災厄を告げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ