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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
九章 英雄編

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第112話 終わり?

俺の背後で、エアリー陛下が桜色の炎を纏っていた。


エアリー陛下の目が淡いピンク色の光を放ち、炎は次第に羽衣となり彼女を包み込む。


彼女を縛っていた枝は炎に焼かれ、隣で縛られていた青い短髪の女性も解放される。


「……アーサー様」

彼女はエアリー陛下など眼中にないようで、倒れているアーサーの元へ駆け寄る。


「ほほう……まさか加護持ちだったとは……」

ガーザックは少し距離を取る。


エアリー陛下が手をかざすと、一瞬で桜吹雪がガーザックを包む。


――次の瞬間、淡いピンクの爆炎が散る。


「ぐっ…制約の枝を焼き切るとは……」

ガーザックは爆風を浴びながら飛び退く。


「エアリー……陛下……」


神々しい彼女を見た時に、俺はある出来事が脳裏に蘇る。


一年前、魔王軍七幹部の変面のカリスと対峙した時、奴は言っていた。


攻撃を受けた相手に化けられると――そして、奴は化けた相手の魔法やスキルを使っていた。


あの時、どうして気づかなかったんだ。

カリスがエアリー陛下の姿で魔法を使っていたということは、エアリー陛下が同等の力を扱えるってことだ。


エアリー陛下の桜吹雪は容赦なくガーザックを圧倒する。


「小娘が……また、ラインベルドの血筋に敗れるというのか!」


ガーザックがどんなスキルを使おうと、根こそぎ桜が破壊していく。


このままエアリー陛下がガーザックを倒し切ると思ったその時、突然、エアリー陛下の炎が消え、電池が切れたようにその場に倒れた。


「フハハハ、神はまだ私を見捨てて無かったか」


ガーザックは高笑いを上げ、赤い直剣を精製し、左手に握った。


ガーザックの鎧は砕け散り、その下から現れたのは、赤髪のやつれた男の姿だった。


「さあ、死ぬがよい……」


ガーザックは倒れているエアリー陛下に歩み寄る。


「ガーザック!」

俺はアリスから退魔の剣を受け取りガーザックの元へ駆ける。


「ふっ、バカめ自ら加護を手放すとは!」

ガーザックはこちらを向き赤い直剣を構える。


「ひっさつ! じゃがんかいほう!」

アリスの声が背後から響く。


戦場に悪寒が走る。


「ぐわぁぁぁぁ――」

ガーザックが恐怖に慄く。


ナイスだアリス!


恐怖に塞ぎ込むガーザックの背後で、空間が歪む。

青いの短髪の女性が青いマントを翻し、ガーザックを包む。


――次の瞬間、ガーザックが背を向けたまま、俺の目の前へ瞬間移動させられた。


「決めなさい!」

ハスキーな声に従い俺は背を向けるガーザックの首に退魔の剣を振るう。


ザンッ!

「……ぐっ……」

足元から赤い棘が無数に飛び出して、俺の体を貫く。


「俺が……俺が恐怖などに負けるかぁぁぁ!」

ガーザックは振り返り、奴の剣が俺の心臓を貫く。


くそっ……ここまでか……。

諦めかけたその時、俺の右手の赤い腕輪が呼応し、生命の息吹を取り戻す。


俺は退魔の剣を握り直し、油断したガーザックの首を跳ね飛ばした。


「ま、まさか……お前が血の回帰のスキルを……」

ガーザックの首が地面を転がる。


彼の切り離された体が赤黒い灰となり、朽ちてゆく。


「ぐっ……俺は何度でも蘇ってやる……」

ガーザックは生首の状態でも、こちらを睨みしゃべっている。


「ゴキブリ並みにしぶといな……」

もうなにもできないだろうと思ったその時、ガーザックの目が黒く光る。


――直後、黒い雷が目から放たれる。


まずい。退魔の剣を持っている。このままじゃ――加護が――退魔の剣で防ごうと思ったが間に合わず俺の視界が衝撃と共に真っ暗になる。


わけもわからず地面に押し倒された。


……誰かが俺の上に乗っている。


「そんな……どうして……」


身を伏せるようにミザリアが俺の顔を覗き込んでいた。


「よかった……」

その言葉を最後に彼女の瞳の輝きは失われ、脱力して俺に体を預ける。




ガーザックの死と共に赤い雨も、赤い獣も、疫病も――そして腕輪さえも消え去った。


しかし、奴が残した被害は甚大で、城は半壊し、死者も出た。

――なにより、ミザリアは俺を庇い意識を失っている。


王都医療院にて、ミザリアが簡易ベッドに寝かされていた。

その隣のベッドに一命を取り留めたアーサーも寝かされていた。


「まったく、頑丈なやつだよ……」


「アーサー様がそう簡単にやれるはずがありません!」

俺の隣に青い短髪の女性が座っていた。


こいつ、マントで瞬間移動してたやつだよな。


「てか、お前は誰だよ?」


「これは申し遅れました。私はアーサー様の雌奴隷、ミレディ・マクレイドです」


「めすどれい?」


「ああっ……なんて甘美な響きなの! 

もっと私を罵って下さい!」

ミレディはハスキーな声で悶えている。


なんだ、こいつ……さっきまでクールだったのに、別人のようだ。


……俺のセンサーが告げている。

こいつにはあまり関わらない方がいい。


ミレディに若干引いていると、結界術師のメアリーが病室に入ってきた。


「リョウカさん……少しお話が……」

メアリーがミレディに視線を送る。


「大丈夫。このまま話していいよ」


「ミザリアさんですが、死の呪いがかけられています。このままでは後、一年も持たないでしょう」


――突然の宣告に思考が停止する。

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