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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
九章 英雄編

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第110話 窮地?

エアリー陛下がリョウカたちを見送って五日目が経過した。


結界術師のメアリー・リリーにより、王都全体に雨除けのまじないがかけられる。

 

赤い雨は王都を避けるように降り続けていた。

 

一方、王都医療院では、ミザリアが疫病患者の対応に追われており、朝から晩まで働き詰めだ。


王都医療院では既に患者の受け入れ場所がなく、

あぶれた者は次々に教会へと運ばれている。


「エアリー陛下……過去の文献によれば、ガーザックを討ったと同時に疫病も治まったとの記録もありますゆえ、早急にガーザックを討伐すべきです……このままでは王都が滅ぶのも時間の問題かと思われます」

参謀のサルベリアは、顔のしわがより一層深くなり、その表情から疲労の色が窺える。


「大丈夫です……今は彼らを信じましょう」

エアリー陛下は自分に言い聞かせるように両手を握る。


「リョウカ……」

窓の外から赤い空を眺めながら、

エアリー陛下はリョウカたちに一縷いちるの望みを託す。



――王都が沈黙に包まれた明け方。


エアリー陛下は王寝室で寝ていると、部屋の隅で赤い影が蠢く。


――異様な気配を察してエアリー陛下は目を覚ます。


「誰です!」

彼女の鋭い声が響く。


赤い影は形を成して、

狂気と破滅を携え、異質な存在が姿を現す。


「おはようございます。陛下……」


赤い甲冑に赤い直剣を携えた暴君ガーザックがそこにいた。


「いやっ……!」


エアリー陛下は手近な物を掴んで投げるが、

ガーザックの鎧に当たって虚しく床に落ちる。


「そんなに怯えなくても大丈夫です。

そこまで長くはいたぶりませんから。

まずは、両手両足の爪を剥ぎ、次に指を切り落とし、生きたまま肉を削ぎ落としていきます」


フルフェイスでガーザックの表情は窺えないものの、言葉と声色には狂気が滲んでいた。


「や、やめて……た、助けて……」


「ふふふ、陛下の苦痛に苦しみ、悶える姿が見えてきます。それだけで、この二百年間の怨みが晴らせそうです……」


エアリーの目から自然と涙が溢れ、恐怖で身動きすら取れなかった。


「レディの扱いとしては、些か教養に欠けるのではないかな?」


突如、空間が歪み、そこにもう一人の異質が現れた。


「あ、アーサー!」

予期せぬ来訪者にエアリーとガーザックの視線が彼に注がれる。


「ほほう。やはり予知に歪みが生じているな。

あの小僧のせいか……して、お前は誰だ?」


「我が名はアーサー・オズワルド。

前王の遺志を継いでエアリー陛下の救出にまいりました」


アーサーは背中の大剣を構える。


再び空間が揺らめき、

エアリー陛下の隣に青髪短髪の女性が姿を現す。


「ミレディ……エアリー陛下をお連れしろ……」


「御意!」

ミレディは短く返事をすると、青いマントを翻しエアリー陛下にかける。


「させんわ!」

ガーザックが手をかざすと床から赤い枝が出現してエアリー陛下とミレディを絡め取り拘束する。


「――血の制約。我が命が尽きるまで枝の拘束は外れぬものとする」

ガーザックがそう告げると、枝は固まり完全に二人の身動きを封じる。


「制約―? まじないのたぐいか……」

アーサーは特に焦った様子もなく顎に手を当てる。


「陛下はなぶって殺そうと思ったが、仕方ない……」

そう言ってガーザックは床に剣を突き立てる。

奴の中心から魔法陣が展開し、拡大していく。


エアリー陛下の足元まで魔法陣が及ぶと突如、赤く発光する。


「天血脈動――!」

赤い光の柱が空へ昇る。

まばゆい閃光と共に、光に包まれた一帯が消し飛ぶ。


「ほう……生きてるとは……」


空が見える――城が半壊する中、

アーサーとエアリー陛下の周囲だけは赤い光がかき消されていた。


床は崩れたものの、エアリーとミレディは枝に固定されたままのため、下には落ちなかった。


アーサーは着地したと同時に詰め寄り、大剣をガーザックの頭上から振り下ろす。


ガキンッ!

ガーザックはアーサーの一撃を受け止める。


剣圧で周囲の瓦礫が吹き飛び、ガーザックの足元も地面にめり込む。


「ほほう。化け物じみた一撃だな」

ガーザックはすぐさま剣を振り払ってアーサーを弾き飛ばす。


「民がいるせいで全力を出せまい……代わりに私が殺してやろう。 

――肺赤瘴はいせきしょう!」


ガーザックの甲冑の隙間から赤紫のガスが散布される。


「くくく、これを吸い込んだ者は呼吸する度に肺に激痛が走りやがて死にゆく」



「秘剣・屠龍とりゅう!」

アーサーがガーザックへ間合いを詰め、足元の地面から大剣で斬り上げる。


剣閃と共に激しい上昇気流が巻き起こり、赤紫のガスと共に空へ巻き上げる。


――バリンッ。

メアリーが張ったまじないが破れる。


「アーサー様……雨除けのまじないが……」

拘束されているミレディが気まずそうに指摘する。


「すまない……」

アーサーはそれだけ詫びると剣を構え直した。


雨が降り注ぐかと思いきや突如、空が晴れた。


「リョウカたちね!」

エアリーは拘束されながらも笑みがこぼれる。


「ふん。赤い雨の魔法陣が破られたか……まったく、テウザ山の奴らは何をしている。使えんな……」


「自身の無能を棚に上げて部下を攻めるとは……器が知れるな……」

アーサーの挑発に空気が張り詰める。


「まったく……飯はまだかと来てみれば……」

そこに隻腕の女神タチアナが姿をみせる。

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