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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
九章 英雄編

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異質?

――同時刻。

デュナンの前に、血徒の第一位ゼフォンと謎の女が不敵な笑みを浮かべている。


隣でアグリアスとセピアも臨戦体制に入る。


「あの……アグリアス騎士団長……。

リョウカさんに退魔の剣を渡したから、武器がなくて……」

セピアは言いづらそうにアグリアスの顔色を伺う。


「そうだったな。忘れてたよ」

アグリアスが聖剣クラリウスの柄に額をつけ、祈るように目をつむる。


「覇光斬・剣製……」


アグリアスの祈りと共に、セピアの手に金色に輝くレイピアが顕現する。


「それでしばらく戦ってくれ!」


セピアは光のレイピアに目を輝かせている。

「凄いです……軽いですよ!」


相手はこのやり取りの間も仕掛ける気配を見せない。

まるで、時間を稼ぐことそのものが目的のようだ。


「さあ、時間が惜しい……始めようか!」

デュナンの合図と共にゼフォンが手をかざす。


突如、デュナンたちを囲むように、血の棘が出現する。

棘同士が互いに結びつき、人一人はおろか、獣すら通れないほど密集していた。


血の円卓(ブラッディ・ラウンド)


血の棘は鋭さを増し、全方位からデュナンたちに襲いかかる。


――フッ。

一瞬、風が舞う。

次の瞬間には血の棘はかき消されていた。


デュナンの目の輝きは軌跡が残るほど輝きを増し、周囲の大気が纏わりついている。

まるでデュナンを中心に世界が渦巻いているようだ。


「ちょっと、総帥――あの化け物どうにかしてくださいよ」


「ゼフォン。私のために死んでくれ――」


「こんな状況で、そのノリは止めてくださいよぉ」

総帥の冗談とも本気とも取れる言葉にゼフォンは頭を抱える。

「ならば――」


ゼフォンが空に手をかざした。


剣雨ソードレイン!」


直後、真っ赤な剣が雨のように空から降ってきた。


ザンッ!

しかし、デュナンの一薙ぎで降りしきる剣の雨をかき消す。


「ぎゃー! デュナン様、わ、私、キュン死してしまいます!」


「まったく、セピア……お前は欲望に忠実なやつだな」

アグリアスは溜め息を漏らす。


神依ヴァス・デイ……加護者が自身の神や精霊を降ろす力……まさかここまでとは……」


総帥と呼ばれた女は感心したように声を漏らす。


「どうやら、私の出番はなさそうだな……」

アグリアスが前を見据えた瞬間――

デュナンが手を振る。


――鎌風と共に景色が両断される。


軌跡上にいた総帥とゼフォンも両断される。


「呆気なかったな……」

圧倒しているにも関わらず、デュナンの顔色が少し蒼白く、呼吸も浅くなっていた。


「油断大敵だねえ……」

突如、セピアの足元から無数の血の棘が噴出する。


「危ない――!」

アグリアスはセピアを庇うように押し飛ばす。


無数の棘がアグリアスの体を掠める。


「アグリアスさん!」

デュナンが背後に目を向ける。


「大丈夫だ……致命傷ではない……」


「すみません。アグリアス騎士団長……」

セピアも慌てふためく。


両断されたはずの総帥とゼフォンは、血となって形を崩す。


「血の分身か――器用だな」

デュナンは敵の位置を探る。


直後、デュナンの片耳の羽飾りが風向きと反して揺れる。


「アグリアスさん……どうやらステラがピンチのようだ。ここは任せてもいいかい?」

デュナンは心配そうにアグリアスを見る。


「ああ、まだ見せ場には足りてないとこだ」

アグリアスは自信満々に剣を構える。


「ええ、デュナン様、私たちは騎士です。守ることを優先してください!」

セピアも傷付いたアグリアスを支えるように立つ。


デュナンは一礼だけして、風のように消え去る。



既に戦が始まってから、かなりの時間が経過している。

陽動部隊の西口の山道では、爆発音が轟く中、ステラとネコショウ(化け猫モード)、そして騎士たちが赤い血の獣と交戦していた。


「けけけ、俺の獣たちの力はどうだ?」

ステラたちの前方に、赤く尖った髪の青年が、尖った歯をむき出しにして一方的な虐殺を楽しんでいる。


ドンッ!

次の瞬間、戦場全体を呑み込む爆炎が弾ける。


「きゃあ!」

ステラの耳に、騎士たちの悲鳴が重なって届く。


「ったく、お前のやり方はまどろっこしいんだよ」

赤頭の青年の隣に厳ついスキンヘッドの大男が立つ。


上裸で、綺麗な筋肉が存在を際立たせている。


「ったく。ガイアのおっさん。爆発なんてさせたらあっという間に楽しみが終わんだろ?」


「ほら、あそこならまだ遊べそうだぞ……」

ガイアと呼ばれた大男が地べたに這いつくばるステラを指さす。


「ハハハ、確かにあいつは食いがいがありそうだ!」


赤頭の青年はステラの前に跳んでくる。


「こいつは美味そうだ」

青年はステラの腕を掴み舌舐めずりをしている。


「や、やめて……」

ステラは指先が震えるだけで、短剣を握れない。

もはや抵抗する力は残されていなかった。


「にゃおん……」

化け猫モードのネコショウや他の騎士たちも先ほどの爆発で既に虫の息だ。


「きゃああ!」

赤頭の青年がステラの腕に噛みつく。


「ハハハ、いつ聞いても女が生きたまま食われる姿は興奮するね……その綺麗な顔も歯型で埋め尽くしてやるよ!」


「ひ、や、やめて……デュナン……助けて……」

ステラが涙をこぼす。


その瞬間、風が凪いだ。

無風にも関わらずステラの片耳についている羽飾りが揺れている。

まるで、対になるもう一方を呼ぶように。


――次の瞬間、赤頭の青年が突風と共に吹き飛ばされる。

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