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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
九章 英雄編

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東の空へ?

テウザ山、山頂に灰色のローブを着た三人の血徒が並ぶ。


直後に空からセピアを抱えたデュナンが降ってきた。


「やあみんな、お待たせ!」

相変わらずキザな奴だよ、まったく。


「まさか、魔法陣が崩されるとは……」

ウェーブがかった白髪の痩せた中年の男が先頭に歩み出る。


「俺の名は血冠の徒、第一位、赤雨のゼフォンだ」


「……」

その横に見覚えのある少女が立つ。

地面まで垂れている長い黒髪。

凛として整った顔立ち。

感情の窺えない赤い瞳。


忘れもしない。ダイダスとネリルを殺した、あの女だ。


「あいつ……!」

セピアが歯を食いしばりながら前に出る。


「セピア、待て!

俺も気持ちは同じだ。だが今は迂闊に手を出すな」

俺はセピアを片手で制す。


「ちょっとウリアナちゃん。俺も名乗りを上げたんだから、キミが続かないと恥ずかしいじゃん?

あれ、なんかあいつ一人だけカッコつけてね?

ってなるじゃん」


ゼフォンと名乗った男は突然、慌てふためく。


「……」

ウリアナはなおも無言で無表情だ。


「ああ、いいのっかなぁ。

おじさん傷ついちゃったなぁ……」


ゼフォンとかいう男、行動が読めない。

少し、不気味な男だ。


「ふふふ、まあまあ。落ち着きなさい。

ガーザック様が降臨なされた。

もう、我々の悲願は成就したも同然……」


真ん中に立つ宗教の教祖みたいな女が口を開く。


彼女は、目元が完全に隠れる深い被り物をしていた。灰色のローブと同じ色合いで、視線の行き先は一切わからない。


顔の上半分を覆われているはずなのに、

なぜか「見られている」と錯覚させる不気味さがある。


「少し、お話しませんか?」

真ん中の教祖みたいな女がこちらに話しかける。


「確か作戦では瞬殺した方がいいんですよね?」

ジェーンが女の言葉を無視して、アグリアスに尋ねる。


「ああ、行ってこい!」


次の瞬間、目の前のジェーンが消える。


直後、ジェーンの蹴りがウリアナの横腹を捉え、土煙と共に蹴り飛ばす。


あまりの速度にその場の誰一人反応できなかった。


ジェーンは教祖の女とゼフォンの隣で悠々と話す。

「私、一度あの子を逃がしてるから。私が倒すわ」


そう言ってジェーンは蹴り飛ばしたウリアナの元へ駆ける。


「ちょ、ちょっとなんなのよあの化け物?」

ゼフォンは目を見開きながら、こちらに尋ねる。


「俺の可愛い師匠だよ」

俺はゼフォンを睨む。


「私もジェーンさんのところに行きたいけど、我慢する」

セピアは退魔の剣を構える。


そうだ。復讐心よりも今はこいつらを倒すことに専念しよう。


「ねえ、ねえ? りょうか? 

がーざっく……ここにいないよ?」

アリスがとんでもないことを口にする。


「えっ、どういうことだ?」

アグリアスはアリスに詰め寄る。


「あらあら。バレてしまったのね。その子目隠ししてるのに凄いわね。あと、やっぱりその男のせいで予知にズレが生じてるわね」

教祖の女は俺を指さす。


「もしかして、ガーザックは王都か?」

デュナンが鋭い声と共に教祖の女を睨む。


「だとしても、もう間に合わないわ。

王都まで寝ずに走っても三日はかかるわよ」

女の口元が歪む。


デュナンの深緑の瞳が黄緑色に発光する。

周囲の大気が渦巻き、風が吹き荒れる。


「わあお! すごいねそれ!」

ゼフォンは目を輝かせている。


風精霊シルフ神依ヴァス・デイね……ゼフォン……気を抜くと殺されるわよ」


「ははは、それは願ったり叶ったりだよ」

ゼフォンが手をかざすと、アグリアスがクラリウスを構え先頭に立つ。


「邪魔はさせん!」 


「セピアさん、アリスちゃんに退魔の剣を持たせて!」

デュナンからの指示が飛ぶ。


「え、どうしてですか?」


「いいから、時間がない!」


「わかりました。強引なデュナン様も素敵っ……」

セピアの目はこんな時でもハートになっている。


セピアは急いでアリスに退魔の剣を握らせる。


「リョウカくん、アリスちゃんを抱っこして!」


「え、ああ……」

俺も状況を飲み込めていないがアリスを抱き抱える。


「リョウカくんそのまま、東を向いて!」

本当によくわからないまま、デュナンの指示に従う。


「絶対、退魔の剣には触れないでくれ。

リョウカくんの加護が打ち消されたら死ぬよ?」


「え……なんか、さらっと怖いこと言ってないか?」


「アリスちゃん、しっかり剣を握っててね! 

リョウカくんはアリスちゃんを離さないように!

じゃあ、いくよ!」


何だか嫌な予感がする。

「ちょっと待ってデュナン――っうわぁぁ」


背中に衝撃が走る。


俺の背中に高密度の風がまとわりつき東の空へ打ち上げられる。


「うわぁぁぁぁぁぁ!」


まさかデュナンの奴、このまま王都まで俺とアリスを飛ばす気か?

いくらなんでも遠すぎるし、無茶苦茶だろ!


――東の空へ、二人の男女が駆けるのだった。

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