悪役令嬢は『パフェダンジョン』に転スラしたようです
リクエスト企画作品
企画・原案: スイッチくん@AI作家 さま
『ビルの構造がパフェになってて、そこの各フロアが果物だったり、アイスクリームだったりする世界に飛び込んだスライム(元悪役令嬢)のお話。』
※天原先生の連載作品『異世界転生ダンジョンマスター 温泉ダンジョンを作る』N0250JS に多大な影響を受けています。丸パクリにはならない様に注意していますが、パクリじゃーん!と不快に思う方がいたらかたじけない。
幼い頃、両親からこう言われた。
他人からの評価に囚われるな
やりたい事を好きにやればいいのよ
それが幸せになるコツだからと。
それはいい。
確かにそう生きるのは楽しかった。
だが一言、こう付け加えて欲しかった。
『ただし、やりすぎるな。物事には限度がある』
だって、両親の言葉を信じて好き放題に生きた結果、私は民衆の怒りを買い、現在ギロチンをかけられそうになっているのだから。
お前は民の気持ちがわからないって野次がとんでいるけれど、そりゃそうよ。だって私は王族で、平民の方とお話したことなんてないんだもの。
わかるわけないじゃない。
『パンがなければブリオッシュを食べれば?』
私は親切心から言ったその言葉が、まさか逆鱗だったなんて……
ごめんなさい、わざとではないのよ。もし私が間違っていたなら、それは無知からであり、意図ではないの。
でもまあ、今更後悔したってもう遅い。
免罪符は沢山買っているから、楽園で幸せになろう。
昔、城に来たブッキョートはロクドウリンネとか言っていたけど、まさか教会の言うことが間違ってはいないだろう……ないよね?
◇◇◇
ダンジョン
この世界において、その語源は古オフランス語の「城の主塔」を意味する言葉。しかし、現在では天に伸びる世界各地の「迷宮建造物」を指すようになっている。
そして、人間は知らないことだが、ダンジョンというのは、ダンジョンの意思が形になった『ダンジョンコア』という存在が運営していた。
ダンジョンコアは、多くの冒険者を欲で誘い込み、探索と戦闘で彼らの血と魔力と命、その他諸々を吸い取りダンジョンポイントを貯める。
そして、それを消費することで、いけるところまで迷宮建造物を増築し、巨大化し続けるという本能をもっていた。
それはビルを拡大させていくタイプのゲームをプレイする人間が、『いけるところまでとことんやってやろうじゃん!』となる感覚と似ているかもしれない。
だが、二つ大きな問題があった。
一つ目。
人ならざるダンジョンコアは、人の欲というものがよくわからないのである。
かつて多くのコアたちが考えたダンジョンは、敵を倒せば宝石が出るダンジョンだった。
しかし、当のダンジョンコア達は「なぜこれで人間が喜ぶのか」が、正直よくわかっていない。
ただ『宝石を出せば人間が来てくれる』と、これまでの経験で知っているから、そういう構造のダンジョンにしていたに過ぎない。
より上層までのぼって強い敵と戦えば、より質の良い宝石がとれるダンジョン。それが、歴代のダンジョンコアたちが、数千年かけてようやく導き出せた限界だった。
そして、もう一つの問題。
ダンジョンと言うのは維持にもダンジョンポイントを消費するーーつまりコストがかかるのだ。無理に成長させても、どこかで確実に維持コストのほうが大きくなってしまう。
そして停滞したダンジョンは、出てくる金品の内容に飽きられ、入る人間が減り、いずれは縮小するしかなくなってしまう。
かといって、それを嫌って出てくるドロップ品の内容を変えたりすると、目も当てられないくらい冒険者の数が減り、ダンジョンがあっという間に終わってしまうこともよくあった。
他のダンジョンコアと連絡をとり、この宝石を出せばやたら喜ばれているからといって真似をして、自分のダンジョンでも全く同じものを出すと、一気に廃れて共倒れになったりもする。
その理由は希少価値がなくなるからなのだが、その概念がコア達にはわからない。
わからないが、そういった経験則から共倒れを防ぐため『流行ったダンジョンの真似をするのは、お互いの破滅を招くのでやめよう』といった紳士協定が、ダンジョンコア界隈では定められた。
しかし、人の心がわからないダンジョンコア達。宝石の他に良いアイデアをだせるはずもなくーー
「だから、わたしがよばれたの?」
「そうそう、教えてほしいのよ。人間が何を喜ぶのか」
だから、ダンジョンコア達は『人間に聞く』ことを考えついた。同じ世界の人間に話しかけることは出来なかったが、大量のダンジョンポイントを消費することで、異世界の人間とランダムに意思疎通ーー通話する事ができたのである。
異世界の人間にコンサルしてもらい、ダンジョンをリフォームするのが最近のダンジョンコア界隈の流行だった。
実際に成果も出ている。『武器ダンジョン』や『灯油ダンジョン』、『絹糸ダンジョン』、『香木ダンジョン』なんかは、今や業界最大手だ。
「いいよ、てつだってあげる」
ダンジョンコアという未知の存在に呼び出されたと言うのに、その人間は臆す様子を見せなかった。
そして、自身満々に宣言する。
「じゃあ……『おかしなダンジョン』にしよう!」
とあるコアが通話している人間。
彼女の名前はグレーテルちゃん(7歳)。
過日、お菓子の家の魔女にホイホイ誘い込まれながらも兄の機転で生還した、グリムの森のド天然ラッキーガールである。
提案を、訝しがりながらも採用したダンジョンコア。
結果どうなうなったか。端的にいうならこうだ。
『ぅゎょぅι゛ょっょぃ』
グレーテルちゃんの作ったダンジョンは、各フロアの壁が果物だったり、アイスクリームだったりするものだった。
また、中に湧くモンスターを倒せば、より高級で美味しい菓子やジュースをドロップする。
これが大当たりした。
補給のための帰還が不要になったことで、冒険者の滞在時間が激増したのだ。大人数のパーティーが来ることも増えた。
人間がダンジョンに留まり戦えば、それだけ多くのダンジョンポイントが集まる。
また、血や死体ほどではないが、ゴミや排泄物だって吸収されるので、それもチリツモで結構なポイントになった。
「ひゃわ?!え、ちょこれ、いいの?!こんなにポイントが入っちゃっていいんですか!?」
また、このダンジョンの高層階でしか手に入らない最高品質の菓子を、マウント合戦に夢中の王侯貴族が高値で買うのも人気に拍車をかけた。
さらに、町を追われた犯罪者や盗賊団も定期的に逃げ込む様になり、その討伐に騎士団まで入るようになった。
「えへへ、良かったね。コアちゃん」
「グ、グレーテル様ぁ!一生ついていきますぅぅぅ!!!」
そんなわけでこのダンジョンは世界屈指の高層ダンジョンとなり、各層ごとに壁の菓子が違う特徴からいつしかこう呼ばれるようになる。
『パフェダンジョン』
ちなみにグレーテルちゃんは、冒険者を殺すためのモンスターを配置することには反対した。優しい子なのだ。
「なんとかならないの?」
「すみません偉大なるグレーテルさま。それは無理なんです。あれは、ダンジョン瘴気の淀みと歪みの塊が具現化して蠢いてるだけなので……」
そういうことだったが、もし実現していればどうなったか?
安全に無限の籠城が可能となるダンジョン内部に国ができ、働かなくても食っていけるので皆怠惰な肥満体になり、爆発的に人口は増え、やがて防衛力を失ったその国を取りに他国が攻め込んできて……(以下、無限ループ)
ぅゎょぅι゛ょっょぃ!
そんな感じで、現在、定期的に行われるようになっている異世界間の念話。
ある日、そのための念波に、とある昇天中の悪役令嬢の魂が流された。
その結果、その魂は記憶を保持したまま、ダンジョン内でユニークモンスター『ハイヒール・スライム』として転生することになる。
だが、それを知る者はいなかった。
◇◇◇
断罪ギロチンされた私は、お菓子だらけの、よくわからない世界の未確認軟体動物に生まれ変わっていた。
まさか『ロクドウリンネ』の方が正しかったとは……
うろ覚えだけど、確か、悪いことしたら次の生で畜生にされるんだったよね。
初めはショックをうけ、やがて落ち着き、半年間ROMり、状況を整理して分かったのは次の4点だ。
この身体、食事は不要。
畜生達は人間を襲う本能がある(私は別)。
畜生間でテレパシーの簡単な意思疎通可能。
私はケガを治す魔法を使える。
これを元に、今世での私の方針が決まった。
『沢山人助けをして、来世は人間になる』
何故なら『ブッキョート』曰く、人助けとかして『トク』ってのを貯めると来世は人間に生まれかわれるからだ。
あ、決まったそばから冒険者のお姉さんが死にかけているわ。早速助けてあげよーっと。
そういえばテレパシーって人間相手にも使えるのかな?それも試してみよーっと。
◇◇◇
冒険者のユニは、英雄譚に憧れをもつ実力派ソロプレイヤーだ。
一人での探索は、難易度も危険度も上がるのに、ユニはなぜそんなことをしているのか?理由は二つある。
一つは、S級冒険者のユニと同格の者が中々いない事。
もう一つは、貴族の家の生まれであるユニの趣味や価値観が、他の冒険者とは合わない事だ。
どちらかが悪いわけではない。
ただ、例えばユニは、一般的な冒険者達の、名誉よりも命を大事にし、つるんで酒場や娼館に行く事で不安を紛らわせるような生き方を『女々しい』と思ってしまう。
一方で周囲も、ユニの凄さは認めつつも、『アイツの趣味嗜好はちょっと理解できねーわ』となる者が多かった。
「ぐっ……赤いスライム?未確認のユニークモンスターか……私もここまでだな」
そんなわけで、リスクを恐れず単身で上階に行き、魔物の集団を倒したものの深傷を負ったユニは現在、死を覚悟していた。
しかしーー
"パァアアア"
赤いスライムが魔力を使ったかと思うと、ユニの傷がみるみる塞がり、体力が回復していった。
「なっ?!これは……君が、治してくれたのか?」
驚きに目を見開くユニだったが、次の瞬間、更なる衝撃に襲われる。赤いスライムはなんと、念話のようなもので、ユニに語りかけてきたのだ。
『ぷるぷる……悪い…じゃ、ない……よ。なかま……ニンゲンに……』
お互い伝わりにくい部分も多かったが、簡単な意思疎通ができた。おそらく、この赤いスライムは自分の味方。そして仲間になりたいらしい。また『人間になりたい』という願望がある様だ。
吟遊詩人の語る伝説と同じじゃないか!
英雄願望を持つユニは歓喜した。
大好きな英雄譚に、王宮戦士と人間になりたいスライムのバディものがあるのだ。
「じゃあ……一緒にいこうか」
そして、一人と一匹は歩き出す。
拡張されたパフェダンジョン。
その人智の及ばぬ高層階に向かって……
さて、ここまでがこの物語の
『プロローグ』である。
ちなみに本編(連載版)では、
レベルアップした転スラ令嬢が人型化したり
ユニが実は、女装という男にしかできない趣味をつらぬく漢の中の漢だと判明したり
そんな二人が結婚したり
人魔ハーフ子供ができたり
ダンジョンコアと邂逅したり
他にも色々、とっても楽しい展開がある。
どうぞ、お楽しみに!
〜fib〜
fib: 軽くて悪意のない「ちょっとした嘘」
:連載の予定はないですよ!
ぶるぷる、ぼく悪い作者じゃないよ
パフェダンジョンに遊びにきた冒険者さん
せっかくだから、ちょっとだけダンジョンポイント置いていって下さいよー。コアちゃんも喜ぶんで(*´ω`*)
ブクマ2pt
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