神の町という名のフィクション
ここは、【ベルソス】この世界の1番左にある国
ベルソスでは、神【テュフォラ】を信仰しており、テュフォラは完全無欠の神、絶対的勝利の神として有名である。
そして、ベルソスでは昔からとある話があった。
神の町があるという噂だ。
ある町の神父は言った。
神の町があると、
ある町の神父は言った。
神の町に行くと願いを叶えて貰えると、
ある町の神父は言った。
その町にはテュフォラ様がいると、
* * *
【ベルソスの儀式】
聖女が神の町を目指し、1年間ベルソスから出る儀式だ。
神の町に行けるのは聖女のみとされており、今年は【ネイサン】という髪の長い少女が選ばれた。
「ネイサン、同行者は決めたの?」
「はい、幼なじみのノアを連れていきますわ。」
【ノア】
ネイサンの幼なじみであり、神の町に興味があり研究をしている。ベルソスの町でも珍しく魔法が使える。
使用魔法は【アブソリュート・ゼロ】
周りのものを絶対零度にする他、氷の階段や、家まで作れるほどの才能がある。
「俺がネイサンの同行者~!!」
目を輝かせながら、ネイサンをじっと見詰めるのはノアであった。
「明日の夜、町の中心…儀式会場に来てね。」
同行者は1日前に告げられ、1日猶予がある。
ノアは、水を大量に荷物に詰めて、家を出た。
「それではこれより、ベルソスの儀式を始める!」
町の長がそう言うと、進むべき道が光る。
「ノアくん、ネイサンをよろしく頼む。」
「はい、必ずや無事に帰ってきます。」
そう言って、2人は光の方向に進んでゆくのだった。
無言で進んでいく、ノアはあまり気にしていなかったが、ネイサンが無言に耐えられずに話し出す。
「本当に神の町なんてあるのかしら?フィクションだったりして、」
ノアはびっくりした表情でネイサンを見詰める。
「神の町はありますよ。絶対に」
真顔で真剣に見つめて、そう言った。
その目に少し恐怖したネイサンであった。
「そうよね、きっとあるわ。」
そう言って、ノアを見ると真っ直ぐと前を向いている。そして、目にハイライトが無いことに気がついたのだった。
「ノア…?」
ノアはこちらを振り向き
「神が呼んでいる…行かないと…」
小声でそう言って進んでいく。
ネイサンはこれは完全にノアでは無いと思った。
「ねぇ、貴方誰なの?…私のノアを返して」
そうすると、ノアは空中に浮かぶ。
ノアにはこんな能力はない。アブソリュート・ゼロではこんなことは出来ない。
誰かに操られてるのだと、ネイサンは確信した。
「神の町アブソリュートに入る資格は、聖女であるノアだけが所持する。資格のない貴女は入ること不可。ここで帰りなさい。」
その声はノアではなかった。
ノアの上にいた少女、ネイサンはその少女を見て気がついたのだった。
聖書に書かれていた神【テュフォラ】である。
「テュフォラ様、私はベルソスの聖女ネイサンです。1つ、質問をお許しください。」
「なんだ?」
「ノアが聖女であることは把握いたしました。ですが、教会の水晶は私を聖女であると認定しました。何故ですか?」
テュフォラは悩みつつ、答えを出した。
「聖女は聖なる人の聖と女で聖女だろう?これで男であるノアが選ばれて酷い仕打ちを受けたらと思うと、私は怖くて出来なかった。だから、ノアに1番近い貴方を選んだ。君がノアを同行者として選ぶことも知っていた。」
テュフォラは不敵な笑みを浮かべる。
「ノアくんは貰っていくよ。長に伝えておいてくれ、ノアはテュフォラの夫であるってね。」
「ノアの許嫁は私よ。ノアは私の夫よ!」
人間であるネイサンが、神に抗って勝てるはずがない。
だけど、ネイサンは神に抗う。
ノアのことが好きだからだ。
「…町まで案内してくれ。」
何故だかテュフォラは町へと連れて行くように言ったのだった。
嫌な予感がしたが、ネイサンは連れていった。
【ベルソスの儀式会場】
「ネイサンが戻ってくるぞ!!」
「あれは、神様か!?」
「テュフォラ様だぞ!!テュフォラ様が町に来たぞ!!」
教会の鐘が鳴らされる。
広場にみんなが集まる。
ノアの両親、ネイサンの両親に長、その他多数
「私は神テュフォラである。夫であるノアをいただきたくここまで来た。」
その言葉に長とその他の人々は喜んだ。
だけれど、ノアの両親とネイサンの両親はそれをよく思っていなかった。
「テュフォラ様、ノアの両親です。ノアは…ノアは同意しているのでしょうか?」
「同意?そんなもの要らないだろう?これは運命なんだ。こうなる運命、ノアは私と結婚するんだから。」
ノアの両親は、顔が青ざめていく。
「ちなみにだが、結婚式が行われたあと…ノアとは一生会えない。神の町アブソリュートに連れて行くからな。」
神と結婚した後、人間であるものは半永久的に生き続ける。そして、人間でも神でもない者は神の町から出られなくなるのだ。
「ノアは!いつかベルソスを出て色んなところに行きたいと言っていたの!いくら神様でも、それはさせないわ。」
テュフォラが何かを言おうとする前に長が動き始めた。
「衛兵、ノアのご両親とネイサンとネイサンのご両親を結婚式まで監禁しておきなさい。」
そう言い、監禁されてしまった。
そこから町は忙しくなった。
神であるテュフォラの家を作り、ノアを綺麗なベッドに寝かせた。
そして、朝が来た。
「ん~…」
まだ眠たそうに起きるノアは、家とは違う場所でびっくりしたのであった。
そのびっくりした声にテュフォラが気が付き、ノアの部屋へ行った。
「おはよう、私の夫であるノア」