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Episode26 本当の力

 どうしてこんなことになってしまったのだろうか。


 ボクは正直よくある異世界転移のように転移特典としてそこそこの力を手に入れて、特に物語の本筋に絡むことなく空気で終わるようなモブで良かったのだ。

 それがなぜがいきなり【勇者】だ【魔王】だと訳の分からない称号を与えられただけでなく、挙句の果てには【現人神】なんて大層な存在にされてしまった。


(痛いのとか苦しいのとか嫌だけん、死ぬとはゴメンだけど、こんなめんどくさい役回り、代われるんなら誰か代わってくれんかなぁ)


 突如聞こえた謎の声に、ボクは咄嗟に【天地創造(ジ・クリエイション)】で盾を作り出してボクと武藤くん、それにちょっとリリーナさんに似た顔付の少女、ティナちゃんを守りながら漠然とそんな思考を頭に浮かべる。

 不意に放たれた一撃(おそらく特大の火球)の威力は凄まじく、作り出した盾はあっという間に消滅してしまい、全ての衝撃を受け止めることはできずにティナちゃんと彼女を守るように抱きしめながら身を盾にした武藤くんが吹き飛ばされ、気を失ったのを確認しながらボクは声が聞こえた方向へと視線を向ける。


『ほう、今の一撃を耐えるか。……ふむ。あの小僧と互角に戦えていたということはそのステータス、偽装されたものか』


 そこにいたのは2mほどの大きさを持った人型のロボットだった。

 この場に全部で4体のロボットが左手に装着されたバズーカ砲のような物を向けているので、おそらく先ほど放たれた火球はそこから発射されたのだろう。

 先頭に立つ一番ごちゅごちゃした装飾の1機が黒色で全てのステータスが4万程度と一番ステータスが高く、残りの赤色をした3機も全てのステータスが3万を超えているのでこんなやつらが大量に襲ってくれば本来ならかなりの脅威となるのだろう。


(リーダー機みたいのが『魔動兵【Ⅳ型】試作機』で赤いのが【Ⅲ型】かぁ……。これって、【天地創造(ジ・クリエイション)】では【Ⅹ型】までリストに載ってたけど、この時点で【Ⅴ型】以上が出てきてないってことはこいつら倒すと追加で登場、ってパターンなのかな? ……でも試作機とはいえ【Ⅳ型】のステータスってこんな弱かったっけ? カタログスペックで言えば【Ⅴ型】以降が出てきたら今のボクじゃ厳しいはずなんだけど、【Ⅳ型】がこんなに弱くなってるんなら、案外どうにかなったりして)


 そんなことを考えていると、不意にリーダー機から『まあ、能力の偽装お互い様か』と不吉なセリフが聞こえて来た。

 そして、頼んでもいないの『よかろう。では、この機体の性能テストを兼ねて真の能力を開放してやろうではないか』と余計なことを言い出した。


(【天地創造(ジ・クリエイション)】で確認できるカタログスペックだと【Ⅳ型】のステータスの平均は7万前後のはず! 試作機だからもうちょっと弱かとは思うけど……でも、試作機だからこそ機体の稼働時間を犠牲に能力が底上げされとったり、何らかのカスタマイズがされていて通常よりステータスが高かか可能性もあるから、そうなってくるとちょっときつい戦いになるかも!)


 そんなことを考えながら身構えるボクの目の前で、黒色の機体はいくつかのパーツが変形しながら形状を変化させていき、やがて機体の所々に魔力光の青いラインが浮かび上がったかと思えばそのステータスを5万前後まで上昇させる。


『見たか! これぞ我が国最高の――』


「あれ? 思ったより弱い」


 思わずボクがそう言葉を漏らした瞬間、その場を沈黙が支配する。

 そして数秒の沈黙の後、リーダー機に搭載されていると思われるスピーカー(正確にはスピーカーと同じ効力を持った魔道具なんだろうが)から再び先ほどと同じ男の声が聞こえた。


『聞き間違いだろうか? 今、弱いと口にしなかったか?』


「ええと……だって、【Ⅳ型】本来のステータスって、7万くらい…ですよね?」


『本来? 何を言っているんだ? 【Ⅳ型】は試作段階とはいえ、我が国最高の技術の粋を結集して作られた新型機だぞ! それに、未だ量産の目処はたっていないとはいえ、人工的に『強者の壁』を超えるステータスを持った兵器が作り出せるということがどういうことか分かっているのか? もし、この機体を安定して量産できる技術が確立されれば、『英雄の域』に達した規格外さえ出てこなければ――』


「話の途中、すみません! あの…『英雄の域』、って何ですか?」


『は? ……そんな基礎的なことも知らん……ああそうか。【魔王】であるということはこの世界の外から呼ばれて来た者であるということなのだから、この世界の常識をまだそれほど知らんのか』


「すみません……」


『ハァ……。『英雄の域』とは、ステータスの平均が10万を超える者達を指す名称だ。もっとも、50レベルにも満たん貴様では縁遠い――』


 そこまで口にしたところで突然言葉が切れたかと思うと、しばらくの間を置いて再びスピーカーの向こう側から若干震えているように聞こえる声が響く。


『この機体に搭載された【偽装看破】の能力が発動しないということは、まさかお前の偽装スキルは神話に語られる世界すら騙すと言われた伝説のスキル、【偽る者(プリテンダー)】なのか?』


 そう問われた直後、『【偽る者(プリテンダー)】の所持を看破されました。偽装ステータスに【偽る者(プリテンダー)】が表示されます』とのアナウンスが鳴り響いたことで、先程の武藤くんと同じくこの相手にもボクが【偽る者(プリテンダー)】を所持していることが開示されたことを把握する。


(これ、ボクが故意に隠しとるんじゃなくて【偽る者(プリテンダー)】でステータスを偽装すると勝手に【偽る者(プリテンダー)】の表記も消えるとに、バレる度にこうやってお知らせが来るとはめんどくさかとよね)


 そんなことを考えていると、スピーカーの向こう側から『バカな……。まさか、実在するスキルだったとは。……それに、【現人神】を持つということは、こいつが先日の創造神エネルによる神託にあった……。なれば、まさか既に『英雄の域』まで至っている可能性も!?』などとブツブツ言っているのが聞こえる。


(……もういっそ、本当のステータスを開示してしまおうかなぁ)


 そんなことを考えながらボクは本来のステータスに意識を向ける。



・芹川優璃 Lv.45 EXP:124,249(次のレベルまで:721)

・SP :102/592

・MP :171,421/ 186,342

・攻撃力:108,366(+8,200)

・防御力:109,869(+16,500)

・魔攻力:117,384(+10,600)

・魔防力:114,378(+18,700)

・素早さ:111,372(+26,000)

(基礎プラス)

・MP :+23.7×3

・攻撃力:+22.7×3

・防御力:+22.7×3

・魔攻力:+22.7×3

・魔防力:+22.7×3

・素早さ:+22.7×3

(補正プラス)

・SP :×4

・MP :+12.8×3

・攻撃力:+10.8×3

・防御力:+10.8×3

・魔攻力:+10.8×3

・魔防力:+10.8×3

・素早さ:+10.8×3

【装備】

・殲滅の大鎌『タナトス』(覚醒・改三)(攻撃力:+8,200、魔攻力:+10,600、素早さ:+7,200)(専用装備・装備可能レベル1:攻撃力:+1,000+(レベル×160)、魔攻力:+1,600+(レベル×200)、素早さ:+900+(レベル×140))

・白波高等学校の制服★3(改三)(防御力:+16,500、魔防力:+18,700)

・ローファー★3(改三)(素早さ:+18,800)

・魔集石のネックレス(改五)(MP回復速度400%上昇)

・魔集石の指輪(改五)(MP回復速度300%上昇)

【獲得称号】

・現人神(信仰による補正値の増加が10倍になる)

・秩序の守護神(防御力、魔防力の基礎値、補正値×信仰レベル)

・混沌の破壊神(攻撃力、魔攻力の基礎値、補正値×信仰レベル)

・中庸の裁定神(MP、素早さの基礎値、補正値×信仰レベル)

・神に叛きし者(通常では習得不可能な組み合わせでスキルの取得が可能となる)

・勇者覚醒者(全ステータス補正値+2)

・魔王覚醒者(全ステータス基礎値+13)

・勇者一行(全ステータス補正値+1)

・七元徳(全ステータス補正値+0.5(勇者の適性がある場合は+1))

・七大罪(全ステータス基礎値+5(魔王の適性がある場合は+7))

・英雄(状態異常、能力変化を受けなくなる)

・ダンジョン攻略者(全ステータス補正値+0.5)

【習得スキル】

(基礎能力向上系)

・基礎MP向上LV1(獲得時消費SP:10)(基礎値+1)

(ステータス補正値向上系)

・MP上昇(小)(獲得時消費SP:5)(MP補正値+0.1)

・MP上昇(中)(獲得時消費SP:10)(MP補正値+0.2)

・MP上昇(大)(獲得時消費SP:15)(MP補正値+0.3)

・MP上昇(極)(獲得時消費SP:20)(MP補正値+0.4)

・賢者 (獲得時消費SP:30)(MP補正値+1)

(効果及び技能習得系)

・能力看破(獲得時消費SP:―) Lv.10(次のレベルまで:―回)(敵のステータスを確認出来るようになる)

・極光の賢者(獲得時消費SP:―) Lv.5(次のレベルまで:112回)(光属性魔法への適性が上がる)

・漆黒の賢者(獲得時消費SP:―) Lv.5(次のレベルまで:112回)(闇属性魔法への適性が上がる)

・知の賢者(獲得時消費SP:200) Lv.9(次のレベルまで:2,356回)(全てのアイテム、能力の詳細を知ることができる(レベルによる開示情報の制限あり))

(特殊系)

・信仰Lv.3(獲得時消費SP:―)(全補正値+(スキルレベル×0.1))

・勇者(獲得時消費SP:―)(SP×2、全ステータス基礎値+0.5、魔王との戦闘時にステータスが1.1倍に向上する)

・魔王(獲得時消費SP:―)(SP×2、全ステータス補正値+1)

・純潔(獲得時消費SP:―)(MP基礎値+0.5(勇者の適性がある場合は+1))

・寛容(獲得時消費SP:―)(攻撃力基礎値+0.5(勇者の適性がある場合は+1))

・節制(獲得時消費SP:―)(防御力基礎値+0.5(勇者の適性がある場合は+1))

・慈愛(獲得時消費SP:―)(魔攻力基礎値+0.5(勇者の適性がある場合は+1))

・勤勉(獲得時消費SP:―)(魔防力基礎値+0.5(勇者の適性がある場合は+1))

・忠義(獲得時消費SP:―)(素早さ基礎値+0.5(勇者の適性がある場合は+1))

・分別(獲得時消費SP:―)(全ステータス基礎値+0.1(勇者の適性がある場合は+0.2))

・色欲(獲得時消費SP:―)(MP補正値+1.4(魔王の適性がある場合は+2))

・憤怒(獲得時消費SP:―)(攻撃力補正値+1.4(魔王の適性がある場合は+2))

・暴食(獲得時消費SP:―)(防御力補正値+1.4(魔王の適性がある場合は+2))

・嫉妬(獲得時消費SP:―)(魔攻力補正値+1.4(魔王の適性がある場合は+2))

・怠惰(獲得時消費SP:―)(魔防力補正値+1.4(魔王の適性がある場合は+2))

・傲慢(獲得時消費SP:―)(素早さ補正値+1.4(魔王の適性がある場合は+2))

・強欲(獲得時消費SP:―)(全ステータス補正値+0.2(魔王の適性がある場合は+0.3))

・虚無(獲得時消費SP:―)(全ステータス基礎値+1、7大罪習得による欲望の増大が軽減される)

天地創造(ジ・クリエイション)(獲得時消費SP:―)(MPの消費次第であらゆるものを創造できる)

・眷属使役(獲得時消費SP:―)(眷属へ対し、自身が所有するスキルを一時的に付与できる(同時習得が不可能なスキルは付与できない))

偽る者(プリテンダー)(獲得時消費SP:200)(自身のスキルやステータスを偽ることが出来る)

【パーティーメンバー】

・紫藤亞梨子 Lv.45 MP:0/7,026【気絶】

・リリーナ・エメラルダ Lv.78 MP:0/ 24,336【気絶】



(でもこんな意味不明なステータス、バレたら絶対めんどくさいことにしかならんけん隠し通すしかなかとよねぇ……)


 心の中でそっとため息を吐き出しながら、とりあえず目の前の問題に集中するためボクは心を空っぽにするよう心掛けながら、再び眼前に立ちはだかる面倒くさい問題へと再び視線を戻すのだった。

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