Episode13 このダンジョン、やっぱりおかしい
ボクらが【森のダンジョン】攻略に挑んでおよそ9時間ほどの時間が過ぎるころ、おそらくこのダンジョンの最下層だと思われるこれまでと異質なフロアに到達してた。
地面は確かに固いのだが、その見た目は石でできた通路ではなく明らかに肉の塊のような赤黒い不気味な見た目をしており、周囲の壁もピンク色の明らかに肉壁だと思われる物体がドクンドクンと脈動してため何かの生物のお腹の中に取り込まれてしまったような錯覚さえ覚える。
それにその空間には妙に甘ったるい臭いが充満しており、先程から先頭を歩く紫藤さんの顔が明らかに赤くなって息も荒くなっているのが分かる。
(というか、一度解除した『状態異常:【発情】』が再び付与されとるから絶対ここの空気にそういった成分が含まれとるんよなぁ……)
ボクはこの先に待ち構えているであろうボスに備え、このダンジョン攻略で一気に上がったレベルとステータスを再度確認しながらそんなことを考えていた。
【ステータス】
・芹川優璃 Lv.32 EXP:42,865(次のレベルまで:2,815)
・SP :158/448
・MP :3,396/19,017
・攻撃力:7,091(+612)
・防御力:7,357(+1,650)
・魔攻力:8,685(+800)
・魔防力:8,153(+1,870)
・素早さ:7,622(+2,418)
(基礎プラス)
・MP :+23.7
・攻撃力:+22.7
・防御力:+22.7
・魔攻力:+22.7
・魔防力:+22.7
・素早さ:+22.7
(補正プラス)
・SP :×4
・MP :+9.3
・攻撃力:+7.3
・防御力:+7.3
・魔攻力:+7.3
・魔防力:+7.3
・素早さ:+7.3
【装備】
・殲滅の大鎌『タナトス』(覚醒)(攻撃力:+612、魔攻力:+800、素早さ:+538)(専用装備・装備可能レベル1:攻撃力:+100+(レベル×16)、魔攻力:+160+(レベル×20)、素早さ:+90+(レベル×14))
・白波高等学校の制服★3(防御力:+1,650、魔防力:+1,870)
・ローファー★3(素早さ:+1,880)
・魔集石のネックレス(MP回復速度20%上昇)
・盗賊の目(罠の設置場所や隠し通路などが見えるようになる)
【獲得称号】
・神に叛きし者(???)
・勇者覚醒者(???)
・魔王覚醒者(???)
・勇者一行(???)
・七元徳(???(???))
・七大罪(???(???))
・英雄(???)
【習得スキル】
(基礎能力向上系)
・基礎MP向上LV1(獲得時消費SP:10)(基礎値+1)
(ステータス補正値向上系)
・MP上昇(小)(獲得時消費SP:5)(MP補正値+0.1)
・MP上昇(中)(獲得時消費SP:10)(MP補正値+0.2)
・MP上昇(大)(獲得時消費SP:15)(MP補正値+0.3)
・MP上昇(極)(獲得時消費SP:20)(MP補正値+0.4)
・賢者 (獲得時消費SP:30)(MP補正値+1)
(効果及び技能習得系)
・能力看破(獲得時消費SP:―) Lv.10(次のレベルまで:―回)(敵のステータスを確認出来るようになる)
・極光の賢者(獲得時消費SP:―) Lv.3(次のレベルまで:11回)(光属性魔法への適性が上がる)
・漆黒の賢者(獲得時消費SP:―) Lv.3(次のレベルまで:11回)(闇属性魔法への適性が上がる)
・知の賢者(獲得時消費SP:200) Lv.6(次のレベルまで:318回)(全てのアイテム、能力の詳細を知ることができる(レベルによる開示情報の制限あり))
(特殊系)
・勇者(獲得時消費SP:―)(???)
・魔王(獲得時消費SP:―)(???)
・純潔(獲得時消費SP:―)(MP基礎値+0.5(???))
・寛容(獲得時消費SP:―)(攻撃力基礎値+0.5(???))
・節制(獲得時消費SP:―)(防御力基礎値+0.5(???))
・慈愛(獲得時消費SP:―)(魔攻力基礎値+0.5(???))
・勤勉(獲得時消費SP:―)(魔防力基礎値+0.5(???))
・忠義(獲得時消費SP:―)(素早さ基礎値+0.5(???))
・分別(獲得時消費SP:―)(全ステータス基礎値+0.1(???))
・色欲(獲得時消費SP:―)(MP補正値+1.4(???))
・憤怒(獲得時消費SP:―)(攻撃力補正値+1.4(???))
・暴食(獲得時消費SP:―)(防御力補正値+1.4(???))
・嫉妬(獲得時消費SP:―)(魔攻力補正値+1.4(???))
・怠惰(獲得時消費SP:―)(魔防力補正値+1.4(???))
・傲慢(獲得時消費SP:―)(素早さ補正値+1.4(???))
・強欲(獲得時消費SP:―)(全ステータス補正値+0.2(???))
・虚無(獲得時消費SP:―)(???)
・天地創造(獲得時消費SP:―)(???)
・眷属使役(獲得時消費SP:―)(???)
【パーティーメンバー】
・紫藤亞梨子 Lv.31 MP:3,109/4,302 状態異常:【発情】
【ステータス】
・紫藤亞梨子 Lv.31 EXP:40,885(次のレベルまで:715)
・状態異常:【発情】
・SP :60/220
・MP :3,109/4,302
・攻撃力:4,222(+2,194)
・防御力:2,743(+1,958)
・魔攻力:1,450
・魔防力:2,433(+2,353)
・素早さ:4,171(+3,530)
(基礎プラス)
・MP :+6.7
・攻撃力:+6.7
・防御力:+5.7
・魔攻力:+5.7
・魔防力:+5.7
・素早さ:+6.7
(補正プラス)
・SP :×2
・MP :+3
・攻撃力:+5
・防御力:+4
・魔攻力:+3
・魔防力:+4
・素早さ:+5.5
【装備】
・戦女神の剣『アテネ』(攻撃力:+544、防御力:+308、魔防力:+483)(専用装備・装備可能レベル1:攻撃力+110+(レベル×14)、防御力+60+(レベル×8)、魔防力+80+(レベル×13))
・白波高等学校の制服★3(防御力:+1,650、魔防力:+1,870)
・ローファー★3(素早さ:+1,880)
・風神のネックレス(素早さ:+1,650)
・雷神の腕輪(攻撃力:+1,650)
【獲得称号】
・勇者覚醒者(???)
・勇者一行(???)
・魔王眷属(???)
・姫騎士(攻撃力、素早さの補正値+0.5、防御力、魔防力補正値+1)
・救われし姫君(同じパーティーに【英雄】を所属する者がいれば両者にバフがかかる)
【習得スキル】
(基礎能力向上系)
・なし
(ステータス補正値向上系)
・攻撃力上昇(小)(獲得時消費SP:5)(攻撃力補正値+0.1)
・攻撃力上昇(中)(獲得時消費SP:10)(攻撃力補正値+0.2)
・攻撃力上昇(大)(獲得時消費SP:15)(攻撃力補正値+0.3)
・攻撃力上昇(極)(獲得時消費SP:20)(攻撃力補正値+0.4)
・剛力 (獲得時消費SP:30)(攻撃力補正値+1)
・素早さ上昇(小)(獲得時消費SP:5)(素早さ補正値+0.1)
・素早さ上昇(中)(獲得時消費SP:10)(素早さ補正値+0.2)
・素早さ上昇(大)(獲得時消費SP:15)(素早さ補正値+0.3)
・素早さ上昇(極)(獲得時消費SP:20)(素早さ補正値+0.4)
・韋駄天 (獲得時消費SP:30)(素早さ補正値+1)
(効果及び技能習得系)
・極光の賢者(獲得時消費SP:―) Lv.4(次のレベルまで:39回)(光属性魔法への適性が上がる)
・騎乗の達人(獲得時消費SP:―) Lv.1(次のレベルまで:10回)技術に関係無く様々な乗り物を乗り熟せるようになる)
(特殊系)
・勇者(獲得時消費SP:―)(???)
・純潔(獲得時消費SP:―)(MP基礎値+0.5(???))
・寛容(獲得時消費SP:―)(攻撃力基礎値+0.5(???))
・忠義(獲得時消費SP:―)(素早さ基礎値+0.5(???))
・分別(獲得時消費SP:―)(全ステータス基礎値+0.1(???))
・アイテムボックス(獲得時消費SP:―)(自由に異空間からアイテムや装備を取り出せ、無限に収納できる)
・ポータル(獲得時消費SP:―)(一度訪れた事のある特定の地点へ瞬時に移動出来る(クールタイム:10分))
【パーティーメンバー】
・芹川優璃★ Lv.32 MP:3,396/19,017
(そう言えば、レベル20とか30の時は10レベルになった時みたいに変なアナウンスが流れんかったなぁ……。それと残りSPが200を超えたから『知の賢者』を取ってみたけど……開示情報が多くなったのと引き換えに情報が多すぎて見づらくなったとよねぇ。しかもこれ、必要ないと思う情報の表示オフもできんし……。ただ、【天地創造】で作りたいアイテムの情報もある程度出てくるから今迄みたいにソートで類似効果を持ったアイテムを絞って後は本当に欲しい効果のアイテムを作れるか運任せだったけど、このスキルのおかげでピンポイントで欲しい装備を作れるようになったとは良かったかな。おかげで道中紫藤さんが【催眠】とか【催淫】とか【淫紋】とかのステータス異常になった時も、素早く必要な回復アイテムが作れたし……)
ボクは遠い目をしながらこれまでの道中について思考を向ける。
正直言ってこのダンジョンは当初危惧した通り、R指定が入るような部類のダンジョンで間違いなかった。
途中で出来る魔物はスライムや触手系ばかりかゴブリンチャンピョンだったりゴブリンナイトだったりのゴブリン系上位種、それに夢魔やサキュバス、インキュバスといったそういった方面の敵しか出てこなかった。
更には例の落とし穴や催眠・催淫ガスが充満する部屋、ついでに『○○しないと出られない部屋』なんかのトラップもあったが、全てその場で適切なアイテムを創造することで大きくMPを消費させられたが問題なくこの10階層まで辿り着くことができたのだ。(因みに例の部屋は入り口をダイナマイトで吹き飛ばしたら出られた。)
(というか、紫藤さんがこれだけ状態異常にかかってるのにボクは一切状態異常にならんから、ボクが持つスキルで効果が不明のどれかに間違いなく状態異常無効の効果があるよね。それが分かればその習得条件を確認して紫藤さんにも獲得してもらうのに……やっぱり、積極的に【知の賢者】を使うことでレベルを上げて早く全ての情報を開示する必要があるとかなぁ)
正直、【知の賢者】は便利な反面使うと一気に頭の中に様々な情報が入り込んでくるのですごく疲れるし気持ち悪いのだ。
因みに、普段表示されている情報以外にもスキル取得条件や合成に必要なアイテムの種類など意識を集中しないと閲覧できない情報もあり、情報を知りたい特定の項目に向けてスキルを使用するとそういった非表示の情報も一気に頭に流れ込むので結構きついのだ。
(まあ、そこら辺はこのダンジョンを攻略した後に考えればいっか。それより先に考えんといかんのは……明らかにダメっぽい紫藤さんをどうするか、かなぁ)
ボクはフラフラとした足取りで一言も発さずに前を歩く紫藤さんの背に視線を向けながらそんなことを考える。
このフロアに到達してすぐに【発情】の状態異常が現れたので当然ボク達はその状態異常を回復するためのアイテム、『静寂の泉』(消費MP1,200)を作って状態異常の解除を試みた。
しかし、いったん解除された状態異常が再び再発している以上、何度やっても同じ結果になるのならMPを無題に浪費することになるので状態異常解除を諦めるしか手はないのだろう。
それと当然最初に状態異常が現れた時点で撤退も視野に入れたのだが、どうやらここはダンジョン内でもさらに特殊な空間となっているのか脱出用のアイテムを使用することができず、更には戻るべき道も肉の壁に阻まれて先に進む以外の選択肢を絶たれてしまったのだ。
(【発情】を無効化する装備も作るのに2万のMPが必要だし、今のボク達はゴールまで辿り着いて原因であろうダンジョンボスを討伐するしかないとよね。でも――)
次の瞬間、このフロアに到達してから何度目かのメッセージ、『何者かが眷属の所有権を奪おうとしています。眷属『紫藤亞梨子』の所有権を譲渡しますか?』が表示されたのですぐに『いいえ』を選択し、その直後に拒否した回数と同じだけ見て来た『譲渡を拒否します。これにより、『紫藤亞梨子』のサキュバス化もレジストされました』といった通知が表示される。
だが、今回のメッセージはこれだけで終わらなかった。
『眷属『紫藤亞梨子』の精神値が限界に達しています』
(えっ!?)
驚きのあまり思わずボクが足を止めると、それとほぼ同時に前を歩く紫藤さんも足を止め、頭を抱えながらその場に蹲ってしまう。
そして、荒い息のまましばらくその場で動きを止め、やがてさらに息を荒くしながら右手を頭から離して下の方に動かそうとするが、勢いよく右手を上にあげると「ダメッ、ダメッ!」と悲痛な声を漏らしながら数度頭を左右に振る。
「ええと……紫藤さん、大丈夫、ですか?」
そう尋ねながら紫藤さんの肩に触れた直後、紫藤さんは声にならない悲鳴を上げたかと思えばビクンビクンと数度体を震わせ、その後糸が切れた人形のように力なくその場に倒れてしまった。
(…………とりあえず、ステータスでは『状態異常:【気絶】』って出てるから大丈夫、なのかな? これ、目を覚ましたらまたあの状態になる……どころかもっとひどい状態になってる可能性もあるから起きる前にさっさとダンジョンを攻略しちゃった方が良いよね。思ったよりも広いけど、幸い魔物も出ないし蛇行はしてても一本道だから紫藤さんが気絶しているうちにさっさと抜けちゃお)
正直このフロアに到達してからかなりの時間歩いている気がするが、もしかしたら本来この甘い香りで侵入者が正気を失うまで最奥に辿り着けないようにこのような地形になっているのかもしれない。
だったら、最初の段階で一時的に状態異常を回復したり【勇者】としてそれなりの実力を持つ紫藤さんが限界を迎えたこの地点からゴールまではそこまで距離があるわけでは無いと考えられるのではないだろうか。
(まあ、さしより紫藤さんを背負って進むしかなかよね。こんな厄介な罠があるんだから下手するとここのボスは今迄戦ったザコ敵とは比べ物にならんくらい強いかも知れんけど、どちらにせよボク一人で対応できないレベルの敵が出てきたら紫藤さんが万全でも勝てんから、そん時は諦めるしかなかよね)
そう気持ちを切り替えたボクは、紫藤さんの鼻から漏れ出していた鮮血をハンカチで拭い取り、そのまま彼女を背負うと最奥に向けて黙々と歩みを進めていくのだった。




