その十七:アレと合体する
光とともに果実がはじけたような爽やかな香りがした。
「んっ……ぎっやあああああああああああ!」
次の瞬間、脳天が砕かれるかの如き頭痛。その痛みに受け身をとることができず、全身で感じた衝撃。
「ぐっあああああ!」
ミャウルはその体でバキバキと木の枝を折りながら、魔界の大地へと叩きつけられたのである。
「はぁっ……はぁっ……」
頭痛は意外と早く引いたが、吐き気が残る。周囲にアレの姿はない。
「うっ…………うええええええっ!」
頭蓋の中に異物感。固形物の少ない吐瀉物をぶちまけながらミャウルは実感した。
自分は――――堕天していないと。
「はぁ……ひとまずオッケーってことか……」
女神を堕天させずに魔界に送るための秘物、アレ。その製造とミャウルとの合体は、成功したようである。
「ん? ああ、これのことか」
スカートを捲り下着の中を覗いて、自分の身体に起きた変化を確認する。そしてミャウルは思う。この程度の変化ならどうでもいい…………と。
「さっさと魔王を倒して戻らないとな……って、もう少し服装考えるべきだったかな」
ミャウルは魔界に、普段着の白いワンピースのまま降り立ってしまったのだ。むろん、武器も持っていない。
「よお、お嬢ちゃん。てめぇ、転生者か?」
魔界の暴力が、ミャウルに迫る。
「いいや、女神だ」
「女神ぃ?」
「そう、女神だ」
いまだかつて、誰も攻略したことのない一桁台の魔界。
ミャウルはそれをわずか三日で制圧した。