その十四:アレが完成する
それは、突然決定したことのように思えた。
「ミャウル様、第十八転生局から離れるってどういうことですか」
「いや、やめはしないんだけどしばらく不在になるだけというか」
「言えない……事情なのですね」
レイサリスは賢い。そしてわきまえている。ミャウルにこれ以上質問をぶつけてはいけないと、自ら身を引いたのだ。
「というわけで、しばらくよろしく。転生者が戻ってきたら、私が戻ってくるまで魔界に行かせないでくれるだけでいいから」
「だけっ……って。まあ、わかりました。おまかせください、安心して」
「ありがとう。難しいこと頼んでごめんな」
そう言い残してミャウルは、第十八転生局を後にした。
***
ミャウルが向かったのは、絶対神ゼイラスの住まう空間である。
「アレ、できたんですね」
「早速貴様に試してもらうつもりだ」
「わかりました」
「行先は我の管理下、第八魔界」
魔界には発生の順から番号が付けられており、その中でも一桁台は危険度が異常に高いと言われている。そのため、第九魔界から第零魔界まではゼイラスの管轄となっているのだ。
「いきなり第八ですか、結構攻めますね」
「これは我と貴様だけの秘密実験だからな。他の者の担当する魔界におくるわけにはいくまい」
「まあ、そうですね。では、よろしくお願いいたします」
「躊躇がないな」
「ないですよ。私の悲願ですから」
「悲願……ねぇ。それさ、我のやり方に納得できてないってことだよね」
「いや、急にラフに喋るのマジでやめません? 絶対神なんですから」
ミャウル、ついにツッコミをいれてしまうの巻。
「まあそうだけど。我は嫌いではないよ貴様の考え」
「転生者ではなく、女神がかたをつけるって話ですか?」
「そうそう。その考えに納得したから、我もこれをつくったってわけだからね」
散る花弁のような輝きとともに現れたのは、ミャウルの小さな手のひらの中にちょうどおさまりそうな真っ赤な宝石。
「割り切るにしても、辛くないほうが良いですからね」
宝石は静かにミャウルに近づいていき――――。
「我は貴様を犠牲にするのは、ちょっと辛いけどね」
その輝きをだんだんと強くしていった――。
「絶対神様にそう言ってもらえて、光栄です」
まるで、太陽に照らされた血液のような輝きを。