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真宵猫―黒幕ー1

 一瞬にして戻ってきた境内はれいが飛ばされる前より一段と荒れ果てていた。


 先生がひと悶着起こしたのだろう。またその答えを裏付けるように地面には元黒騎士であろう甲冑などの残骸と真っ赤な鎖で完全に拘束されたドレスの女がそこにつながれていた。


「さてと、じゃあお話を聞きたいのだけれどいいかしら?」


 先生は鎖で繋がれたドレスの女へと視線を向ける。視線を向けられると一瞬ビグッと体を強張らせ冷や汗を流している。


 ただドレスの女は敵意や殺気を抑えるつもりはないらしく、こちらへと向ける視線は氷のように冷たい。そんな彼女がゆっくりと口を開く。


「あなたは、いえあなたたちは何者なの……?」

「う~ん、あなたが質問できる立場ではないんだけど……まあいいわ。というか今あなたが頭の中で考えていることが正解よ」

「――――ッ!?まさか今思考を!?」


 先生はその問いに沈黙で返す。ただ口元は笑っている。


 怜には先生とドレスの女の今行われている駆け引きのすべてを把握することはできなかった。――――が先生がドレスの女の目を見た瞬間何かしらの魔法を使ったことだけは魔力の流れで読み取れた。


 女の言葉からも思考を読む魔法を使ったのだろう。テレパシーや念話なんかの応用だと思われる。


 そんな駆け引きが行われたことによってか女の態度がガラリと変わる。先ほどまであったこちらへ向けてきた殺気や敵意が瞬時に消え、またドレスの女の影から無残に破壊されたはずの黒騎士が現れ、共に片膝を着き深く頭を下げだす。横に騎士もいるためか昔の騎士が王に忠誠心を示す時のようなポーズだ。

 

「……申し遅れました。わたくし愛欲の魔女様より魔力を賜りましたカレン・ディベルと申します。崇高なる魔女様に拝謁します。あなた様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」

「そう、あなた愛欲に……。いいよ、特別に名乗ってあげる。私の名前はリリム=ヴェル=ヴァーミリオン、災禍の魔女と呼ばれているわ」

「――――ッ!!災禍の魔女、あの三大魔女の一人、ですよね!?」


 三大魔女?それに愛欲の魔女って……。


 わからない単語に首を傾げる怜、どうやら先生以外にも魔女がいるらしい。


 先生が災禍の魔女だと知ると先ほどのドシリアスな態度は何処へやらカレンは推しにあったオタクのようにきゃあきゃあと嬉しそうに騒ぎ出す。


 きゃあきゃあと騒ぐカレンの変化に困惑した怜はポロりとつい言葉をこぼす。


「えっと先生ってそんなに有名な方なんですか?」


 その言葉を聞いたカレンはぐるりと首を怜へと向けると早口で先生の偉大さを語りだす。


「リリム様が有名かですって!?当たり前じゃないですか!!リリム様は我々魔女擬き(ウィッチクラフト)の憧れの存在なんです!!本物の魔女様は全員で十三人いらっしゃるのですがその中でもさらに上位に位置する三人、その方々を三大魔女様と呼ばれていて魔女様に拝謁するだけでも畏れ多いのにその中でもさらに上の階級の三大魔女様ほどのお歴々の方々に拝謁するのがどれだけ至高のことだかあなたに理解できますか!!??」

「あ、はい……」


 顔を限界まで近づけ捲し立てて話すカレンに呆気に取られていると先生の咳払いが聞こえてきてカレンは落ち着きを取り戻す。


「申し訳ございません。つい興奮しちゃいました」


 そう言ってカレンはすぐに先ほどのように顔を伏せて先生の前に跪いている。ただ恥ずかしかったのか耳を真っ赤にしている。


「大丈夫よ。それで、あなたは愛欲の魔女擬き(ウィッチクラフト)ってことでいいのかしら?」

「あ、はい!愛欲の魔女様に血をいただき魔女擬き(ウィッチクラフト)に変わりました」

「そうなのね。それであなたに聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」

「はい!どうぞ!」


 ただ先生は質問を投げかけなかった。いやできなかった。


 階段から誰かの上ってくる足音がしたためである。


 音のした方に視線を向けると足音が一つ、淡々としたリズムでこちらへと近づいてきている。


「怜、もう今のこの子のことは気にしなくていいから階段からくる敵に備えなさい。今日の依頼の黒幕だから」

「え!?」


 今から登ってきている者たちが黒幕だと先生は断定したが黒幕はカレンと名乗ったこのドレスの女なのではないのか。


 そんな疑問を解消する時間もなくこちらがいわれるがまま杖を構えると石の鳥居から少し若い二十代後半くらいの男が姿を現した。


 

ここまで読んでくださりありがとうございます。評価の方はお任せいたしますので、よければもう一話見ていただければ幸いです。

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