0.2 それは始まりの話
「動くな!」
部屋に突然入ってきたゴブリンの兵士が少女に槍を向ける。
少女は、何も言わず、向けられている槍をじっと見つめていた。
俺の方に数人のゴブリンがやってきて少女との間に壁を作る。
「一緒に来てもらおう」
ゴブリンが少女の手を取ろうとした途端、それは開いた
「呼んだか。エレラ」
と言って少女の背後に現れた門からデュラハンが出てくる。
どこかでみたことあるような。
「うん。ここにいる生物全部、冥府に連れてってあげて」
まずい。まずいまずいまずい!
少女が完全に怒っている。
「ま、魔王様を逃がせ!」
ゴブリンたちに囲まれそのまま窓の方へと追いやられる。
「ちょ、まて………」
開いている窓から飛び降りそうになった途端、それは起きた。
ゴブリンに槍を向けられていた少女が俺を抱きしめて窓の外へと連れ去った。
「馬鹿な生物…………」
少女が指を鳴らした途端、城のすべての生命がその場で一斉に倒れこむ。
少女は、ちょっとご機嫌が戻ったのか俺を思いっきり抱きしめてきた。
だが、俺は、そんな少女から離れたくてもがく。
「暴れないでよ」
少女がもがいてる俺に言う。
ただ、俺は確認したかった。
すべての生物が、今までのすべてを失ったことを
「なぁ」
俺は、暗い声で言う。
「どお? 邪魔なの全て消してみたけど」
今までの苦労が、頭の中で流れ出す。
そしてそれは動く。
『スキル【災厄】が発動しました』
頭の中に壊れたはずのシステムが復活したアナウンスが流れだす。
どこかを失った感覚とそれに似合う対価が、体中にあふれ出す。
「なんで殺した。なぜ俺のすべてをお前は一瞬で奪っちまうんだ」
怒りがこみあげてくる気がした。
城内に倒れこむ魔族を見た途端、背筋に刺激が走る。
「分かったから、黙ってて。あの野郎がまだ生きてたなんて」
少女はしょんぼりと落ち込んだ表情で、城内のほうへと右手で指刺す。
すると、城内の方へとなにかか飛んでいった。
「なにをした!」
「別に、ただ魂を戻しただけ」
少女がそう言った途端、倒れていた魔族たちが起き上がり始める。
抜かれた魂が、元に戻ったのだろう
「これでよかったんでしょ?」
と少女が聞いてきた。
俺は何も言わず、そのまま黙り込む。
少女に背中から抱きしめられるも、俺は黙り込んだ。
「それじゃあ行きましょうか」
と少女はいうと自ら自分の唇を俺の唇に重ねた。
なぜ少女がそんなことをしたのかわからなかった。
だが、これだけはわかった。
以前にもしたことがある。
俺から離そうとすると、少女にせがまれなすがままキスしてしまった。
少女から唇を話すと満足そうに微笑む。
「なぜ、キスしたんだよ」
「そ、それは………」
少女がその場で黙り込む。
聞かなかったことにして、城の方へと帰ろうとする。
だが、少女に止められてしまった。
「戻っちゃダメ。本当に殺したいの?」
その言葉に俺は、先ほどのアナウンスが本物であることがわかった。
スキルの効果としての災厄。
それは、俺の周りに起きるため、俺が城に戻った途端、皆その場で死ぬことが確定する。
だから、少女は止めたのだろう。
大事なものを壊さないためにも。
「で、でもさ………」
「創造神はまだ生きているて言ったら?」
少女が言った言葉に体中電気が走る。
「ちょ、ちょっと待て、なぜ創造神が生きてんだ! エレラが倒したはずだろ」
と俺は言う。
少女は、コクと頷く。
「とどめが甘かったみたい。そのためスキルのシステムは一時的に利用できなくなった。でも再起動した。その意味は、創造神がいきてるの」