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0.04 寝起き


 ピピピ………ピピピ………ピピピ………。

 鐘が鳴るような音が聞こえてくる。

 変な夢を見ていたような感じがしなくもなく、パッと目を開け辺りを窺う。

 隣には俺に抱き着いてぐっすりと眠っている少女がいた。

 少女の寝顔を見た途端、なんだかほっとしてしまう。


「おきた?」


 少女の母親がエプロン姿で部屋に入ってきた。

 どうやら朝食の準備でもしていたのだろう。


「はい。おはようございます」


 反射的に朝の挨拶をする。

 その言葉に反応して、少女の母親も同じように「おはよ」と言って返してきた。

 

「むーむー………えへへっ」


 少女が隣で寝言をつぶやく。

 かなり何時もとは違う顔になっているものの、とても幸せな夢でも見ているのだろう。


「その子は、起こさなくていいから。ちょっと手伝ってくれるかしら?」

「は、はい!」


 ベッドから立ち上がり、抱き着いる少女の手を離し、そこへ枕を代わりに抱かせる。

 少女の頭を撫でて、そのまま部屋を後にした。

 台所に着くと、いい匂いが部屋全体に広がっていた。


「これ机に並べといてくれる?」

「はい!」


 皿を受け取り、机の上に並べ始める。

 おいしそうなにおいが匂ってくるため、口の中が大変なことになる。

 まぁ、仕方ないよなぁ。

 そう思いながら、再度渡された皿を並べる。


「あ、そうそう。君のスキルの代償なんだけど」


 俺のスキル?

 なんのことだろう。

 興味津々で耳を台所の方へと傾ける。


「全身が代償に持ってかれた時、一度君は神すら超えるから気おつけてね?」

「え? は? は、はい」


 なにがなんだかよくわからない。

 だが、最近はスキル発動すらしないため安心している。

 だけど、それは一時的な急速なのかもしれない。


「ママ………ココア………」

「はいはい。ちょっとまってね~」


 いつもの綺麗な白銀ロングヘアの少女とは違い、寝癖だらけの少女が椅子に座る。

 俺と二人の時はこういう姿をみせてくれなので正直驚いている。


「はい。どうぞ」

「ありがと」


 少女の母親にココアという飲み物が入ったコップを渡されたため、そのまま少女の目の前に置いた。

 最初は、眠たそうに飲んでいたが。

 俺が少女の前でじっと見つめていたら、少女が急に飲むのをやめてしまい、顔を真っ赤にして走って部屋の方へ戻っていってしまった。


「ふふふ、あの子ったらあなたいること忘れていたのね」


 少女の母親が笑っている。

 やはり、俺がいるときは身綺麗にしているのだろう。

 まぁあの髪で寝癖一つもなかったのが普通におかしかったが。


「寝ぼけてるだけじゃないですか?」

「そうかもしれないわね。いつもそうじゃないの?」

「いえ、いつもは寝ぼけてませんよ?」


 少女の母親は、少しの間無言になる。


「あの子がねぇ………」


 不思議そうに部屋に入ってくる寝癖が治り、いつもとは違い、赤いドレスを身に纏った少女の方を見つめて言った。

 少女は、その様子を見たのかきょとんとしている。

 

「食べましょっか」


 と席に着いた少女の母親が言う。

 全員手を合わせ。


「「いただきます」」


 ベーコンエッグとパンを一緒に口に入れる。

 食べていたら少女がこっちを見て笑っていた。


「動かないで」


 少女は、俺の右のほっぺを自分の右の人差し指で触れる。

 触れた手が離れると、ベーコンエッグの卵に一部が指先についていた。

 それを何もなかったかのように少女は自分の口に運ぶ。


「………あ、ありがとう」

「う、うん」


 すこし少女の頬が赤かったのは気のせいだろうか。

 食事の手を進めながらずっと考え込む。

 

「ごちそうさまでした」


 食べ終わり、昨日のように皿をシンクの方へと持ってゆく。

 シンクの近くにある箱の様な物がウィーンと音を立てている。

 なんだと近くによると、その箱の中で皿が水によって汚れを落とされていた。

 手洗いの意味とは………。


「あ、シンクに置いておいていいわよ。洗うのは後でやっておくから」


 自分の皿をもって少女の母親が俺の右隣に立っていう。

 俺は、その言葉通りに皿をシンクにおいてその場から立ち去ろうとする。

 だが、少女の母親が俺の耳もとでささやいた。


「あの子とデートでもしてきなさい」

 

 と言われ、俺はその場で数秒固まる。

 とりあえず何か飲もうと思い、机の上にあるポットから水をコップに入れ、そのまま飲み干す。


「そ、それ………」


 少女が俺の手に持っているコップを指差していう。

 あれ、これ………少女じゃね………。


「わ、悪い。間違えたわ」


 少女のコップに水を入れ、少女の目の前に置く。

 その隣に置いていた、俺のコップを持ち、水を飲む。

 俺が、間違えたからか少女の食事の手が止まっていた。

 まぁ、ほとんど食べ終わっていたみたいだった。

 少女の頭をポンポンと撫で柔らかいソファーの方へと向かう。


「お、何だこれ」


 薄い紙束に文字が書かれたものがソファーの上に置かれていた。

 ソファーに座り込み、薄い紙束に書かれた文字を読もうとする。

 だが、全く読めない。

 絵が貼ってあるのはなんとなく想像がつく。

 だが、文字だけのものは全く想像すらできなかった。


「あ、そうそう。あのたらしが呼んでいたわよ」


 なにか思い出したのか、少女の母親は少女の目の前で言う。

 たらしというとこで興味を持ちそっちの方へと目線を上げる。

 すると、少女と目が合う。

 すぐに少女は母親の方へと目線を戻していた。

 何か気になるやつでも書いてあったのだろうか。

 

「そう。いい加減パパと仲直りしてよ………」

「絶対いや。あの浮気者また過ごすなんて………」


 少女の母親が珍しく顔が暗くなっていた。

 さすがに家族のことになると弱いらしい。

 あのおっさん、浮気してたのかよ………。


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