0.4 違和感
「さすがにあれはないか」
とつぶやき本を閉じる。
あれとは、少女が使う次元魔法の事だ。
太古の昔に生み出された古代魔法であり、現在ではロストテクノロジーでもある。
少女に以前使い方を教えてほしいと言ったことがあるが、話をそらされてしまった。
その時の俺では、できなかったのだろう。
「あれ………いつのまに寝ていたの………」
少女が布団を頭にかぶりながら布団から出てくる。
だが、目の前の棒に目が止まる。
「あ………こ………これて………」
俺はすぐさま、それを両手で隠し、ベッドから出る。
気付かなかった。
今までこんなことはなかったのだが、あの本を読んでからだ。
そうに違いない。
「わ、悪い」
俺はその一言を残し部屋から出た。
そして、部屋の扉の前で腰を下ろしてため息をつく。
「なんで、あのタイミングなんだ」
頭を抱えたまま呟く。
恥ずかしさと絶望感が全身を覆う。
いつまでここに座っているわけにもいかず、寝間着のまま広間へと向かった。
「………」
「………」
メイド姿の幽霊たちが広間を掃除していた。
まぁ、メイド服と箒が浮いて勝手に掃除しているようにしか見えないが。
広間の大階段を一段ずつ降りていく。
夜は、全く見えなかった階段は今はっきりと見える。
赤いカーペットに薄黒い模様が度々あるのは気のせいだと思いたい。
俺に気づいたのか、メイド姿の幽霊たちがこっちにお辞儀してきた。
「あいつ、起こしてくれないか?」
俺がそういうとメイド姿の幽霊たちは目の前から消えた。
また部屋に入ると少なからず悪いことが起こると思い、彼女たちに頼んだ。
あいつならデュラハン呼び出そうとするよな。
自分自身で納得しながら、キッチンに向かった。
相変わらず幽霊たちが掃除をしている。
俺はそんな中で、朝食でも作ろうと思い、魔法で冷蔵されている箱の中を見つめる。
「これあるのか」
肉の塊とベーコンを取り出し、フライパンを棚から取り出し、炉に火を入れ、その上にフライパンを乗せる。
幽霊たちが突然慌てだすも、何かを見つけたのか何もしなくなった。
卵を割り、中身をフライパンの上に出す。
ジューと焼ける音が鳴る中、少し厚めに斬ったベーコンを焼いている卵の横に二切ほど並べた。
同じような音がキッチン中に鳴り響く、中で、煙が部屋中に充満していた。
少し霧がかかったかのような感じだ。
突然キッチンの窓が開き、その窓に向かって煙が逃げて行った。
「ちゃんと窓開けてないと窒息死するわよ?」
といいながら少女が俺に近づいてきた。
少しほっぺが膨らんでいる。怒っているみたいだった。
だが、焼いているものに目が行くと、そのふくらみがいつの間にかなくなっていた。
焼けた卵とベーコンを皿の上に乗せる。
籠に入っていたパンを取りだし、均等な長さに切り落とした後、他の加護にそれらを入れて完成。
「こんなもんか」
いつの間にか作ったものが俺の目の前にからなくなっていた。
消えた皿たちは、宙に浮き食堂へと運ばれていた。
運ばれた前で、ナイフとフォークを上品な手つきで使いこなしながら、少女が食べていた。
「おいひぃ」
満足そうな笑みを浮かべながら少女が食べていた。
俺は、少女の前の席に座りコーヒーが入ったカップを手に取り、一口飲む。
じっと少女の笑みに見とれていると、少女が何かを渡してきた。
「食べないとダメでしょ!」
一つの皿入れていたはずの卵とベーコンをもう一つのさらに半分移してこっちに持ってきた。
少女が作ってくれたサンドイッチで満腹だったため、少女の分しか作らなかった。
言われるがまま、俺自身が作った朝食を口の中に入れる。
肉汁と卵味が口いっぱいに広がった。
だが、さすがにサンドイッチを食べたことで満腹なため、すこしつらい。
「お前のために作ったつもりなんだけどなぁ」
と少女に聞こえる声で俺は言う。
少女は、それを聞いた途端食事の手が止まる。
すると、急に少女は顔を真っ赤にして食べ始めた。
よくわからないだが、なぜかベッドで起きたことが頭をよぎった。
「この後どうするつもりなんだ?」
と俺は気を使い聞く。
だが、少女は何も言わずそのまま食事の手が止まらなかった。
すべて食べきると、口元を吹いた途端少女がしゃべりだしてこういった。
「なにもないけど?」
そう少女は言うと、そのまま席を外し、俺の膝の上に座った。
少女の体温が膝から全身に伝わる中、俺は鼓動がかなり激しくなり、少女が俺のほうを見つめる度にそれは加速した。
「なら、周りでも探索するか?」
「探索? 森に入るの?」
と少女は聞いてきた。
すると、少女は呪文を素早く唱えると何も言わなくなってしまう。
「どうかしたか?」
「ちょっとね………」




