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最終章 月城明は覚悟を決め、ひなたは月城を許す side ひなた


 仕返しをしてやりたいって気持ちが勝っていたから、あまり深く考えなかったけど、今はもうそこまで月城には怒ってない。まだ許せないって気持ちはあるけど、今日も私の家まで駆けつけてくれたことは感謝しているし、呪いをするのも月城と早苗ちゃんがくっつくのが不快なだけ。


 その状態でも月城がパンティを履いている姿を想像して興奮しているって、私ヤバいよね……。変態だ……。いつの間にか変な性癖の扉が開いちゃった。


「どうしよう、どうしよう……今なら引き返せるよね? 真人間に戻れるよね?」


 私がパンツを元に戻そうと、手を伸ばしたとき――

 ガラッ

 浴室の扉が、十センチほど開かれた。


「バスタオル取って」

 といって月城の手がにゅっと伸びる。


「と、取ります」

 水滴の滴る月城の腕を見て、心臓がきゅんとなった。お風呂上がりの男の人の手だ。駄目だ。さっきから何を見てもそういう風にしか考えられない。

 私は月城にバスタオルを手渡すと逃げるようにリビングに戻った。ベッドにダイブして、頭を枕に押し付ける。


「落ち着け、落ち着け、落ち着け……って落ち着いてる場合じゃないじゃない!!」

 私は顔をあげた。

月城のズボンの中に入れたパンツを取り出さなきゃ。

 そう思って廊下に出ると月城はすでにズボンを履いていた。月城は私の考えた通りのガサツな男で、そりゃ、女の子の家で早く服を着なきゃとは思ったんだろうけど、ズボンとパンツを一緒に脱いだやつをよく見もせずそのまま履いたのだ。

 うまくいってしまった……。

 こんなアホみたいな方法で……。


「ん? どうしたんだ?」

 月城は上半身裸の状態で、バスタオルで髪の毛を拭いていた。


「ううん、なんでもないわ」

 そう言いながら月城から目を離すことができない。

 ダメだ、完全に性癖が歪んでしまった。

 月城が今私のパンツを履いていると思うと、それだけで征服したような気持ちになってしまう。

 だって、男の子が私のパンツを履いているんだよ。そんなのもう私のものってことじゃない。

 月城はいつ気づくんだろうか。気づかないでいてほしい。というより、気づかれたら社会的に死ぬ。

 でも、気づいてほしい。気づいて真っ赤になって、戸惑う月城が見たい。

「里美さん、なんか顔赤くないか?」

 月城はそう言いながら私の顔を覗き込んでくる。濡れた髪の毛が艶っぽく輝いて、シャンプーの香りを漂わせた蒸気が私を包み込む。

「だめ……もうおなかいっぱい」

 私はふらふらとリビングに引き返すと、ベッドの上に倒れこんだ。


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