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第三章 妹たちは勝手な計画を立て、月城明は誤解する side ひなた(11/15)


 Side ひなた


 あいつは天才だ。私を怒らせることに関しては、誰にも引けを取らないんじゃないか。

 何をしても私を侮辱する。あいつがやることなすことすべてが私の自尊心を踏みにじる。

 私は日に日に、あいつのことが嫌いになっていく。


 ラブレター作戦が失敗したとき、私は自分がフラれたような感覚に陥った。

アイツのことは好きじゃないし、名前をあげたわけじゃないから向こうは私だとも思っていないだろうが、なるべくかわいい字で書いて、かわいい便箋とかわいい封筒を選んだのだ。それに文章だって私が考えた。それに、パンツだって私が持っている中で一番のお気に入り。


 男の子ならきっとドキっとしてくれると確信していた。


 だって、高校生の男の子だよ? 一番そういうのに興味がある年ごろでしょ。

 その高校生の男の子が、クラスメートのパンツになびかないなんてことがある? 

 それはつまり、私のパンツとか、含ませた香水のセンスとか、手紙の字とか、そういうものが一つも響かなかったということだ。


「はあ……私の字ってかわいくないのかな」

 思い出すだけで悲しくなってきた。

 ラブレター作戦が失敗してから、私は次の作戦に移ることにした。

そのためにまず毎日、月城の動きを観察して、好きな食べ物、行動パターン、親しい友だちを研究した。


 まだ転校してきて一か月のためか、仲の良い女子はほとんどいない。早苗ちゃんとは幼馴染のようで、ときどき一緒に登校するところを見かけることがある。

あんな男のどこが良いんだか。

ルーティーンと言えるほど規則的な生活はしていないが、彼は毎日、昼休みに水筒に水を汲みに行く。


 彼が教室を出たのを追いかけると、いつも校庭の隅にある水道で水を汲んでいるのだ。

 これを利用しない手はないと思った。

 私は足を怪我したふりをして水道で待ち構えて、月城が来たところで、水をかけてやるのだ。

 その後、わざとじゃない顔をして、謝って濡れた服を着替えるのに手伝う。

 

 そこでさっとパンツを渡せば、仕方なく私のパンツを履くはずだ。

 

 だって、月城のパンツが濡れているのだから、何か履かないといけないわけで、それに男の子はみんな女子高生のパンツが履きたいものだろう。

 同じクラスの女子ともなれば、ちょっと興奮しちゃうはずだ。

 本人了承の上で合法的に女子高生のパンツを履けるチャンスをみすみす逃すバカはいない。

しかし、月城はまたしても私を拒絶した。


「なんで履いてくれないわけ? 私に魅力がないって言うの?」


 放課後、家に帰った私は床に置いたパンツを見ながら呟いた。一番初めに持っていたお気に入りのパンツは、月城に取られてしまった。

 仕方なく私は全く同じのを新しく買ったのだが、占い屋さんは私のパンツを月城に履かせることと言っていた。そうしないと触媒にならないのだそうだ。

 ということは、新品のパンツを月城に履かせても意味がない。そう思って、私は意識的にそのパンツを履くようにしていた。

 おかげでいい感じに身体に馴染んできて、肌触りも、ゴムの締め付け具合も、心地いいものになっていた。


「それなのに月城は履かなかった」

 あれから、何度か水道で待ち構えて、再び水をかけるチャンスを伺っているが、月城は水を汲みに来ない。

 私は次の作戦を考えることにした。

 その間、いつパンツを履かせられるチャンスが訪れてもいいように、毎日パンツを持ち歩いていた。

 そんなとき、次のチャンスは思ったよりもすぐに訪れた。


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